ねっぴぃ野球倶楽部~オリックスファンが書くスポーツコラム~

2005/03/25(金)05:18

転向2

籠球(8)

マヌート・ボル。 「転向」を語る上で、彼ほど突き抜けたアスリートはいない。 今日は、その波乱万丈な人生を取り上げたいと思う。 ボルは、元NBAのプレイヤーである。 1985年のドラフトで、ブレッツ(現・ウィザーズ)に入団。 その後、ウォリアーズだのシクサーズだのヒートだのを グルグルと何度も往来し、11年間も選手生活を送った。 彼の最大の特徴――、それは身長だった。 なんと、231cm! ボルは、リーグ史上最長身の記録保持者だ。 とにかく、跳ばない。というか、跳ぶ必要がない。 腕を伸ばせば、ダンクが決まってしまう。 そう、腕を伸ばせば、簡単に決まるのに……。 3Pシュートを打ったりする。 かつて、こんなにも型破りなセンターがいただろうか? いや、ありえない。にゃにゃにゃにゃい(久しぶり)⇒ 反語 ボルは、インサイドの攻防が嫌いだったのか? 実は、そうでもない。 彼はキャリアで2度、ブロック王になっている。 これまた、跳ばない。跳ばずとも、バッチンバッチン叩き落とす。 もはや、存在自体がネタであり、反則である。 余談になるが、ボルはリーグ史上最低身長(160cm)の マグジー・ボーグスとチームメイトだったことがある。 1987-88シーズンのことだ。まさに究極の凸凹コンビである。 話を戻そう。 ボルは1995年に現役を引退後、エジプトへと移住した。 そこで、祖国スーダンで続く内戦を終わらせるために 活動していたらしい。そして、数年の空白期間を経て、2002年。 何を思ったか、ボクシングに挑戦! とはいえ、プロボクサーになったわけではない。 落ち目のセレブやスキャンダルを起こした有名人を集めて、 殴り合いをさせようというテレビの特番に出演したというのが 真相である。この「セレブリティ・ボクシング2」という番組、 前回はトーニャ・ハーディングがメインイベンターを務めた。 ボルの相手は、シカゴ・ベアーズ(NFL)の元選手、 ウィリアム・ペリーだった。試合は「これでもか」と言うほどの しょっぱい展開に。 やたらと長いリーチで、ジャブを繰り出すボルに対し、 ペリーはやっとのことでボルの懐に潜り込む。 それを迎え撃とうとするボル。 しかし、自分の手が長過ぎてカウンターが取れな~い。 仕方ないので、クリンチで逃げるのだが、決定打はなし。 結局、この繰り返しで、勝負は判定へ。 結果は、ジャブを出した回数の多いボルの勝ちとなった。 そして、その数ヶ月後――。 なんと、アイスホッケーに挑戦! しかも、今度はプロ契約を結んだのだ。 ボルを迎え入れたのは、CHLのインディアナポリス・アイス というチーム。その目的は間違いなく、話題作りにあった。 かくして、スーダン出身でスケートなど一度も滑ったことが ないという彼は、6000人ものファンが集まった本拠地での 試合に臨むことになったのだった。 しかし、である。 ベンチスタートのボル、スケート靴が合わなかったようで、 足に炎症を起こしてしまう。結局、第1ピリオド終了後に 退場して、そのまま引退。プレー時間0という記録を残し、 彼はリンクを去っていった。 ボルの人生には、まだ続きがある。 今年10月には、こんな記事が報じられた。 “元NBA選手、ビッグな騎手” そう、何を思ったか、今度はジョッキーに挑戦したのだ。 聞くところによると、彼はインディアナ州の騎手免許を取得し、 今でも騎乗依頼を待っているのだという。 ふっ……(タメ2秒)。待ってても、無駄だ――ッ! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄! URYYYYYYYYYYYYYYYYY(集英社『ジョジョの奇妙な冒険』より)!! そもそも、騎手とは小さくなくてはならない。 日本の中央競馬で最も背が高いのは武幸四郎の174cmである。 それでも、他の騎手を並べると随分とデカく見える。 競馬学校では、両親の体型から将来的に体が大きくなると 予想される子は、入学を認めてもらえない。 馬に負担をかけないためには、軽量であることが肝要なのだ。 翻って、ボルの体重は100kg超。 しかも、空気抵抗もめちゃめちゃ大きそう。 賞金がかかるレースで、彼に運命を委ねるオーナーなど 皆無に違いない。残念ながら、史上最長身騎手の勇姿を 拝むことはなさそうだ。 ボルは、10月16日をもって41歳になった。 不惑を超えても尚、ネタを提供し続けてくれる彼は、 この日記のために生きているような人である。

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