カテゴリ:教育、子育て、自転車旅行
『続き』・14~遅いって、素敵だよ
“効率、利便、スピード”ばかりが美徳とされてきた社会のなかで、比較論的にだけ速い、大きい、強い、広いものが、比較論的に遅い、小さい、弱い、狭いものに優位に立ったつもりになり、威張りちらす、いじめる。そして、長いものには巻かれろ式の、空気を読んで迎合する式の行動形態で、それが容認される。放置される。 いじめなんてなくなるわけない。でもね… 遅いって、素敵だろって話をするよ。 ちゃりこが二歳くらいのときだったと思う。言葉、挨拶の覚えたて。私は競技をやっていて、ちゃりこは私の練習や試合にいつもついてきていた。私のチームメイトとも顔馴染みになっていたから、いつも大きな声で挨拶していたんだ。でもある日、その日に限って、ちゃりこが誰にも挨拶しないんだ。体育館に入ってくる私のチームメイトが 「ちゃりこちゃん、こんにちは」 「ちゃりこちゃん、こんばんは」 と言っても、ちゃりこは相手のことを見ているのに、一言も挨拶しないんだ。 しばらく様子を見てから、私はちゃりこを叱ったんだ。かなり、強く。「なんで、挨拶できないんだ!」ってね。 ちゃりこは「ごめんなさい」って言って、ベソかきながら、こう言ったんだ。 「こんにちはがいいのか、こんばんはがいいのか、考えていたの」 微妙な時間帯だったんだ。夕方なのか、夜なのかって。 そのとき、ちゃりこは言葉を、挨拶を覚えたての頭の中で、こんにちはがいいのか、こんばんはがいいのか、じっくりと、ゆっくりと、しっかりと考えていたんだ。 目から鱗が落ちたような気がしたよ。 「ごめんね」って言ってから抱きしめたよ。私のほうが泣きそうだったよ。ちゃりこの一生懸命さがうれしかったのと、自分の愚かさが悔しいのとでね。 そんなのどっちでもいいじゃないかっていう人もいるかもしれない。 でもね、言葉を覚えたての子供が、どっちの挨拶が正しいんだろうと一生懸命考えて、挨拶が遅くなってしまうこと、それは劣っていることなんだろうか? 違うだろ。 遅いって、素敵なことじゃないか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年11月12日 14時36分29秒
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