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テーマ:お勧めの本(7203)
NHK教育の「こだわり人物伝」で
藤子・F・不二雄先生の特集の 第4回(最終回)が放送されました。 今晩(21日)の第4回は 書きたいことがいっぱいあるので ゲストの岡田 斗司夫さんのお話は 次回、書く予定です。 ■ ゲストは岡田 斗司夫さん 「新世紀エヴァンゲリオン」などで知られる アニメ会社ガイナックスの、元社長の岡田さんです。 今回の特集は「S 少し F 不思議」 SF短編です。 ■ SF短編 「流血鬼」 今日の日記は、私が 若き日に、苦しむほどの混乱を引き起こした 「流血鬼」を紹介したいと思います。 中学生の時に初めて読んだ時 最後のページで、あまりのショックを受けてしまったため 身震いして、鳥肌がゾッと立ってしまいました… 「怖い」とか「恐ろしい」というレベルを超えていて 宗教や哲学を大きく超えた本作は あまりに精神的ショックが大きすぎました。 < ストーリー > 日本、そして世界中に ウイルスが広まっていた。 地球上の人間は、ほとんど吸血鬼になっていた。 ■ 「ハアハア」と息を切らしながら走る少年 ■ 少年は自分を守るために、吸血鬼を刺す… ■ 家に戻ってくると、両親は倒れていた… 吸血鬼にかまれると、意識を失い しばらくして、目を覚ますと吸血鬼になるのだった。 両親は、吸血鬼にかまれていた。 ■ 悲しむ暇もなく、吸血鬼が少年を襲ってくる!! ■ 家を飛び出しても、町には吸血鬼だらけだった ■ 吸血鬼を殺す人間は、流血鬼ではないのか… 少年に、ヒモで縛られた女の子は 幼なじみの女の子であった。 少年は、心を鬼にして、彼女を縛り上げる。 彼女は、幼なじみとはいえ、吸血鬼になってしまったからだった… ここからが本作のテーマです。 このような世界にいたら、私たちもきっと 吸血鬼の息の根を止めていることでしょう。 必至になって、我が身を守ることでしょう。 人の生き血を吸う吸血鬼は、文字通り「鬼」ですが 吸血鬼を殺す人間も、血を流す「流血鬼」ではないのか… それが、本作の重く苦しいテーマです。 「吸血鬼は悪魔だから殺してもいい」 私たち人間は、このように考えるかもしれません。 さて、人間も吸血鬼も、共に(医学的には)人類であり お互い、生きたいと思っています。 吸血鬼は生きる権利はなく、殺されて当然なのでしょうか。 ウイルス感染や、かまれることによって、生まれ変わってしまう 吸血鬼は、まぎれもなく「元は人間」なのです。 吸血鬼を殺して、血を流す流血鬼(人間)であるよりかは 人を殺したりはせず、「血を吸うだけ」の吸血鬼の方が 良い生き方であり、良き存在ではないですか? 人間はやめましょう! 吸血鬼になろう!! そんな結末で終わるのです。 大人になれば、同意はできなくとも、解釈は可能です。 ですが、ランドセルをおろしたばかりの少年(私)には 受け止められるはずもなく、大いなる混乱に陥ってしまったのでした。 当時の私は、ノイローゼの一歩手前でした。 精神的病をしばらく背負いました。 ■ まさに価値観の変換です 「流血鬼」や、他の短編にも共通しますが F先生が投げ掛けた「価値観を問う」作品なのです。 子供の頃には「精神的な混乱」だったものが 大人になってみると「感動を超える深み」に感じ取れる スコシフシギなSF短編は、読むたびに考えが変わる そして、多角的に読める、偉大なる傑作なのです。 ■ ミノタウロスの皿 価値観の逆転といえば… 人間の立場が全く反対になってしまう 「ミノタウロスの皿」も、恐るべき、思考の変換でもあります。 牛の姿をした者が、人間を食べるという星が舞台です。 地球では、人間が牛を食べるのが普通のように 「ミノタウロスの皿」では、人間が食用として 食べられるのが普通であり、しきたりである星だった!! だから、少女も、食べられることを誇りにしていた… これは、12/23の日記で紹介しました。 ■ オマケ SF短編3作 番組で、マンガの見開きが、ぱらっと出されました。 右奥は「光陰」、左奥は「大予言」、手前は「幸運児」です。 所要時間、約2秒。早押しクイズに出れますかね?(笑) 因みに、「大予言」は2/4の日記に 「幸運児」は2/8の日記で紹介しました。 「光陰」は、まだ書いていません。 ■ 箱舟はいっぱい (1974年) こちらは、1/16の日記で紹介しました。 ゲストの岡田さんの語りは、素晴らしかったです。 後日、遅れて紹介します。スミマセン、岡田さん。 ■ 「流血鬼」は、小学館のSF短編集2巻に収録されています 藤子・F・不二雄少年SF短編集 2巻 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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確かに「流血鬼」は衝撃的なお話です。
結構、藤子・F・不二雄先生の作品って子供が読むと混乱する話があったような気がします。私は単純だったので、『怖いな』という感想で、しばらく本自体に触れなくなる程度(笑)。ネオさんは繊細な少年だったのですね。 そこまで作品について考えて読んでくれる読者。先生もきっと喜んでるでしょうね。 「ミノタウロスの皿」も読んで衝撃でした…。当たり前になって生活している事、人間の価値ってどこまで正しいのか…考えてしまいますよね。日々生活をしていると、自分の価値観を基準に考えてしまっていますが、誰が正しいなんて正解は無いんですよね…。 マンガの見開きで2秒でわかるのですか…素晴らしい… 私にはそこまで詳しいものはないです。 私ももう少し自分の時間が出来るようになったら、改めてもう一度先生の作品を読んでみたいですね。 (2010.04.22 07:57:29)
流血鬼は高校三年の時に読んだ、人生を左右する作品だったよ。
ネオちゃんが受けた巨大な感銘とは違い、個人レベルで進路を考える時期だったからね‥ 。 回りがどんどん流血鬼になり、自分が最後の一人になったらどうするか? そのままたった一人の人類として死ぬまで抵抗と逃亡を続けるか、 それとも自分から流血鬼になる楽な道を選ぶか‥ 高校三年の自分にピッタリ当て嵌まる問題だったんだよね(17で漫画が入選してて本当に進路に困ってた) 。 結果、闇☆天は最後の人類として無駄な抵抗を続けましたとさ‥ 今はいわゆる逃亡生活に疲れての楽隠居だねえ‥ (2010.04.22 08:57:00)
そういわれると、価値観を問うような作品がありましたネ。
「流血鬼」は知りませんでしたが、「ミノタウロスの皿」は 読んだことがあります。 価値観に正解は無いんですネ。 (2010.04.22 09:13:28)
岡田さんの話はほんと面白かったですw
30分では物足りないな(>_<) でもこうしてみると月ウサギはSF短編をさらっと読んでいた気がします 本も色々だし、掲載された時期もそれぞれかなり違うので 立読みしたものもあったと思います (^^ゞ 多少ネタバレになりますが 吸血鬼になった後の 世界の様子や 「箱舟がいっぱい」のラストシーンは それほど印象が残っていませんでしたからne^^♪ “あ~ こいつらは他の人を見捨てて逃げるんだ”とは思ったけど 今回岡田さんの解説を聞いてさらに深いメッセージも含まれているんだと感じました やはり “短編集”としてじっくり読んでこそ F先生の凄さがわかるのかもしれません 確かに今読んでも改めて考えさせられたり 当時の印象とはまた違ったものが見えてきたりしますne^^♪ そして1/16日のブログのラスト 「それにしても、寒いですね。 なんだか、風が出てきたようですね・・」 この意味がやっと解りました(笑) 大事なセリフは覚えていないとこのブログは理解不能になりますne^^♪ (2010.04.22 12:03:01)
解釈はいろいろなのでしょうが、
今の世の中ですら、吸血鬼と流血鬼に匹敵する対峙が あるように思います。 吸血鬼にならなかったけど、「自分中心に物事を考え行動する人々」と、「世の中全体を意識して行動する人々」とか、 そういうものに当てはめられると思うんですよね。 でも、本当に正しい考え方なんて、きっとないんでしょうね。 (2010.04.22 12:26:33)
番組でも言及されていましたが「流血鬼」の元ネタは「地球最後の男」です。
で、3日前の「日曜洋画劇場」で3度目のリメイク映画「アイ・アム・レジェンド」が放送されたばかりでした。 原案が同じなのに 作る人間によってこうも違うのかと まざまざとわかる好例です。 「高度に発達したCGは 現実と見分けがつかない」 ・・・ 「かといってそれが 面白さにつながるとは限らない」 大金かけて作った映画よりも 藤子作品の、あの絵のタッチの方がはるかに文学的・哲学的そしてなによりSF的なのだなあと 改めて実感できました。 (2010.04.22 13:15:49)
子ども向けに見えるけど、SF要素に溢れていると。
小さいころ、世の中の大人がみんな化け物になってしまうって 夢を見たことがありました。ちょうどあんな感じ→「流血鬼」 とてもコワイ思いをして…いまだに忘れられないという(笑) そんなこともあるかもしれないって考えましたね…。 ウチの小学生たちが、SF短編を読んで「ちょっとコワイ」と言うのも ちゃんと理由があるのかもしれませんね。精神に訴えかける、のか…。 (2010.04.22 20:15:22)
「ミノタウロスの皿」は、以前、ネオさんのブログで拝見してから、その後もしばしば脳裏に蘇り、考えさせられ続けている、とても印象深い内容でした。
ですが、今回ご紹介くださいました「流血鬼」も、ものすごく深遠で、壮絶で、哲学的な問題意識を突きつけてくる作品で、息を呑んでます。 これからの生活の中でも、両作品が、自分の心の中に常に現れ、問いかけてくるように感じます。 追伸♪ 「風とケーナのロマンス」、早速、お聴きくださいまして、本当にありがとうございました! とても嬉しく思いました.゚+.o(^-^)o.+゚. (2010.04.22 22:13:22)
>ネオさんは繊細な少年だったのですね。 ↑ ドラえもん、パーマン、オバQなど「児童マンガ」で育ってきたので 何の心構えもなく、SF短編に触れてしまった、子供の私には もう「ガーン!!」という衝撃に押しつぶされてしまいました… 夢中になって、本気で読んでいましたね。 F先生に喜んでいただける読者でありたいです。 「価値観」というのは、世界観のように大きなものなのかもしれませんね。 >改めてもう一度先生の作品を読んでみたいですね。 ↑ 読み返してみると、また違ったとらえ方が できるかもしれませんね (2010.04.23 01:36:00)
>流血鬼は高校三年の時に読んだ
↑ 私は、中学1年でした。この5年の差は大きいと思います。 児童漫画家としての藤子不二雄しかしらなかったので 予備知識もなかったので、流血鬼や、その他は強烈過ぎました。 >漫画が入選してて本当に進路に困ってた ↑ 以前、少しですが、そのようなお話もされていましたね。 天さんの絵の素晴らしさなら、入選されるでしょうね。 きっと、天さんなら最後の人類としてサバイバルできると思います(笑) (2010.04.23 01:45:05)
> 価値観に正解は無いんですネ。
↑ 番組で、F先生が登場された、昔のVTRが流れましたが 「絶対的なものはない」という言葉が 深く心に残りましたね。絶対的な価値観は きっと誰も語ることはできないでしょうね (2010.04.23 01:50:11)
>30分では物足りないな(>_<)
↑ ホントですよね~ 私は、3分くらいに感じてしまいました。 まあ、それは大げさだとしても、あっという間の短い時間でした。 >岡田さんの解説を聞いてさらに深いメッセージも含まれているんだと感じました ↑ 岡田さんの解説は素晴らしかったですね~ F先生とSF短編の魅力を余すことなく語ってくださいました。 >1/16日のブログのラスト >意味がやっと解りました(笑) ↑ 過去日記を読んでくださいましたか。 ありがとうございます。 実は、このほかの日記にも、少しですが SF(少し不思議)ネタを、コッソリ混ぜております(笑) まあ、自己満足ですので、気づかなくても大丈夫です (2010.04.23 02:04:49)
>吸血鬼と流血鬼に匹敵する対峙が
>あるように思います。 ↑ おぉ~ なるほど!! そうした見方もありますね。 しんたさんの思考は、とても大きいですね。 国際社会も、もしかしたら、当てはまるかもしれませんね… >でも、本当に正しい考え方なんて、きっとないんでしょうね。 ↑ そして、哲学に結びついていきますね。 思考、価値観、宗教、どこにも絶対的なものはありませんね (2010.04.23 02:13:15)
>「アイ・アム・レジェンド」が放送されたばかりでした。
>原案が同じなのに >作る人間によってこうも違うのかと ↑ 劇場では観なかったので、私もテレビで見ました。 もちろん「流血鬼」も頭に浮かんでいました。 >大金かけて作った映画よりも >藤子作品の、あの絵のタッチの方がはるかに文学的・哲学的そしてなによりSF的なのだなあと 改めて実感できました。 ↑ 映画は、面白さもありましたが 心に衝撃を与えるほどのスゴさはあるかというと からっかさんと同様に、藤子先生の作品のインパクトには 及ばないなと思いました。映画とマンガの比較は 無理があるかもしれませんが、心にずっと残る作品としては SF映画よりも、SF短編が圧倒的かなと思いましたね (2010.04.23 02:20:16)
>子ども向けに見えるけど、SF要素に溢れていると。
↑ F作品は、すべてSF作品ですが、SFチックが溢れているのが パーマンということなのでしょうね。何はともあれ 個人的にも、思い入れの強いパーマンに、スポットが当てられたのは 嬉しく感動的でしたね。パーマンは、特別な作品ですから。 >夢を見たことがありました。ちょうどあんな感じ→「流血鬼」 ↑ まるで、A先生のような体験談ですね(笑) 私も、実は、見ることがあります。困ってます(苦笑) >ウチの小学生たちが、SF短編を読んで「ちょっとコワイ」と ↑ 前にもいいましたが、まだ早いのでしょうね。 ですが、子供でも読める短篇も、ちょこっとありますね。 「なくな!ゆうれい」や「ベソとこたつと宇宙船」などなど… 中でも、「ぼくのロボット」(SF短篇Perfect1巻)は 私が「子供のときに、一番読んでおきたかった短編」なので もし、機会があったら、お子様たちに読ませてあげてください。 大全集3期(もしかしたら2期)に、収録されるかもしれません (2010.04.23 02:40:49)
>両作品が、自分の心の中に常に現れ、問いかけてくるように感じます。
↑ 私の取り上げた「ミノタウロスの皿」を 覚えていてくださり、ありがとうございます。 「ミノタウロスの皿」や「流血鬼」は、素晴らしき問題作だと 思っています。F先生の仕掛けた読者への挑戦でしょうね。 私達人間のあり方を、根底から問う作品ですね。 私のコメントの返事も、いつも丁寧に読んでくださり ありがとうございます。嬉しく思っています (2010.04.23 02:54:57)
答えが出せないほど、迷いますよね。
吸血鬼にもなりたくないですし 毎日ずっと血を流す生活も耐えられないですしね… 本当に深いテーマです。 F先生は、児童マンガ以外も こうしたSF短編を多く書いてます (2010.04.24 00:48:59)
今47歳になりますが、同じようなショックを受けました。バイオハザードの先駆と思います。尊敬する藤子先生の作品ですが、それゆえ年齢制限が必要だった気がします(デビルマンも(^_^;))
(2012.01.23 01:33:38)
こんにちは。コメントありがとうございます。
そして、返事が遅れてしまい、申し訳ありません。 >同じようなショックを受けました。バイオハザードの先駆と思います。 ↑ そうでしたか。私と同じようにショックを受けた方がおられましたか。 かなり多いことでしょうね。今でもあの衝撃は忘れられません。 年齢制限が必要な場合もあるかもしれませんが 私は、中学でF先生のSF短編に出会えてよかったと思います。 とにかくショックの一言ですが、今では、感謝ですね (2012.02.19 03:05:46) |