寝てばかりが日曜日じゃない！
気持ち良いほどの快晴だし、
たまには早朝から活動的になってみようと、
衝動的に家を飛び出した。
不思議と、行き先は瞬間的に決まっていた。

……東京競馬場だ。
そう、今日は日本ダービーが開催されるのだ。

カバンの中にはスポーツ雑誌とマンガ。
イヤホンからは、ノリの良いＢＧＭが流れ込む。
地図で確認したところ、目的地までは見事なまでの一本道。
真夏のような陽射しの中、ひたすら自転車で突き進んだ。
東村山市から小平市、国分寺市を経て府中市へ。

そして、40～50分。

不意に飛び込んできた「競馬場通り」の標識。
昼前だというのに、自転車やバイクがびっしりと
停められている。道路の向こう側には、
海の家を髣髴とさせる売店が並んでいた。

実は、競馬場で生のサラブレッドを見るのは初めてである。
いつもは、後楽園のＷＩＮＳで馬券を買っているからだ。
だから、入場料を取られるなんて、思いもよらなかった。
たかが200円とはいえ、軽いカルチャー・ショックを受けた。

場内に入って、新聞を買った。
馴染みの日刊スポーツは売り切れだった。
競馬ファンには人気があるのか？
仕方がないので、サンスポにした。

見ると、紙面に大好きな若槻千夏が。
なんと、キングカメハメハを推しているではないか。

……便乗しちゃおう。

安藤勝己とはどうも相性が悪いのだが、
ちぃちゃんが言うなら間違いあるまい。
問題は、コイツと何番を抱き合わせるか。

今回のダービー、専ら注目は２頭に絞られていた。

◇　キングカメハメハ
ＮＨＫマイル杯を圧倒的な強さで制した。
クラシック三冠の１つである皐月賞を回避し、
万全の調整でダービーに臨む。調教師の松田国英は、
この「別路線」と言われるローテーションで、
タニノギムレット（2002年）をダービー馬に導いている。

◇　コスモバルク
認定厩舎制度（外厩制度）の適用第１号馬。
この制度は、経営不振が続くホッカイドウ競馬が、
所属馬を増やそうと国内で初めて導入したもので、
調教条件が整う民間の育成牧場を認定厩舎として活用し、
競走馬を牧場から直接、競馬場へ運ぶことができるというもの。

これにより、コスモバルクは地方競馬所属のまま、
クラシック制覇を狙える史上初の馬となった。
デビュー前の落札価格は、たったの400万円。
まさに下克上を体現した馬である。
皐月賞では２着と好走しており、期待は膨らむ。

う～む、難しい。
こんな背景を知っているだけに、
今回はバルクに勝たせてやりたい。
だが、勝負師としての勘が、違うと言っているような……。

まあ、いい。今は目の前のレースを楽しもう。
５Ｒはパスして、午後からが勝負だ。
メインスタンドの前に場所を確保する。
周囲は、花もないのに花見状態。老若男女、
実にたくさんの人間が新聞を敷いていた。

ところで、皆さんはどのような馬券の
買い方をしているだろうか。

堅実派？　それとも穴狙い？
予想は、馬柱のどこを重視して決める？
馬券の種類は？　金額は？

因みに、我が流儀の基本は３頭ボックス買いである。
金額は500円。馬連かワイドかはオッズを見て決める。
もし、配当が低いようならば、３連複を考える。

馬柱のどこを重視するか。
まずは馬名。オモロイ名前がいい。
次に騎手。佐藤哲三や外国人などと相性がいい。
そして印の付き具合。日刊スポーツで、
△１つだけなんて馬は、要注意だったりする。

つまりは、一発狙い。

勝率は低くとも、トータルでプラスになればいい
という考え方だ。貧乏時代、競馬は楽しむものではなく、
生活を賭けた勝負だった。だから、我が辞書に「記念馬券」
などという文字はない。

とは言いつつも、バルクに関してはギリギリまで迷った。
買うべきか、切るべきか……。しかし、買うとなると、
ちぃちゃんのキンカメを諦めなくてはならない。

何故？　それはオッズが低いからだ。

そんな葛藤の中、全敗で迎えた10Ｒ。
心の中で、遂に英断が下されたのだった。
バルクは切る！　そして、今回は３連複で勝負だ!!

軸馬は12（キングカメハメハ）と17（ハイアーゲーム）。
あとは１（マイネルマクロス）、５（ハーツクライ）、
16（ホオキパウェーブ）と流すことにした。

……もし、自分がダイエーファンだったら、
８（メイショウムネノリ）を買っていたかもしれない。

既に７Ｒあたりから敷かれていた新聞は撤去されていた。
馬券を買い、人で溢れるメインスタンドへと上がる。
人を掻き分け、ゴール付近に陣取った。
まるで満員電車のような状態ではあったが、
見晴らしは良かった。あとは、始まるのを待つだけだ。

しかし、ここからが長かった。
通勤ラッシュに慣れていない身としては辛い。
挨拶だの国家独唱だのはいいから、
早く出走して欲しかった。

約40分が経過。いよいよ、この時がやって来た。
場内に手拍子と歓声が湧く。
各馬、滞りなくゲートイン。次の瞬間――、

バカンッ。

飛び出す18頭のサラブレッドたち。
まず抜け出したのは、１番・マイネルマクロスだった。
離す、離す、離す。その差、８馬身。
それに８番・メイショウムネノリ、
９番・コスモバルク、２番・ヴンダーが続く。

向こう正面。馬の姿がかなり小さく見える。
軸馬２頭は９番目と11番目をキープ。
５番・ハーツクライと16番・ホオキパウェーブは、
最後方に位置していた。

３コーナーを回るあたりから、各馬の差が縮まっていく。
そして最終コーナー、なんとバルクがスパートをかける！

場内騒然。

「バルク、行け――っ！」
「このまま、このまま！」
「仕掛けるの早いって！」

こっちとしては、ハラハラドキドキの展開。
オイオイ、まさか来るんじゃなかろうな？
キンカメとハイアーはどこ行った？

……と思ったら、イイトコにいる。
５、６番手くらいか。
しかし、ハーツとホオキパがまだ最後方だ。
マクロスは失速。イカ――ン！

そして、最後の直線。ここで勝負は動き出す。
バルクが、馬群の中へと消えていく。
代わりに抜け出してきたのは、キンカメだ！
あとはハイアーと……、ハーツ！

ｷﾀｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━━ｳｵｵｵ!!!!

んんむ、会心のレースであった。
キンカメは２分22秒３のレコード勝ち。
結局、バルクは８着に終わった。

結果　⇒　http://www.jra.go.jp/JRADB/accessS

配当は、3460円だった。
しかし、トータルでは8000円の負け。
中京になんか、手を出さなければよかった。
まあ、最後に勝ったので、気分は上々だったが。

とにかく、冷たいドリンクを飲みたい。
心からそう思った。場内の自販機は、
しばらく前から全て売り切れていたのだ。

競馬場を出て、コンビニに辿り着く。
喉を潤すポカリスエットが、本当にうまかった。

……。

やりたくないけど、ダイエーとの３連戦を
おさらいしておこう。

47試合目　Bw　１－６　Ｈ
48試合目　Bw　１－５　Ｈ
49試合目　Bw　６－18　Ｈ

もはや、言うことなし。
ただ、歌藤を使い過ぎである。
新人を酷使するのは、この球団の伝統なのだろうか？
使える左腕が欲しい……。