テーマ:☆ボクシング☆(641)
カテゴリ:格闘
大阪、奈良、滋賀、京都。
何だ、この修学旅行みたいなコースは。 睡眠時間もまた、修学旅行並の関西弾丸ツアー。 W杯サイクルで生きているこの身には、 過酷な旅である。今回は、世界に挑むボクサーと サラブレッドに会ってきた。 さァ、まずやって来たのは、大阪。 目的は、7月22日に世界戦が決まっている 名城信男というボクサーである。 現在、7勝0敗4KO。 デビュー3年目とまだキャリアは浅いが、 WBA世界スーパーフライ級1位。 ひたすら打ち合う不器用かつ愚直なスタイルで、 ここまで勝ち上がってきた。 持ち味は、スタミナとパンチ力。 次の試合、王者マーティン・カスティーリョに もし勝てば、あの辰吉丈一郎に並び 日本最短記録での戴冠となる。 しかし、この世界戦へ辿り着くまで、 名城は大いに苦しんだ。 ――対戦相手の「死」である。 昨年4月、6戦目の日本タイトル戦。 相手は、当時王者だった田中聖二。 試合後「いい試合だった」と声を掛け合った 相手が、その12日後に後遺症で死亡。 ボクサーにとって、これほど重い事実はない。 ふさぎこむこと2ヶ月。現役引退も本気で考えた。 それでも、復帰を決意したのは、 こんな思いがあったからだ。 「いろいろ考えて、ボクシングをやめるのは 聖ニさんに一番失礼だと思った。 ボロボロになってポンコツになっても前に 進むしかないと。聖二さんのためにも もっと強くならないといけないと思いました」 一体、名城とはどんな男なのか? 地下鉄に乗って、セレッソのお膝元・長居へ。 長居スタジアムに背を向け、住宅街を行く。 で、着いたのがここ。六島ボクシングジム。 六島と書いて「ムトウ」と読む。 ふと見ると、ジムの入り口にチェリオの自販機が。 そこには、お買い得価格100円の清涼飲料水が ズラリと並んでいた。 減量させるつもりがないのか、それとも、 精神力を鍛えるためのトラップなのか。 中を覗いてみると、明らかに還暦を過ぎた スキンヘッドのおじいちゃんが、 ミット打ちをしているではないか。 しかも、どこからどう見ても日本人なのに、 何故か英語で叫んでいる。 “☆●$×■Å※ I can do it!” 一体、何者か。ただのポジティブ爺さんなのか、 それとも、ナイキの人間なのか。 或いは、サイボーグじいちゃんGなのか。 鏡張りのジム内は、意外にも汗臭くなく、 泥臭くもなく。ヨネクラや帝拳とはどこか違う。 名城は、そんな中で厳しいトレーニングに励んでいた。 唸る。叫ぶ。吼える。熱い。 しかし、練習後、彼のイメージはガラリと変わる。 「相手は巧くて強い天才型。 だから、ボクシングで勝負したらダメですね」 「自分も強い……、うん。いやあ、これ勝てばね、 もう少し自分に自信が持てると思いますけど……」 「自分だけ相手を倒しておいて、 自分だけ倒されたくないと考えるのは、卑怯ですよ」 この歯切れの悪さ。人が好いというか、謙虚というか。 ……初期の孫悟飯というか。 「イヤ、そんなことないですよ。 自分が謙虚とか思ったことないですし」 謙虚な奴に限って、そんなこと言うけどね。 亀田兄弟のように大口を叩くわけでもなく、 悪役レスラーのように悪態をつくわけでもなく。 辰吉には、こんなことを言われたそうだ。 「織田信長の考え方や。 謙虚な世界チャンピオンは見たことない」 それにしても、試合を前にしたアスリートが、 こんなにも冷静かつ大人しいなんて。 日本最短タイ記録というから、 どんな派手な男なのかと思っていたのだが……。 「僕みたいなもんが」 それが、彼の口癖。もう、どこまで低姿勢なのか。 実は名城、アマチュア時代はタイトルとは まるで無縁の無名ボクサーだった。 それでも、プロになって勝てるようになったのは、 自分を知ることができたからだという。 曰く、自分にはタイミングだのテクニックだの ボクシングのカッコイイ要素に関しては まるで才能がなかったのだとか。 なんか、幕之内一歩みたい? 7月22日、彼は漫画よりも一足早く 世界タイトルを獲得することができるのだろうか。 因みに、彼の父上は最短記録よりも、 具志堅用高の連続防衛記録を狙って欲しいそうだ。 関西ツアー編、次回へ続く。 Please crick here !! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|