両投げ2
随分と前に“両投げ”の投手について取り上げたことがあるが、あの時、頭の中で浮かんでいたのに調べなかった疑問がある。それは……。相手が両打ちだった場合、どちらで投げるのか?残念ながら元南海の近田豊年、元エクスポズのグレッグ・ハリスの経歴からは、その答えを見つけることはできなかった。しかし今月19日、遂に謎が解けた。それは、1Aでの試合だった。スタテンアイランド・ヤンキースとブルックリン・サイクロンズの対戦。最終回、5点リードのスタテンアイランドは、パット・ベンディットをマウンドに送った。その手には、6本指の特注グラブ。日本のミズノにわざわざ国際FAXを送り付け、「ドカベンのわびすけが使っている奴が欲しい」と特別に作ってもらったものだ。さァ、場面は二死一塁。打席には、ブルックリンのラルフ・エンリケス。両投げと両打ちの激突である。はたして、べンディットはどちらで投げたのか?ん? 左か?……と思ったら、エンリケスは右打席へ。それでは、と右で投げようとすると……。今度は左打席へ。じゃあ、やっぱり左で……。すると、エンリケスは右打席へ。なんと、ベンディットがグラブを持ち替える度にエンリケスはレガースをいちいち外して移動するというエンドレス・ループ。思い出すのは『聖闘士星矢』第8巻の、あの場面。教皇「むう、アイオリアの拳がシャカの掌底に はばまれ、シャカの拳がアイオリアの掌底に はばまれたまま。しかもおたがいの足は 蹴りにそなえ牽制の形をしたまま…」教皇「こ…、これではまるで…」教皇「千日戦争の形!! 千日戦いをつづけても、 このままの状態で勝負はつかない!」あァ、面倒臭ッ!おまいら、卵代表と鶏代表か!どっちが早く生まれたのか、争ってんのか!場内を微笑みと苦笑いが包み込む。グダグダな空気を見かね、主審がマウンドへ。スタテンアイランドの監督も出てきた。規則では「1打席中に打者も投手も左右を替えられるのは1度だけ」となっているが、どちらが先に決めるかは、明記されていない。さァ、どうなる? 主審は決断を下した。「もういいから、どっちも右で」……大岡裁き、炸裂ゥゥゥゥゥ!ということで、お互いに右で勝負することに。最後はエンリケスが外角ボールゾーンのカーブを空振りして三振、試合終了。ベンディットは今月のドラフトでヤンキースに20巡目(全体620位)で指名されたばかりの22歳。アマ時代は相手から双子と勘違いされたり、左で投げた翌日に右で登板してみたりと、なかなか面白い逸話が残っている。両投げになったのは、なんと3歳の頃。右利きだったが、父親の指導で左も覚えたという。……我が家の息子も、24日で3歳。右投げ左打ちに育っているが、左投げも仕込むか?因みに、父親の方は既に左投げを練習中。もともとは息子が将来、左対左で困らないようにと始めたものだったが、様になってくると面白くて現在はスナップスローに取りかかっている。活用しているのは『両側性転移』という理論。例えば、こんな実験がある。A群100名 = 左手でなるべく早く名前を書く。B群100名 = 右手でなるべく早く名前を書き、 直後に左手で同じことをする。驚くことに、左手での平均タイムを計ると、B群の方がA群よりもずっと早い。これはつまり、右手での学習効果が、左手での学習に反映されているということなのだ。右で投げて、イメージを投影しながら左で投げる。飲み込みの早さが上がると思う。興味のある方、ちょっと試してみては?Please crick here !!