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The Secession From Reality

The Secession From Reality

死んだら化石になりたいのですが

【質問】:はじめまして。死んだら化石になりたいんですが、どうしたらよいでしょうか。もし生きている間に準備出来ることがありましたら教えて下さい。また化石になる為に埋葬してもらう最適な場所などがありましたら教えてください。それと、どのくらいで化石になれるかも教えてください。質問ばかりですいません。ご回答よろしくお願いいたします。

【回答】:化石になりたいなんて、若いのに感心だね。ただ、初めにこれを言うのはちょっと酷かもしれないけど、君が人間に生まれた段階で、既にマイナスポイントかもしれない。もし君が硬い外骨格(エビの皮など)を持った生き物や海の生物だったならばもっと簡単に化石になれたかもしれない。でも早とちりしないで欲しい。決して化石になるチャンスが無いわけではないからガッカリしないように。じゃあまず、どうやったら現在の姿のままクールな化石になれるか真剣に考えてみよう。

もし君が山に登るなり、スキーをするなりして、氷床の裂け目で死んだらば、簡単にしなびた感じのミイラになれるだろう。だけど、これはもっとスパンの短いミイラ化であって、化石化ではない事に注意してほしい。もしも君が本当に化石になって数百年の地層の中で化石として残りたいのならば、まずなによりも君の骨、そして歯の管理に注意してほしい。

化石化というプロセスに鉱化作用はかかせない。従って、まず君は食事に関して最も注意を払うべきだろう。しっかりとチーズやミルクを食べてカルシウムをとって骨を強くしなければいけない。そして、歯医者さんにしっかりと通って常に健康な歯を保つようにしないといけないね。

そして次に更に重要な問題がある。それは”君が埋まる位置”だ。数百年に渡って化石化を邪魔されない為には当然、死ぬ場所が重要になる事は分かるね。比較的手軽なお勧めのスポットとしてはまず人目につきずらい洞窟が上げられる。家の近くに丁度いい洞窟が見つけらいいけども、中々うまくはいかないのが現状。それと、君が死んだ際には急いで埋葬してもらう必要がある事も忘れてはならない。もちろんこの際、冗長な葬式やら告別式といったプロセスはパスして正解、だね。「出来る限り自然な形ですぐに埋めてもらうこと」、それが全てだと言えるだろう。

あるいはもっと自然な形で死んで、そのまま化石になりたいという我侭化石が希望かな。それならば、鉄砲水の季節にワジ砂漠(アラビアなどの雨期以外は水がない川床)でキャンプするのがベストだろう。適当にその辺りを歩いていれば、たちまち洪水が襲い掛かって、君は溺れ死ぬ。そして適切な場所に君を運んで、無酸素の素晴らしい泥の中にそのまま君を埋めてくれるだろう。溺れ死ぬのは御免かい?それなら、活火山の噴火口に、ぶらり旅はどうだろう。でもこの場合はちょっと上級な化石化の知識が必要になるかもしれない。溶岩によって燃え尽きてしまっては元も子もないからね。火山の側で化石になるには必ず火山灰で殺され、適切に埋められる必要があるので、死に場所を選ぶには相応な地質学的知識が必要になるだろう。

また未来の科学者の間で人気の珍化石になって、他の凡庸な化石に差をつけたいなら、胃の中にも気を使って正解だね。最後の晩餐がハンバーガーやらピザなんていうのは実にナンセンスだ。僕が発掘したらその段階でポイだね。例えばあり得ないほど硬い甲殻類を飲み込んでみるとか、馬鹿みたいなデカイ種の果物を飲み込んでから死ぬ、そういった君が死ぬ直前のちょっとしたアイデアと工夫がどれくらい未来の科学者に影響を与えるかも考えて見て欲しい。

それから、生痕化石(動物がその動きを示したまま死んでいる化石)になれれば、最高。もし生痕化石にチャレンジしたいならばなるべく死に場所に至る足跡をその付近に残して正解だね。なるべく正確で、そして意味深な足跡を残すべきだろう。絶対にスキップやらジャンプといった混乱を招くステップを踏んではならない。

ここまで読んでもらってお分かりの通り、君には化石になれるチャンス、そして資格がある。そう、あるんだ。それにもし死に場所が決まったら絶対にその場所が分かるよう、一応何らかの言付けを残すべきだろう。科学者達はいつも新しい、そして変わった標本に飢えている。もしも君がしっかりと化石になれば、100万年後だろうと、なんだろうと、科学者達は必ず君を探し当てて、標本化してくれるだろう。


【付記】:実際のところ、君が化石になれる可能性は非常に低い。しかし、もしも海の中で死ぬ事ができれば、その可能性は必ずしも低いものではなくなるかもしれない。ただし、海と言ってもそこら辺の潮干狩りでいけるようなヌルい場所ではない。深海だ。化石になるには深海を目指すんだ。何故なら浅い海は潮の流れが非常に強い上にお腹を好かせた魚達がうようよしている。君の死体はすぐに海の藻屑と消えてしまうだろう。

また地上の化石化はまたそれはそれで非常に難しいのも事実だ。もしも君が死に、すぐに埋められたとしても、体は必ず侵食を受けて、君が化石になるのをあらゆる手段で阻止するだろう。しかし深海には君が望む最適な環境がある。まず、深海は地上や浅瀬に比べて生物の数が少ない事、もしも万が一海底の底に埋めてもらうことができれば、更に素晴らしい結果を生むかもしれない。しかし、気をつけなければいけないのは決して流動性の地盤内に埋まらない事だ。もしそうしたプレートの中に埋まってしまった場合は君はすぐにマグマの中へ運ばれてしまうからだ。

後はやはり粘土だ。純粋な粘土は君の体の構造を綺麗に保存してくれる。もしも粘土の中に埋まることができれば、君の死体はゆるやかに、そして確実に化石化され、君の体がやがて炭素の外形、そして石化した体の痕跡になる事が出来るだろう。そのプロセスには少なくとも凡そ2万年を要するが、死後の楽しみだと思ってゆっくり楽しんで欲しい。

それから参考までに、琥珀の中で死ぬ事は死体の最高の保存手段だと言える。しかしこの場合も琥珀を安全な場所に保管してもらう必要がある。それは墓に埋めてもらう事よりも遥かに難しいことだと言える。

そして、最後にちょっとした名前入りのプレートと金の装飾をつけて死ぬっていう、お洒落心も大事だね。
もし未来に誰かが君を発掘すれば、君は歴史にその名を刻む事ができるだろう。


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