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BJだいち

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Comments

イチコ@ Re:優越感に浸ったことがあるだろう。きみも。(10/17) まさにご意見的を得ている部分があるなぁ…
たっき~@ Re:ベビーフェイスでね(02/06) 同感でごじゃぁますだ。 なんかスラン…
あきら@ なんと。//感謝。。 二回もやるのかぁぁ。 たしか。。 前日…
BJだいち@ Re:たのしかったよー。(02/06) あきらさん >1/27。たのしかったよー。 …
BJだいち@ Re[1]:バカ バカ(02/08) エミさんさん >ごめんなさい > >ご…
2004/01/02
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カテゴリ:現代詩
併合前
ここは
ひとつの
独立国だった

知知夫国
人口
約六万人
の国

父は
この国で生まれ
この国で育った

父は
系譜を辿り
系図をつくった

江戸時代まで辿り
自分の祖先をつきとめた
オノという武士だった
侍だった

父は
ほっとしているが
ぼくには
どうでもいいことだ

ミトコンドリア・イヴ説によれば
DNAは
母から
受け継がれてゆくという

悲しいかな
父の
祖先は
生物学的に
ほとんど
意味をなさず
自分が
男となって
生まれ出てから
父のDNAに
跡継ぎはいない

ミトコンドリア・イヴ
人類は
二十万年前の
アフリカの
ある
ひとりの女性から
すべて発生したという説

受精卵の
ミトコンドリアという細胞によって
DNAが伝えられ
男性の
ミトコンドリアは
受精と同時に
捨てられる

この説は
現在
ほぼ正しいとされている

男は
父は
捨てられる
少なくとも
DNAとしては
捨てられる

突撃する
ことが
父の
宿命だった

いまも
その通り
生きている

知知夫国は
武蔵国に併合し
武蔵国は
大日本帝国になって

父は
大日本帝国の
陸軍のひとりとして

突撃
した

やさしさも
いたわりも
あった

けれど
残虐な
こともした

父は
そのことになると
無口になった

けれど
ぼくは知っている

真夜中に
敵兵に
襲われている
父を

ぼくは知っている

あれから数十年が経ち
大日本帝国は
ニホンになった

そうして
生き残った
数少ない証言者の
父は

芝居じみた
おどけた口調で
伝えてくれた

ほんものの
捕虜で
試すんだ

銃剣構えて
試すんだ

うしろ手に
縛られた捕虜

ほんものの
にんげんで
試すんだ

新兵の
父は
度胸なく
はずしてしまい

それでも
ぶっすり
ぶっすりと

肉には
銃剣突き刺さり
ほんものだから
うめき
叫び
目もあけて
見開き
父に
訴える

そんなとき
将校がそばにいて
その捕虜
バッサリ
軍刀振り下ろす

芝居じみた
おどけた口調で
伝えてくれた

父は
それから
すべてを決めて
生きてきた

結婚して
数十年
父は
母の疑問に答えずに
今日の
今日まで
信じてる

父の筋肉
いまだ硬く
そうして
筋張って
頑丈な肩だ

あんまり頑丈で
足が弱って
それでも
頑として
弱い自分の足腰を
恥じている


父は一切
杖持たず
歩けぬことを
恐れてか
父は
命ずる
自分に対して
命令する

動くな!
そこから
一歩も

動くな!
絶対に

動くな!

と命令するんだ
父は
自分に

そうして
父は
母や
ぼくに
一切
すべてを
断絶するんだ

一切
すべてを

父の手紙に
父の文章に

父そのものは
一切
ない

父は
生涯
自らを
隠す
つもりだ

ぼくは知っている

父の涙

ぼくは見たんだ!

父の涙を

知知夫国
併合前は
ここは
ひとつの独立国だった

父は
ここで生まれ
ここで育った

父は
逃げなかった
いまも
父は
ここに
いるんだ
父は
ここに

捨て去られるまで
ここに







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Last updated  2005/01/05 10:35:31 PM
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