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困。

紹興

 2005年1月2日、日本人には「紹興酒」で有名な紹興へ、友人に車で連れて行ってもらいました。ちょうど一緒に年越した友達と3人で。

 紹興と言えば、酒以外にも魯迅と周恩来の故郷、書道の里、東洋のベニスで有名な、由緒ある町です。今回は2箇所だけ行きました。「蘭亭」と「沈園」です。

 ナビしてくれた人はかなりの文学通(尊敬!)で、行く先々で当時の中国の歴史背景や細かな人物紹介をしてくれました。

 

 私が一番印象に残った場所は、「沈園」の“釵頭鳳”詞牌です。
 陸游(1125~1209)という南宋時代第一の詩人とその愛する女性唐婉による詩のコラボレーションです。下の写真ではピンボケで分かりにくいですが、勇壮な字体の右が男性、柔らかな字体の左が女性が書いたものと見分けられます。

        
  

釵頭鳳





 この詩には、背景に悲劇のラブストーリーが。

陸游と唐婉は従兄妹どうし。唐婉の母親は唐婉を産んでからすぐに亡くなり、唐婉は陸游のところに引き取られ陸游の母親に兄弟のように育てられました。いつしか二人の間に愛情が芽生え、結婚。当時はエンゲージリングと同じようなものとして、かんざしを贈る風習がありました。

 ふたりは毎日幸せな結婚生活を送っていました。
 しかし、唐婉と結婚してから陸游の父親、唐婉の父親が共に亡くなります。そして母親の50歳のお祝いの席では唐婉の頭につけていたふたつのかんざしの内ひとつが落ちて壊れてしまいました。これは縁起の悪い事。

 母親は陸游と唐婉が結婚してから、いろいろ不幸が続くので占い師にみてもらいました。
占い師は、陸游と唐婉がこのままでいたら不幸が続くとして、離縁を勧めます。母親も唐婉が子供を生まないこともあり、占い師の話に同調し離婚させることにます。

 封建時代は親の意見は絶対であり、陸游は離婚せざるをえなくなってしまいました。

 唐婉は日頃から病弱でしたが再婚します。でも陸游への想いは心の中にいつもありました。

 陸游もまた母親の勧めで再婚しましたが唐婉のことを忘れる事はありませんでした。

 離婚してから10年経ったある日、偶然に沈園でふたりは出逢います。唐婉は夫と一緒でしたが、彼は唐婉の陸游を思う気持ちは分かっていたので(なんて物分りのいい旦那;)、唐婉を沈園に残して帰りました。陸游は一緒に暮らしていたときのこと、世間の噂のこと、自分の今の気持ちなど、「釵頭鳳」として詩に託し唐婉に書いて渡します。唐婉も自分の気持ちを「釵頭鳳」として返答の詩を書いて渡しました。

 その後、唐婉は精神的な面も加わり、病気が体を蝕み、30歳の若さで亡くなります。最後まで持っていた唐婉のかんざしだけが陸游の手元に戻ってきました。陸游は生涯、唐婉のことを心に秘めつつ85歳まで生きました…。





  釵頭鳳

  陸游の詩(写真右側)


  紅酥手,

  黄縢酒,

  滿城春色宮牆柳。

  東風惡,

  歡情薄。

  一懷愁緒,

  幾年離索。

  錯,錯,錯。



  春如舊,

  人空痩,

  涙痕紅鮫透。

  桃花落,

  閑池閣,

  山盟雖在,

  錦書難托,

  莫,莫,莫!



柔らかな手と、

黄縢酒(黄色な紙で封をされたお酒)。

一面の春景色に緑の柳が映える。

春風が憎い(離婚させた母を憎む比喩っぽい)

幸福な君との生活は短かった…。

会えなくなった君をずっと想い、

悲しみに暮れていた…。

あぁ、間違っている!!
(3つ並んだ「錯」、唐婉と離れ離れになっている
現実の悪戯な運命が、間違っていることを
強調しているのでは、と想像してます)


それでも春はやってきて

人は虚しく痩せ衰え
(自然は変わらないのに人は変わることを相対している)

ハンカチに涙の痕が頬紅をつたい赤く染み透り
(頬紅、男でもしてたのか?)

桃の花は散る

静かな池の閣(建物のこと)

かつて愛の契りはあったものの

想いをしたためた文は託し難く
(既に彼女には新しい夫がいるから)

あぁ、こんなはずではないのに!!
(「莫」には他に「もーだめだー」とか
「やめた!」とか「もう終わりだー」という意味
もあるらしいですが、↑は私の勝手な解釈です)





  
  唐婉の詩(写真左側)
      

  世情薄、        

  人情悪、        

  雨送黄昏花易落。    

  暁風干、        

  泪痕残。        

  欲箋心事、       

  独語斜欄。       

  難、難、難。

      
  人成各、        

  今非昨、        

  病魂常似秋千索、    

  角声寒、          

  夜爛珊。          

  怕人尋問、        

  咽泪装歓。       

  瞞、瞞、瞞。
      


世の中は苛酷。

人の情けは醜い。
(陸游が母を表す東風(春風)を詠っていることを踏まえて)

日が暮れ始め雨が降り、花が散りやすい。

明け方の風は(泣き明かした私の)涙の痕を乾かす。

思い悩むことを文にしたためたいけれど

手すりに寄りかかって独り言を言いつつ

…やっぱり難しいわ!!
(陸游への深い愛を文に表すことかな)


別々に生きることになった私たち

今日は昨日とは違うもの、

思い悩む心は同道巡りでブランコのヒモのよう

角笛の音色が物悲しいわ

真夜中は過ぎました(繁栄が過ぎ去ったことを比喩)

人に尋ねられるのが怖くって

本当は泣き叫ぶ心を隠して楽しげに振舞っているわ

気持ちを騙しているの!!
(瞞は「嘘」「隠しておくこと」です)





 純愛です。この詩の意味を考えると胸に迫るものがあります。

 実際、日本語に訳すとなると、言葉に秘められた作者の深い想いを表現することが大変難しいです。また、中国語でこの詩を発音すると、美しい韻を踏んでいてとても気持ちが良いものです。メロディーを付け、歌にもなっているくらいです。



 

☆長くなってしまったので、最後に写真を☆


その昔、この小さな川辺で詩の達人たちが酔っ払って詩を詠む風流な時代があったらしい。酔っ払ってもマツケンサンバしかでてこないオジ様方とは別格。(蘭亭にて)

曲水流~


沈園の入り口前で撮影。

東洋のベニス?


沈園内にあった石碑(李清照という詩人の詩の一部)


愛とは?

「世に愛とは何かと問えば、生と死を共にすることと答える」


天気が良かったのでこんなきれいな写真が撮れました。


沈園内の池



 まだまだ魯迅記念館も行ってないし、本場紹興酒も飲んでないので、また行きたいです。紹興。





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