健康、長生き、アンチエージング

2006/08/01(火)06:14

肝臓がん3

疾病(623)

肝臓がん治療として、開腹手術に比べ患者の負担が少なく、注目されている「ラジオ波」治療。しかし、この治療も施術医の熟練度によって、その安全性は違う。患者にとっては、熟練した医師の選択が重要となる。手術をする施設、医師の選択を充分にすべきであろう。超音波の画像を見ながら針を刺すラジオ波治療。指導役の医師(左)がアドバイスする(大阪赤十字病院で)  「はい、そこで息を止めてください」診察台にあおむけになった患者の腹部に、超音波検査装置の端末を押し当て、モニター画面を凝視した若い医師が声をかける。 わずかな呼吸の上下動でも、肝臓の位置がずれる。脇についた指導医から、すかさず「CT(コンピューター断層撮影)とも見比べて確認して」と指示が飛ぶ。 大阪市天王寺区の大阪赤十字病院。肝臓がんにラジオ波治療をいち早く導入し、年間300件余と全国有数の治療実績がある。スタッフは消化器科・肝臓グループの医師5人。若手医師の育成と治療の安全確保のため、経験豊富なベテラン医師が必ず脇につく。 消化器科部長の大崎往夫(ゆきお)さんは「簡単な治療のようだが、がんの位置を超音波で見極めるだけでも、相当な熟練が必要」と話す。超音波とCTの画像を連動させ、がんの位置を特定する機器も開発した。確実に治療するための工夫だ。 開腹せずに済むラジオ波治療。兵庫県宝塚市の外科医神崎義雄さん(69)も、「手術の大変さは良く知っている。患者として、切らないに越したことはない」と、ラジオ波治療を受けた。 だが、「体に優しい」点が強調される一方、大崎さんは「ラジオ波治療の合併症は少なくない」と警鐘を鳴らす。 同病院は、7年前からこれまでに治療した2162全例の結果を公表。治療に伴う直接の死亡例はゼロだが、針が誤って大腸や肺に刺さり穴があいたり、胆管が傷ついたりと、大事には至らなかったものの緊急手術などが必要になった例が14例(0・6%)あった。 関西の38施設で2002年までに行われた2614例の共同調査では、治療後に胸や腹部に水がたまる、胆管を傷つけるといった合併症が7・9%起き、3か月以内に死亡した例も0・3%(9例)あった。 がんが焼ける際に周囲に飛び散ると推定される治療法自体の課題に加え、実績が100例以上の施設では合併症率が6・1%だったのに対し、20~50例の施設は15・2%と高く、経験不足による医師の技量の問題も指摘されている。 このため、大崎さんら関西の専門施設で作る研究会は昨年2月、〈1〉肝臓の組織の一部を針でとる肝生検など、超音波検査を使った手技を数十例経験〈2〉熟練した指導医の下で5~10例実施--など安全なラジオ波治療のための指針案を作成。厚生労働省も昨年12月、死亡事故の報告などを受け、日本肝臓学会などに対し、安全な実施を求める異例の通知を出した。 保険適用され、急速に普及するラジオ波治療。事故防止のため、研修体制の整備が求められている。 ラジオ波治療の実施件数 日本消化器病学会、日本消化器外科学会の認定施設に読売新聞が行ったアンケートでは、回答した441施設のうち、2005年に100件以上実施した施設が31あった一方、10件未満と少ない施設も3分の1強の165施設を占め、ばらつきが大きかった。[提供:読売新聞]

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