最近、ワケあって銭湯によく行くのである。

銭湯といえば、ケロリンの黄色い桶。
しかし、近所の銭湯は同じ黄色い桶でも、
書いてある文字が違う。

『モモテツ』

ハドソンの社名も併記されていることから、
ゲームソフトの『桃太郎電鉄』のことだとわかった。
同じ色合い、同じ４文字だが、何か違和感がある。

そして、もうひとつ違和感を覚えること。

松井秀喜のポスターが、ない。

実は、銭湯の壁面というのは、
不思議と松井の顔で彩られていることが多い。
別に、銭湯の宣伝をしているわけではない。
松井が写っている“何らかの”ポスター。

噂によると、銭湯経営者は北陸出身が大勢おり、
それが原因ではないかとも囁かれている。

少なくとも、数年前はどの銭湯に行っても
目にした“お約束”なのだが……。

どこを見渡しても、ないのだ。

松井という男は、銭湯にとても映える。
イチローでは無理がある。やはり、松井でなければ。

松井とイチローはよく「対照的」と言われる。

結婚会見で淡々と語ったイチロー。
相手の似顔絵を持参し、照れ臭そうに語った松井。

そういえば、嫁さんも年上と年下だ。

両者は、体型と体質も違う。

プロ野球選手としては小柄で、
オフになると体重が減るイチロー。
対して、恵まれた体格を持ち、
オフになると体重が増えてしまう松井。

５年前、番組で対談した時は、
イチローが話を振り、松井が答えるという構図。

２人の出身校、愛工大名電と星稜は
定期的に練習試合を行っており、
彼らの初対決もここで実現している。

その時、塁上で交わした初めての会話。

イチ「ホームラン何本打ってんの？」
松井「ん～、10本……、10何本くらいっすかね」

これをきちんと覚えていたイチロー。
すっかり忘れていた松井。

野球のプレーひとつ見ても、
正反対のイメージではないか。特に、守備とか。

フェンス際の当たりを想像して欲しい。

追いかける。２人とも球際は強い。
そして、見事なキャッチ。問題はその後だ。

体を巧く反転させることで、
柔らかな受け身を取りそうなイチロー。
一方、そのままフェンスを突き破りそうな松井。

そう、松井にはイチローにはない力強さ、
愛嬌がある。何か、昭和臭い感じ。

最近、牛丼屋のＣＭに出演している松井は、
とても輝いている。

「明日はホームランだ」

……ふむ、微笑ましい。
あのポスターが、銭湯に貼ってあったら最高だ。

……貼ればいいのに。

……いっそ、貼ってやろうか。

因みに、ケロリン桶とモモテツ桶は、
同じ「睦和商事」という会社の製品だそうで、
黄色いのは汚れが一番目立たないからだとか。
何でも、特殊な印刷技術を使っているため、
長く使っても広告は消えないそうだ。

更にこの桶、関西では関東よりも一回り小さい。
湯船のお湯で掛け湯をする関西では、
桶が大きいと重すぎるのだ。

まァ、蛇足だけど。


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