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りらっくママの日々

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2009年10月30日
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今日の日記(「不毛地帯」感想と夫の怪しい?動向☆ )




「ある女の話:アヤカ73」


電車に乗っている間、
何だかボンヤリしてしまった。
夜眠れなかった眠気が襲ってきて、
あやうく乗り過ごすところだった。

言われた病院に着き、
ナースステーションで病室を訪ねて、
名前を記入した。

入口でネームプレートを確認して、
位置を確認して入る。

カーテンが閉められていた。

「すみません…」

声をかけると、カーテンが開き、
お母さんらしき人が現れた。

まだ若い感じのする、
キレイな人だった。
何となく赤木くんと似ている。

「あ…あの、
赤木くんのお見舞いに来ました。
タカダって言います…。」

私はすぐにお見舞いの封筒を出した。
赤木くんの母親はそれを丁寧に受け取った。

「ありがとう。
わざわざすみません。
シンヤのお友達…?
どうぞ、ここ座ってね…。」

私は元会社の同僚だと答えて、座る前に赤木くんの方を見た。
聞いていた通り、チューブに繋がれていた。
ぐっすりと眠っているようだ。

「私ちょっと用事済ませてくるから、
はずしちゃっていいよね?
ゆっくり会ってってね。
本当にどうもありがとう…。」

顔から疲れが滲み出ていた。
普段はもっと美しい人なのかもしれない。
ハキハキした感じも赤木くんとよく似ている。

私は小さく返事をして頷いた。
赤木くんの母親はコートを着てバッグを持って、
カーテンを引いて去って行った。

覗きこんでみると、
酸素マスクをされた赤木くんの顔は痩せこけていた。
足が上に吊ってあって、
その足は異様にムクんで太くなっていた。

こんな姿、見られたくないかもしれない…

それでも布団から出ていた手を握った。

ねえ、来たよ。

最後に何度も握った手。
触れた体。
あの時のままの温かさなのに、動かない。

痛そう。
苦しそう。

あの夢は、
もしかしたら赤木くんの夢だったのかな?
家に帰りたかったの?

私はかがんで、
自分の頬を赤木くんの手に当ててみた。

そっと赤木くんの手に唇を当ててみる。

ねえ、
まだ私のこと好き?

ちゃんと幸せになるから。

あなたに言われたこと守るからね。

涙が出そうになった。
でも、こらえる。
泣くと赤木くんが心配してしまう。

ねえ、神様…
もう赤木くんを連れて行っちゃうの?
どうして私じゃなくて彼なの?

彼はもっと幸せになっていい人なのに。

ステキな人なのよ。
女の子がつい自分のものにしたくなっちゃうような…

なのに、いつも淋しそうにしてて。
だから連れて行っちゃうの?

だったらお願いだから、
どうか苦しまないように連れていってあげて下さい。
お願いだから…

私は赤木くんの胸に軽く頭を乗せてみた。
このままいっしょに眠れたらいいのになぁ…

その時、手がピクリと動いた。
私は顔を上げて赤木くんの顔を見た。

まだグッスリと眠っていた。
起きそうも無いと思った。

キリが無くなりそうなので、
もう行った方がいいかもしれないと思った。

そろそろ夕方になるし、
仕事が終わった人や家族たちが来るだろう…。
このまま二人でいた思い出だけもらって帰ろうと思った。

ベッドサイドに私が渡した本が置いてあった。
中を見たら、私が送った年賀状が挟んであった。

また涙が溢れそうになったので、
いよいよ病室を出ることにした。

もう一度手を握って顔を見た。

大好き。

大好きよ。

あなたは私の中にいるからね。

私の中に、
あなたはずっといるからね。
これからも…。


赤木くんの母親が戻る気配がしなかったので、
私はそのままナースステーションで時間を記入して病院を出た。

涙が止まらない。
すれ違う人がチラリと私を見るのがわかった。

カンちゃんの家に寄って、
どこかに泊まろうと思っていたけど、
やっぱり家に帰ろうと思った。

どんなに遅くなっても帰った方がいい。

そうじゃないと、帰るのが辛くなってしまいそうだ。
それに、
きっとずっと泣いてしまう。
後ろ髪をひっぱられてしまう。

明日も、その次の日も、

ずっとずっとここに来たくなってしまう。

カンちゃんにお詫びのメールを出した。
お見舞いしてきた、と。
やらなければいけないことがあるから帰る、と。
また必ず来るのでごめんね…と。

朝から結局何も食べて無いことに気付いて、
駅近くの喫茶店で軽く食べることにした。

さっきの赤木くんの姿が頭の中を支配している。

あの時と同じだ。
帰るか迷っていた時と。

あの時にもしも赤木くんと電話が繋がっていたら、
こんな未来じゃなかったんだろうか?

何だか食欲がわかない。
私は少しだけサンドウィッチをつまんで、胃薬を飲んだ。

ううん、もう考えてもこの現実を変えることはできない。
時を止められないように。
それが無性に悔しい…。

赤木くんの声が聞きたかったな…。

そんなことをポツンと思った。

私は思い立って、
自分の携帯から赤木くんの携帯の電話番号を押してみた。

コール音が鳴ったのでドキドキする。
電源が切られていない。
そして留守電に切り替わった。


  「はい赤木です。ただ今電話に出ることができません。
  御用の方はメッセージをどうぞ…」


懐かしい赤木くんの声が聞こえてきた。

一度でいいから俺のものになって欲しいって言われて、
初めて携帯に電話した時に聞いた声。
緊張してすぐに切ったっけ…。

涙が溢れてきた。

私はメッセージは特に吹き込まないで電話を切った。

自分の番号は教えてなかった。
赤木くんの声を聞いたら、
絶対に心が揺れると思ったから…。


帰ろう。

帰るしか私にはできないから。


地元の駅に着いたのは最終で夜中だった。

私はホッとした。

今まで見てきたことが全て夢だったような気がして…。

でも何だろう…

さっきから何か温かい空気が私を包んでいるような気がしていた。
頭がボンヤリしてしまう。

もう一度赤木くんの携帯に電話をしてみた。

やっぱり留守電。

そして彼の声。

もう二度と出ることが無い…。

どうしてこの世界に私は残るんだろう…

足元がグニャリと揺れた気がした。

私は涙を拭いて、
ヒロトの短縮番号を押した。

お願い、一人にしないで…。

横断歩道の信号が青に変わった。
コール音。

金曜だし私もいないから飲みに行ったんだろうか?

鳴らしながら歩道を渡る。
留守メッセージに切り替わる音。

右側から車が来たのがわかった。
運転手が楽しそうに笑っていた。
携帯電話を持っていた。

ああ…
いいなぁ、電話の相手がちゃんと出てくれて…

私はボンヤリそんなことを思った。

車の白いライトが私を照らした。
そのまま私の方へ近づいて…

え?!

ブレーキの音、


おい!ぶつかったぞっ!

大丈夫か?!あんた!

救急車!

警察は?!

はい!

すいません!人が車にはねられました!
ここ?え?住所なんてわからないよ…
住所って!
誰かわかりますかっ?!

ええと…


沢山の声が聞こえる。

アヤカ!
アヤカ!
アヤちゃん!

目をゆっくり開けたら、
知らない人の顔が何人か私を上から覗き込んでいた。
その中にヒロトの顔が見えた。


何だろう?何が起こった?

私は白い光に飲み込まれて行く。




続きはまた明日

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最終更新日  2009年10月30日 17時15分06秒
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