東奔西走の果てに漸く手に入れた『聖闘士星矢』13巻。
巻末の聖闘士名鑑を見てみると……。

惜しい！　蠍座のミロ、誕生日１日違いか！
そして、悔しい！　蟹座のデスマスク、壮一朗がビンゴ！

それにしても、デスマスク。シチリア島の出身なのね。
イタリア出身のくせに、名前は英語。
そして、必殺技は積尺気冥界波。漢字。

どうなっているんだ、車田設定？

車田正美というと、先日『リングにかけろ』を読破したのだが、
これがもうアツイやらオカシイやらで(*^。^*)

最初は、普通にスポ根ボクシング漫画だったのが、
いつの間にか３ノックダウン制をも無視して、
如何に相手を場外にぶっ飛ばすかの勝負になってしまうのだ。

ある頃までは、試合の駈け引きをキチンと見せていたのに……、

河井「フッ、やめたまえ。こんなただのボクシングは
　　　きみの本意ではないだろう」

ゲーリング「クックックッ。まあ、そういうことだ。
　　　　　　オレが見たいのは、きみの必殺パンチ、
　　　　　　ジェット・アッパーだけよ」

河井「それほどのぞむなら、みせてやろう。
　　　ぼくもいたずらに試合をながびかせたくないんでね。
　　　これが必殺のジェットだ！！」

……ただのボクシングって。中学生が。
一体、いつからこんな風になってしまったのか、思い返してみた。

チャンピオン・カーニバル？　……まァ、許容範囲。
日米血戦？　……対戦相手がアレだったが、まあまあまあ。
影道？　……それだ！

具体的には、カイザー・ナックルの登場からである。

ジャンプの歴史に燦然と輝く伝説の武器、カイザー。
その正体は、とにかく凄いメリケンサックである。

これは後に明らかになることなのだが、
その発祥はなんとアトランティス大陸まで遡り、
それを両手にはめれば、世界の頂点に立ってしまうのだという。

カイザーは代々、ギリシア十二神に伝わってきたもの。
その一方が、なぜか久遠の時を経て日本に、
しかも、単なる下町のボクシングジム会長のおっちゃんが
所持しているとは……。それも（おそらく）押入れに。

素手で人を殴ることさえも許されないプロボクサー、
それを育てるボクシングジムの会長が、
こんな凶器を隠し持っているのも、かなりの問題では？

さて、これを装着した竜児、いきなり電柱を１本叩き折っている。
清らかだった好青年が、堕落した瞬間である。

目指すは、シャドウ・ボクサーの待つ影道の塔――。

※　どうでもいいが、シャドウ・ボクサーって、
　　ひたすらシャドウ・ボクシングだけ繰り返している
　　ボクサーみたいなんだけど。

そこは、モロに『死亡遊戯』をパクッた五重の塔である。
カイザーの出番は、煽った割には２回しかなかった。

「クックックッ、なん年ぶりかな。
　この青龍の間へのぼってこれた男は……」

初めての被害者は謎のハゲ。
セリフから察するに、相当な暇人である。
そしてこの男、相当な卑怯者でもあった。

なんと、鉄のヨロイを装備していたのだ。
ドラクエだったら、守備力が16も上がるアイテムだ。
温厚な竜児も流石に決心を固めた。

竜児「うう……、邪道には邪道……、鋼鉄には鋼鉄……。
　　　カイザー・ナックル！」

ＢＵＮＣＨ！　ピッ、ピピピピッ。ズボッ。

鉄のヨロイ、貫通。心臓を一突き。これは殺人？
竜児くん、中学生の身空で前科一犯である。

続いての出番は、白虎の間でのチェーンデスマッチ。
そう、バッファローマンとケンダマンでお馴染みのアレである。

相手のロン毛は拳にダイヤモンドを埋め込むことで、
破壊力抜群のパンチを放つ、これまた卑怯者である。
追い詰められる竜児……。

「フフフ……、気にするな、高嶺竜児。
　なにも、お前が弱いわけじゃない。影道の人間でも、
　最上階までのぼりきった男はザラにはいないんだ」

因みに、朱雀の間では雑魚100人がかり、
玄武の間ではタイマンと見せかけて伏兵が闇討ち。
いい加減、竜児も頭に来たとしても仕方がない。

ＢＵＨＫＯＯＭ！　ボタッ、ボタッ。

「ぐわああ～っ、バ……、バカな（レア台詞）……。
　こ……、この地上でもっともかたいはずの
　ダイヤモンドナックルが敗れるとは……」

それもそのはず。これも後でわかることなのだが、
カイザーはなんとオリハルコン製なのだ。
ドラクエ３では、王者の剣（＝ロトの剣）の原料となる、
伝説（架空）の鉱物である。

……と、これで、ひとまずカイザーの出番は終わり。
というか、別にこの段階ではただのメリケンサックで
事は足りていた気がする……。

さて、次なる舞台はというと、富士のすそ野。
そう、夢の超人タッグが行われたことで有名なアソコである。

ギリシア十二神と世界連合Ｊｒ．との殲滅戦。
ナポレオンだのスコルピオンだのが、
涙を流しながら燃え尽きている間、
ジムの押入れから妙な存在感を見せつけるカイザー。

ピィ～ン、ピィ～ン。

月島から富士のすそ野までどれだけ離れているか知らないが、
お互いのカイザーが共鳴し合っているのだという。
そして、震度５の地震までをも引き起こし始めた。

ここで、ようやくカイザーの設定が明かされるのだ。
……単なる下町のボクシングジム会長によって。

どれだけ事情通？

大村「さあ、これをもっていくんじゃ、菊！！
　　　この闘いに、１万年もの殺戮の歴史に
　　　終止符をうつのはだれか……、
　　　ふたつのカイザー・ナックルだけがしっている！！」

だから、その１万年もの殺戮の歴史を知っている
アナタは何者なんだ？

まァ、そんなこんなで遂に再会を果たしたカイザー。
しかし、凶器としての出番はほとんどなく、
ダウンした竜児に最後の力を与えたのみ。

この後、２つのカイザーは竜児の希望で
西の海深くに封印されることとなる。

きっと、メリケンサックなんてオリハルコンである
必要などないことに気付いたのだろう。

ところがどっこい（レア台詞）。

その２年後、阿修羅一族との闘いにおいて、
三度登場してしまうのである。

今度の舞台は、聖域の十二宮みたいな一族の総本山。
竜児はいよいよ伝説の凶器を装着するのだが……、

竜児「殺すなよ、カイザー！！」

イヤイヤ、もう今更じゃないのか。
生身で撃つブーメラン・テリオスも、結構な殺傷能力だぞ。

ここで特筆すべきは、カイザーが衝撃波を出せるように
なっていたこと。つまり、直接的に殴らずとも、
相手を倒せるという離れ業が可能になったのだ。

もうここまで来たら、敵う奴なんていないわけで。
さらに援軍も到着してしまったので、敵は敗走してしまった。

さァ、そうなると気になるのがカイザー・ナックルの行方だ。
前回は海の底。果たして、今回は？

竜児「カイザー……、今までなん度もオレを助けてくれて
　　　ありがとう。でも……（中略）」

竜児「その日までさびしいだろうが、
　　　遠い空のかなたで待っていてくれるね……」

カイザー「ピィ～ン」

竜児「さよなら（ヒュン）！！
　　　さよなら、カイザー・ナックル！！」

ナレ「その日、銀河のかたすみにふたつの星が生まれた。
　　　その名もないふたつの星は北斗の方角にいつも光り輝いている。
　　　この地上を見守るようにして。おそらく、これから幾星霜……」

まさに恐るべきは（車田がよく使う表現）車田設定。
死人以外を星にしてしまうとは。

そして、同時に物理の教科書も全否定か。万有引力はどこに？
ネプチューンマンによるロビンスペシャル破りを思い出したわ。

これだから、車田作品は面白いのだ。


Please crick here !!