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10月31日、世界の人口が
ついに70億人を超えました。 その日に生まれた赤ちゃん全員に 「70億人目の赤ちゃんの1人」として認定し 祝福を送るというニュースがありました。 少子化の日本では、微笑ましいニュースではありますが 世界的には、喜ばしいことばかりではありません。 アフリカでは、500万人の子供たちが5歳未満で亡くなっています。 幼稚園に通える年齢にも満たず、人生を終えてしまうのです。 他にも、学校にも通えず虐待を受け働かせられる子供や 自国の無政府状態のため、貧困や病気で苦しむ人々が 70億の大半に含まれていることを見過ごしてはいけません。 さて、人口増加について少し考えて見ましょう。 『季報 エネルギー総合工学』というサイトで 分かりやすいグラフを見つけました。 1600年代から1800年代は、なだらかに上昇しています。 ところが、1900年代に入ると、異常ともいえるスピードで 人口が爆発的に増加しています。 人類の生態系に悪影響は起きてないでしょうか? 世界人口増加に潜む問題に目を向けた 藤子・F・不二雄先生のスコシフシギな SF短編『間引き』を読んでみましょう。 < 『間引き』 ストーリー > 主人公の年配の男性は、妻と二人暮しであった。 そして、いつものように仕事へ出かける。 ■ 満員電車で通勤する男性 ■ 人がどんどん増えているように感じる ■ 臭いのチェックは日課だった ■ 男性の仕事はコインロッカーの管理人だった ■ 辺りをキョロキョロとうろつく人物がやってくる ■ 新聞記者であった ■ 特ダネ写真を狙っている コインロッカーに赤ちゃんが捨てられる事件が多発していた。 しかし男性は、写真を撮るのは簡単ではないという。 ■ 赤ん坊が捨てられる事件は日常茶飯事だった ■ 赤ん坊を捨てる事件は 救いの手になっている!? 記者は、不思議な発言をする。 ■ 問題は氷山の一角でしかない 人間は、もしかしたら見えないものによって 操られているのかもしれないと、記者は推測する。 ■ これらの事件の根源は 人口爆発だと記者は指摘する ■ 人口増加に伴い 食糧が足らなくなる問題も・・・ 本作品では、日本でも食糧不足が起こり 多くの人々が食に困っているという設定になってます。 ■ 記者は 人口増加について語る 動物などは、人間が手出しをしない限り 極端な増減は起こらず、個体数のバランスが保たれている。 ■ しかし人間の数は 調節されていないのでは・・・ 人間だけが、生き物の中で均衡を破り どんどん増殖している状態にある。 ■ 今まで 病気 飢え 戦争などが人工調節を取ってきた 命を奪うウイルスや、大飢饉、そして戦争などが 人口の増加を抑えてきた。 ■ 男性は 笑って反対する ■ まだ見えない問題が潜んでいる・・・ ■ この世から愛が失われている・・・ 男性は、何もいい返せなくなる。 そして夜になり、記者は去っていった。 ■ 男性の妻が差し入れを持ってきてくれた ■ 男性は嬉しそうにおにぎりを食べ始めた ■ ついに世界人口が45億人に!! 45億人到達を知らせるサイレンが、日本中、そして世界中に響き渡る。 そして、1つの事件が起きます。 思いもよらない恐ろしい犯罪が・・・ しかし、それは世界的に見れば小さな事件なのかもしれません。 地球規模で見れば、なんでもないことなのかもしれません・・・ 作品の中で、記者が「40年代後半から・・・」という言葉は 「昭和40年代」を指しています。私はまだ生まれていませんが コインロッカーに赤ちゃんを捨てるという事件が、当時 社会問題になっていたと聞きます。 F先生はいち早く、このネタを作品の題材にしました。 『コインロッカー・ベイビーズ』という 当時ベストセラーになった本などもあります。 こちらの小説は、1984年出版ですが F先生の『間引き』の発表は、1974(昭和49)年です。 そして、作中では、時代が「昭和55年」となってますが 少し先の未来、という設定で描かれたのだと思います。 作品では、赤子の置き去りはいけないだとか そんなことをする両親は悪人であるとか ありきたりな批判や評論は出てきません。 F先生は、社会問題から人類の問題へ さらには人口問題から地球規模の目線へと結びついていきます。 短編が描かれた時代、コインロッカー事件に人々が騒いでいる頃 F先生だけは、社会問題を超越した、大いなる想像を めぐらしていたのですね~ 『間引き』も感嘆してしまいますが F先生の想像の飛躍にも感嘆してしまいます。 30年後には、世界人口は100億を超える計算になります。 そのとき私たちは、一体どこへ向かうのでしょうか・・・ ■ SF短編『間引き』収録 藤子・F・不二雄「異色短編集」1巻ミノタウロスの皿 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[『藤子・F・不二雄 先生』 SF短篇 Perfect] カテゴリの最新記事
ネオさん、こんばんは♪
かつて藤子先生が描かれた21エモンやみきおとミキオの世界が今現実のものになりつつあるように、こちらの話も未来(=今)を予言しているようで、先生の先を詠む力には脱帽しかありません。 この時は45億だったんですね~~。 今は70億。ニュースは微笑ましかったですが…折角生まれてきたのに夭折したり虐待を受けたりする小さな生命のことを考えると「おめでたい」とばかりも云ってられないですね。 『間引き』…この話、凄く怖かったです! ネオさんが仰る通り、批判も込めずドロドロした物語にもせず、さらりと描かれている分余計にゾッとするような。 「愛情が消滅しつつある」という記者さんの台詞が、この恐ろしいオチの伏線になっているんですね。 『コインロッカーベイビーズ』…村上龍さんでしたっけ?読んでいませんが…。 これよりも早く描かれた藤子先生の想像力は見事としか。 偉大なるお方の警鐘を私達がきちんと受け止めているかというと…難しい問題ですね。 (2011.11.02 00:40:57)
「間引き」自体怖いタイトルですね。
所であのグラフは100億人で横ばいになっていますが、あそこで食糧問題などで死者が大量に発生するという事でしょうか? (2011.11.02 01:46:10)
こんにちは。
考えさせられる内容ですね。 世界の人口は増加してるのに、日本では減少してるのが不思議です。 食糧難や政治不安で明日をも知れない国々で、赤ちゃんがいっぱい産まれるのも不思議。 赤ちゃんの未来を考えたら、そうそう簡単に産めません。 日本だってこの先どうなるか分からないので、姫の将来が心配です。 なのにもっと不安な国の女性がいっぱい赤ちゃんを産むのか・・・ 70億人目の赤ちゃんとして、昨日産まれた赤ちゃんは希望すれば認定書がもらえるらしいですね。 姫も何か欲しかったなぁ。^^; (2011.11.02 10:51:41)
あらゆる愛情の減少が、
人口増加に歯止めをかける自然の摂理として生じているという見解に、 驚き戦慄しながらも、そうした発想のできることに感嘆するばかりです。 そのような会話が交わされた後だけに、 コインロッカーを守る男性と奥さんの夫婦愛が温かく心に染み入ります。 ネオさんのご洞察に深く頷きつつ、 急激な人口増加にある現代世界に生きる一人として、 F先生の警告を真摯に受け留めていかねばならないと感じました。 (2011.11.02 19:52:49)
着眼点が違いますね。問題のとらえ方や表現の仕方がが巧いです。
(2011.11.02 20:49:07)
人口が70億人を超えたニュース、ワタシもテレビや新聞で目にしました。
生も死も、それは神様の領域だと信じたい。 生や死が、人間の手でコントロール出来るようになりつつあることに、恐怖を感じます。 人口の増加と、コインロッカー捨て子事件で、「間引き」を想像されたのでしょうか。 今、70億人になったのを知られたら、F先生は、何とおっしゃるでしょうね。 (2011.11.03 22:06:59)
いつの間にかそんなに増えたんだねえ。
ちなみにヤミテンの小学校の頃は40億だか42億だか言われていたような・・・ でもさ、日本って昔から一億前後、なんかちっとも増えないよね?生まれる人と死ぬ人がほとんど変わらんのか? 。 世界の人口を知った頃、なんか妙に賢くなったように錯覚したもんだす。 増えすぎても減り過ぎてもいかんもんよのお・・ (2011.11.04 11:23:34)
>未来(=今)を予言しているようで、先生の先を詠む力には脱帽しかありません。
↑ SF短編では、予言を感じさせるような作品が多いですね。 児童漫画を描きながら、並行してこうした短編の発表とは驚きですよね~ >この時は45億だったんですね~~。 ↑ そうですね。時代を感じますね。一昔前は、60億でしたね。 私は「世界の人口は60億」で覚えていましたから・・・ >「愛情が消滅しつつある」という記者さんの台詞が、この恐ろしいオチの伏線になっているんですね。 ↑ 育児に関する問題は、これが一番の答えになってますね。 児童虐待やネグレクトも、子供への愛情消滅ですからね。 >『コインロッカーベイビーズ』…村上龍さんでしたっけ? ↑ そうです。今は「カンブリア宮殿」という経済番組で 司会者をされてますね。 >これよりも早く描かれた藤子先生の想像力は見事としか。 ↑ F先生のスゴさを見た!といった感じですね。 皆が、社会問題ととらえているときに 地球規模として見つめていますからね~ 見事ですね。偉大です (2011.11.07 00:12:32)
>「間引き」自体怖いタイトルですね。
↑ 普段、ほとんど使われることのない言葉ですが 「命が奪われる」という意味ですから、怖いですね。 >所であのグラフは100億人で横ばいになっていますが、あそこで食糧問題などで死者が大量に発生するという事でしょうか? ↑ そうかもしれませんし、地球上には100億が限度で そこからは減少(あるいは横ばい)になるのが流れなのでしょう。 70億の今でも、人口増加に伴う問題は多く抱えていますから (2011.11.07 00:16:20)
>世界の人口は増加してるのに、日本では減少してるのが不思議です。
↑ 様々な要因がありますが、可哀想なのが 子供が欲しいのに経済的な理由や、政府の育児対策の少なさ などが減少につながっていることでしょうね。 >食糧難や政治不安で明日をも知れない国々で、赤ちゃんがいっぱい産まれるのも不思議。 ↑ 文明、文化が遅れていて、娯楽どころか幸せもなく そんな中で、「せめて子供は欲しい」と強く望む女性がいたら 生むことは罪ではないと思います。場合によっては 望まない 不幸な妊娠の場合もあるかもしれません。 >70億人目の赤ちゃんとして、昨日産まれた赤ちゃんは希望すれば認定書がもらえるらしいですね。 ↑ これ以外でも、病院が独自のプレゼントや企画など あってもいいかもしれませんね。 もちろん、政府の手厚い保護が一番ですけどね (2011.11.07 00:24:19)
>人間が増えすぎたために、地球が失われたというような歴史が残らないようにしたいものです。
↑ そうですね。いつまでも平和であってほしいですね。 ただ、川や森や自然など、昆虫や鳥や動物など 失われているものは、想像以上に大きいですね。 私たち人間がやるべきことは、たくさんあることを認識しないといけませんね (2011.11.07 00:31:53)
>驚き戦慄しながらも、そうした発想のできることに感嘆するばかりです。
↑ まるで、天から世界を眺めている仙人のような見方ですよね~ 目線が極めて広いですね。一体どのような思考が働いているのか驚くばかりです。 実は、あの夫婦の間にも、ある事件が起こります。 >F先生の警告を真摯に受け留めていかねばならないと感じました。 ↑ 愛情が消えつつある世の中を、何もせずにいるのではなく 「汝の隣人を愛せよ」というような心が必要なのかもしれませんね (2011.11.07 00:43:03)
>着眼点が違いますね。問題のとらえ方や表現の仕方がが巧いです。
↑ 全然、違いますね~ 誰もがコインロッカー事件を騒いでいた頃に F先生だけは、そこから大きく飛躍した想像を働かせ こうした壮絶な短編を書き上げてしまいました。 これも1つの驚きですね~ (2011.11.07 00:45:34)
>生や死が、人間の手でコントロール出来るようになりつつあることに、恐怖を感じます。
↑ 病気が治ること、治せることは私たち全員にとって嬉しいことですが それも、溢れるほどの人口増加につながっていますね。 これからも延命は研究され、どんどん寿命も延びていくことでしょう。 いけないとはいえませんが・・・ 生きることとは何か考えさせられてしまいますね。 >今、70億人になったのを知られたら、F先生は、何とおっしゃるでしょうね。 ↑ 優しく穏やかなF先生ですから 「随分増えましたね」と、シンプルなことしかおっしゃられないでしょうね (2011.11.07 00:51:54)
>日本って昔から一億前後、なんかちっとも増えないよね?生まれる人と死ぬ人がほとんど変わらんのか?
↑ 自然界で暮らす動物たちの生態と比べると 増減がほぼ一定というのは、理想的だともいえます。 まあ、これは理屈であって、本当は生みたい人が 生めない、生みにくい、という日本の環境に問題があるのですが・・・ (2011.11.07 00:59:15)
>確かに愛情が希薄になっているから、愛をテーマにしたくなるのかも
↑ 流したいBGMは北斗の拳の 「愛をとりもどせ」ですかね(笑) 本当の愛は、ラブストーリーのような1対1の小さな愛ではなく 人類、誰にでも対する優しさのある愛情でしょうね~ (2011.11.07 01:04:53) |