日米通算3000本安打を達成して以降、
憑き物が落ちたように量産体制に入ったイチロー。

彼は、言った。

「しかし、君は魚類か？」

北京五輪100ｍ平泳ぎ金メダルの北島康介のことだ。
決勝はなんと、58秒91の世界新記録というおまけ付き。

現地では“蛙王”なんて報道もされたそうな。

……とにかく、人類ではないらしい。

ゴール直後、水面から飛び上がりながら雄叫び。
アレ、かつてイアン・ソープが語っていたが、
結構な脚力を要するパフォーマンスだとか。



絵になる男。

スタート前、ジャージの日の丸をギュッと
握り締めたことで、その左胸は赤く腫れ上がっていた。

それにしても、凄い精神力である。
４ＷＤ泳法やストローク数を抑える作戦も見事だったが、
何よりの勝因は、やはり強靭なハートにあったと思う。

実はこの100ｍ、北島には幾つかの不安があった。

１日前の準決勝。

宿敵ブレンダン・ハンセンの不振で、高まる重圧。
しかし、59秒55と思うようにタイムが伸びない。
更には、伏兵アレクサンドル・ダーレ・オーエンが
五輪新記録を連発してきた。

会場を去るその姿に、いつもの強気は見られなかった。

この４年間、北島は苦しんだ。
モチベーションがなかなか上がらない。故障も重なった。
ハンセンとの差は広がり、それどころか国内でも負けた。

ところが、2001年以来ずっと彼を追ってきた
松岡修造は、こんなことを言っていた。

「この４年間の苦しみより、準決勝から決勝までの
　24時間の方が苦しかったのでは」

はたして、どれだけの重圧があったというのか。
その答えは、あの涙から想像するしかない。

「何も言えない。すんません」

タオルで顔を覆い、声を詰まらせる。
去年、千葉で行われた世界競泳。
レースに勝って人知れず涙する姿とかぶった。

アテネから４年、北島には背負うものが増えていた。

あの時の「チョー気持ちいい！」と、
今回の「チョー気持ちいい……」は意味が違う。

そんな中での有言実行、金メダル。
勝つだけでも凄いのに、世界新記録まで出すかね。

“世界最強”にして“世界最速”。

また、北島はこうも語っていた。

「自分の泳ぎを心がけて」

勝利と挫折の経験、練習に裏打ちされた自信と技術、
自分自身を客観的に見つめる能力などなど、
全てを備えている北島だからこそ、重みのある言葉。

その言動に考えさせられることは非常に多い。
それなのに、それなのに……。

魚類とか両生類呼ばわり。そのギャップ。

まァ、とにかく「おめでとう」ということなんだけど。

☆☆☆

最後におまけ。

女子バドミントン、準々決勝。
末綱聡子と前田美順、略して“スエマエ”が、
アテネ五輪金メダルにして世界ランキング１位の
中国ペアを下した瞬間を表現してみよう。

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あ、映像と方向が違うか。


Please crick here !!