実は氷河さん、死んではいなかった。

なんと、首から提げていたノーザンライトのロザリオが、
一輝の一撃から彼を救っていたのである。

……って、なんてお約束。

しかも、仲間が来たところで目覚めるなんて。
あまりにもタイミングが絶妙過ぎるではないか。

多分、氷河さんは、人知れず作戦を変更していたのだ。

タイマンはやめて、４対１でボコっちまおう。

案の定、星矢らが現れると大々的に復活し、
再び態度がデカくなる氷河さん。

「フッ、幻魔拳をうつつもりなら、
　もはやムダなことだぞ、一輝」

ボロボロになってしまった全神経は、いつ回復したのか。
まさか、死にかけて甦ると前よりも強くなるという
サイヤ人理論が採用されたのか。

流石は鬼才・車田大先生、時代の最先端！

そして、復活した氷河さんは、一瞬だけ輝く。
一輝の幻魔拳を無傷で跳ね返してみせたのである。

この技をこうも完璧に破ったのは、
後にも先にも氷河さんだけ。無駄に凄い。

しかし、所詮は脇役の悲しさか。
とどめを刺す役割は、決して回ってこない。
それどころか、鳳翼天翔を食らい、またしても気絶してしまう。

この間、氷河さんは、意識を失ったまま流星拳に
凍気を込めるという器用な芸当で主役のアシストをする羽目に。

まるで、幽霊に成り果てても、
キン肉マンを助けまくるウォーズマンのようではないか。

マジ泣けた。

その後、事態は富士の地底が崩落、
白銀聖闘士登場と、急展開を見せていく。

氷河さんはというと、
役割である「戦いの解説」をムウに譲り、
ずっと気絶したまま。次に雄姿を見せるまでには、
実に単行本ほぼ１巻分を要してしまうのだ。

そして、遂にバベル戦。

「オレをほうむった？
　フッ、見たところ白銀聖衣のようだが、
　おまえの顔ははじめて見るぞ」

出た――――――――――ッ、
キザっぷりは白銀聖闘士を前にしても健在だ！
そして、星矢の苦戦っぷりを嘲笑うかのような
余裕の秒殺ショー。

「敵が来るならどこまでも戦いぬくだけだ。
　心の小宇宙が燃えつきるまで…」

カッコブーな台詞を吐きつつ、平気で死体遺棄。
念のため断っておくが、氷河さんはまだ中学生だ。

因みに、ジャンプ掲載時には、
「もうこうなったら、女神も倒すまで」
というニュアンスの物騒な台詞を吐いていた。

この後、物語は衝撃のカミングアウトへ。

実は氷河さん、星矢たちとは異母兄弟だったのだ。
しかし、せっかく星矢が皆を傷つけまいと、
できるだけしれっと言い出したのに、彼ったら……。

「本当だ！　ああ、しっていたさ。
　七年前、はじめてこの日本へきたときからな…」

……星矢の気遣い、台無しだァァァァァ！

しかも、兄弟と知って抹殺しようとしていたとは。
ある意味、父親が誰かということよりも、
アンタの冷血ぶりの方が衝撃の事実だったわ！

その後の氷河さんはというと、暫く見せ場なし。

「地中海カノン島の噴煙の中へ七日七晩身をおけ！
　そうすれば、おまえの右腕はもとどおりになるはずだ」

この、どこから仕入れたかわからない情報を喋るだけで、
あとは一切戦力にならず、石化していただけ。

氷河さんの氷河期は、こうして始まったのだった。

（つづく）


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