健康、長生き、アンチエージング

2006/09/19(火)06:27

脳死移植4

疾病(623)

生体移植の場合、患者の生死、予後などには興味が行くが、ドナーの方のその後については論ぜられることは少ない。実際、その後ドナーに後遺症が出る場合がある。移植が成功した場合はともかく、失敗するとその病院との関係は切れる場合が多い。ドナーの予後はほおって置かれることとなり、問題の大きいところである。長女に肝臓を提供した経験がある鈴木清子さん(千葉県内で)  脳死者からの臓器移植が進まない日本では、患者の家族ら健康な人が肝臓や腎臓などを提供する「生体移植」が移植医療の"主役"だ。しかし、臓器提供者(ドナー)にとって危険と隣り合わせの医療でもある。 2003年5月、京都大病院で娘に肝臓を提供した母親が死亡。今年7月には群馬大病院で夫に肝臓を提供した妻が両足まひになったことが明らかになった。 「移植医療は、成功すれば劇的に患者を救命できる。けれども、その力の大きさゆえに、ドナーに十分な注意が払われないケースがあったのではないか」。重い肝臓病だった長女、統子(のりこ)さんに肝臓を提供した千葉県富津市の鈴木清子(すがこ)さん(48)は言う。 統子さんは生後3か月で胆道閉鎖症と診断された。肝臓でできる消化液の胆汁は胆道を通って十二指腸に流れる。その胆道が詰まって胆汁が排出されず、肝臓の機能が悪化する病気だ。 病状が進み、11歳だった1995年、東京都内の大学病院で、父、道男さん(52)から肝臓の提供を受けた。 手術後、病状は回復したが、拒絶反応が激しく再び悪化。3年後の98年、関西の大学病院で、今度は清子さんが肝臓の約3分の2を提供、再移植を行った。だが、40日目の99年1月、15歳で亡くなった。 夫婦は翌年、移植患者・家族らが電子メールで情報交換するメーリングリストを見て驚いた。「私の母が生体肝移植で父に肝臓を提供したが、手術後の合併症に苦しんでいる」という書き込みがあったからだ。 鈴木さん夫婦は体調に問題はないが、将来の不安はある。清子さんは2002年秋、書き込みをした家族を含む提供者の仲間とともに「生体肝移植ドナー体験者の会」を設立。翌年、全国の提供者を対象とした調査を実施するよう厚生労働省に要望した。 その声に押されて日本肝移植研究会が昨年3月にまとめた報告書によると、手術後2、3年たった提供者の58%は「何らかの症状がある」と回答。手術の傷のひきつれや感覚のまひ、疲れやすさ、腹部が張る膨満感・違和感などをあげた。だが、提供者の26%は手術後に定期的な診察を受けていなかった。 特に移植患者が亡くなった場合、提供者は病院と縁が切れることが多い。患者の経過が良くないと、「私のあげた肝臓が悪かったのでは」と自責の念を持つ例もある。清子さんは「ドナーを継続的に支援する体制を作ってほしい」と話す。 移植にかかわる患者、提供者、その家族が安心できる環境整備を急ぐ必要がある。それにも増して、健康な人を傷つけずに済む脳死移植の普及が望まれる。 生体移植 生体肝移植は毎年約500件、累計で3800件以上行われ、世界で最も多い。一方、国内の脳死肝移植は累計32件にとどまる。腎臓、肺、小腸などでも生体移植は行われている。「生体肝移植ドナー体験者の会」への電子メールはliver-donor02@able.ocn.ne.jp[提供:読売新聞]

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