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北海道新聞 社説
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20040724&j=0032&k=200407241272 またも暗い記録の更新である。警察庁のまとめによると、昨年一年間の全国の自殺者は三万四千四百二十七人で過去最多となった。 しかも、一昨年より7・1%も増えているから、事態は深刻さを増すばかりある。 交通事故死者の四倍以上もの人たちが自ら尊い命を絶っている社会は、正常ではない。こんな事態をいつまでも続けてはいられない。国はもとより社会全体で、自殺の予防に全力で立ち向かう必要がある。 昨年の特徴は、「経済・生活問題」が動機とみられる自殺が八千八百九十七人と、初めて八千人を突破したことだ。特に北海道は、自殺者千七百四十五人のうち五百四十二人までを占め、動機の一位(全国は二位)となった。 長引く不況が災いしているのだろう。リストラや倒産、負債や生活苦などで追い詰められ、生きるのに疲れ果てて死を選ぶ。そんな切なく、やり切れない姿が浮かび上がってくる。 小泉純一郎首相は、自殺者急増を受けて、景気対策に力を入れると言った。当然である。同時に失業者の雇用や経営難にあえぐ中小零細業者への支援にも力を入れるべきだ。 企業も従業員をもっと大事に思い、安易なリストラに走るようなことはやめにしてもらいたい。 このほかにも、自殺の動機はさまざまある。大事なのは、欧米と比べて立ち遅れている自殺予防対策を強力に推し進めることだ。 中でも、うつ病対策は急がれる。自殺者の八割までが、うつ病など精神疾患を抱えていると言われている。 だが、本人や周囲の「心の病」への理解不足や、肩こりや腰痛など身体症状として現れやすいこともあって、適切な治療を受ける前に死にいたる例が多いのが悔やまれる。 他の病気と同様に、「早期発見・早期治療」が強く望まれる。道外では新潟県松之山町のように、うつ病の実態調査や啓発活動などを続けた結果、かつては全国屈指の高さだった高齢者の自殺率が十四年間で四分の一以下と劇的に減ったところもある。 道も、遅ればせながら住民検診に抑うつ度などを調べるスクリーニングの導入や、道民向けの自殺予防リーフレットづくりなどに乗り出している。住民の命にかかわる話である。市町村にも積極的な取り組みを求めたい。 むろん、家族や職場の同僚なども、身近な人が発するうつ病や自殺のサインを見逃さず、治療を受けやすい環境を整えることが大事だ。 予防対策では、思い悩んでいる人たちが気軽に相談を受けられる体制の充実や、自殺の原因分析や予防研究の強化など、課題は山積している。 みんなの努力で、「自殺大国」の汚名を一日も早く返上したい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 4, 2004 12:30:56 AM
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