定年後、老後の楽しみは拡大している。
団塊の世代が老人になる中、それらの消費に対して企業も無視する訳には行かなくなっている。
自分の最も好きな、また最適な趣味を探すのも中々難しいものがある。
何事も一から始めるとなると億劫さが先に立つからである。
私の場合、健康探求は年中であるが、ウォーキング、テニスは夏以外、スイミングは夏にやっている。
旅行は海外年1回で国内は数回行っている。
何かこれといった中心となる一生の趣味を見つけたいと思う。
仕事をリタイアして、日常生活で最も大きく変わることは、やらなければならない事が減って「自由な時間」が驚くほど生まれてくることです。この時間をどう過ごすかで、老後の暮らしはずいぶんと変わってきます。ある地方の都市で、喫茶店の店主が朝10時の開店を待ちかねるように入ってくる高齢者が数人いるのを見て、開店時間を思い切って朝6時にしたところ、高齢者で満員になり、毎朝、彼らの溜まり場になったという話があります。
早起きをする人たちが、家族の朝食の時間までの暇つぶしに困っていたそうです。店主がお客に聞いたところ、「家の中で何かをしようとすると寝ている家族の迷惑なので、新聞を読むか散歩に出かけていたが、それでも時間が余って仕方なかった」とのこと。そして、「それがお宅の店が早朝に開いてくれるので助かった。おかげで話し相手もたくさんできたしね」と、感謝されたそうです。このように、時間を持て余すということが歳を重ねるほどに増えてきます。若い頃は、したいことがたくさんあるため自由な時間ができると嬉しくてしかたがなかったはずです。ところが、その時間がたっぷりとできた頃には、やりたいことが少なくなり、交際範囲も狭くなってくるため、自由な時間が、かえって「つまらない時間」になることが往々にして生じてきます。そこで、老後の暮らしには「趣味」や「遊び」といった楽しみがとても重要になってきます。趣味や遊びというと軽い感じがしますが、けっしてそうではありません。若い頃とは違い、「老後の楽しみ」は人生を豊かにしてくれる必需品といってよく、リタイアする前の仕事に匹敵するほど日々の暮らしに大切な役割を果たすものです。
私は、新・田舎暮らしの必需品として、「趣味」や「遊び」を奨励していますが、これはただ楽しく暮らそうというだけではなく、心身の健康に役立ち、いろんな友達ができ、夫婦の会話がはずむといった、老後の暮らしを豊かにしてくれる波及効果がたくさんあるからです。数年前、ある66歳のご夫人から、ダンス教室に通い始めたという話を聞いたことがあります。暇を持て余しているのを見て友だちが強引に誘ってくれたそうです。ところが、すっかりはまってしまい、苦笑いしていたご主人も巻き込んで、いまでは夫婦でダンスに夢中になっています。「ダンスパーティがあると夫婦で浮き浮きしてしまい、寝る前に二人で練習したり、どんな衣装で参加しようかと話がはずんだり。それだけではなく、ダンスで知り合う人たちも夫婦が多いので、いつも主人と一緒に遊びに行くんです。こんなこと長い結婚生活で始めてのことですよ」
それだけではなく、知り合ったご夫婦同士で食事会をしたり、旅行の企画を立てたりと楽しみが広がっていき、老後のいまが一番楽しいそうです。また、ダサいと思っていたご主人が「おしゃれに気を使いだしてカッコいいと思うようになった」とのことで、夫婦仲もいまが最高だそうです。
ご主人は、公務員を定年でリタイアした後、たまに知人の会社の事務を手伝ったり、暇つぶしにパチンコに行ったりという日々だったそうです。それが、思いもかけない楽しみに遭遇して、老後に対する考え方が一変したそうです、「この歳になって女房とダンスなんて想像もしていなかった。社交ダンスというけど、本当に社交の世界が広がっていくんですね。付き合い下手で友だちの少なかった私に、いまではダンス仲間から飲みに行こうとか、ゴルフに行かないかとお誘いの電話が鳴りっぱなしですよ。歳をとると遊びから生きがいが生まれるんですね」
たった一つの趣味ができたことで、老後の人生が変わった例の一つです。若い頃の趣味と、老後の趣味ではこんなにも違うのです。先のご夫婦は都会暮らしですが、おいしい空気と土の匂いのする田舎で暮らしながら、夫婦でフォーマルドレスを着てリゾート地のホテルや、都会のダンス会場にでかける光景を想像してみてください。このような「新・田舎暮らし」ができたら、どんなに楽しいことでしょうか。
ここで、もう一つ強調しておきたいことは、趣味を持つと、住んでいる場所に関係なく全国に友だちができることです。盆栽でも、写真でも、俳句でもそうですが、趣味仲間の集まりがたくさんあります。興味が共通する人たちの出会いなので、付き合いに消極的な人でも各地に友だちができます。歳をとると友だちをつくる機会が極端に少なくなりますが、趣味だけは友達をつくるキッカケ、友達同士の輪を広げるキッカケがたくさんあるのです。
このように、趣味は老後の暮らしに多くの恵みをもたらしてくれます。その趣味を自然豊かな田舎で楽しむことができたら、どのような暮らしが可能になるのでしょうか。ハイキングや野鳥観察など自然を楽しむ趣味、陶芸や自家菜園など土に触れる趣味、ゴルフやテニスなどのスポーツ、ログデッキでそよ風を感じながらの読書や手芸、庭の工芸小屋で熱中するガラス細工や日曜大工などなど、想像すればいろんな楽しみ方を思い描くことができます。
アクティブ・シニアの余暇の過ごし方
団塊の世代がリタイアする時期を迎えて、余暇市場が注目を集めています。長生きできる老後、元気な老後を過ごす人たちが日本社会の中心的な存在になるため、趣味・娯楽・旅行といった楽しみに時間を使い、お金を使う人たちが増えてくると予測されているからです。
UFJ総合研究所の分析によると、2001年の65歳以上の世帯が楽しみのために消費する金額は5.8兆円ですが、2011年には7.8兆円になると予測されています。今後、余暇消費が2兆円も増えるのですが、その内訳は、高齢者世帯が増えることにより1.4兆円、自由時間が増えることにより0.2兆円、平均余命が延びることにより0.4兆円で、合計2兆円が増加するとのこと。
また、「趣味・娯楽」を楽しむ人たちの増加は、60~64歳で216万人が増えて861万人になり、65歳~69歳では47万人増えて609万人、70歳以上は464万人増えて1403万人になるという予測です。
65歳~69歳だけが増え方が少ない理由は分かりませんが、70歳以上で、趣味・娯楽を楽しむ人たちが大幅に増えるというのは、長寿社会の大きな特徴だといえます。
では、今後10年間で、どのような楽しみを持つ人が増えてくるのでしょうか。同調査によると、70歳以上の人たちの間で増える趣味として、園芸・ガーデニング、読書、美術鑑賞、日曜大工、映画・音楽鑑賞、料理、パチンコ、楽器演奏などが上げられています。
やはり70歳以上の人たちで、スポーツをする人たちの増加率を推測したデータがありますが、今後増えるものとして、釣り、ゴルフ、水泳、ジョギング、マラソン、ボウリングなどが上げられています。
10年後といえば、団塊の世代が70歳になる年です。長寿大国・日本は、こんなにも元気な高齢者によって作られていくかと思うと驚きを感じざるを得ません。まさに、アクティブ・シニア層がリードする時代の到来です。
別の調査によると、その団塊の世代の男性が、現時点で、趣味などの余暇に使っているお金は年間約92万円で、リタイア後に余暇で使いたい金額の希望は年間約156万円だそうです。月13万円を趣味などの遊びで使う老後でありたいということになります。老後の生活において、趣味や娯楽をいかに重視しているかがよく分かります。
団塊の世代は、これからの老後の楽しみ方を革新していく層だといわれていますが、レジャー白書2006年版(社会経済生産性本部)で、この層の人たちが「これから先10年の余暇をどのように考えているか」という調査をしています。
その結果をみると、
「仕事より楽しみの時間を増加したい」83.5%
「自宅より外で楽しみたい」68.7%
「金額より感動を重視したい」67.5%
「生活費より余暇費用を増やしたい」63.8%
「サービスを重視したい」62・5%
「のんびりするより何かをしたい」52.7%
「家族・職場より知人友人と楽しみたい」51.9%
「日常より非日常で楽しみたい」38.3%
「気軽に楽しむより能力を伸ばしたい」32.7%
「新しい楽しみに挑戦したい」31.5%
という回答結果になっています。のんびりと静かに過ごす余生ではなく、老後はいま以上にアクティブに楽しみたいと考えていることがよく分かります。
なかでも団塊世代の女性は、男性よりも行動的に余暇を楽しみたいという傾向が強く、「楽しみの時間を増やしたい」「自宅より外で楽しみたい」「生活費より余暇費用を増やしたい」といった上位の項目すべての回答で、男性を上回っています。前述したダンスが趣味のご夫妻の例のように、これからの老後の楽しみは女性がリードしていく印象を強く受けます。
では、これから10年、団塊の世代がやってみたいと思う余暇活動は何でしょうか。上位順に紹介すると、男性は、「音楽・演劇・映画の鑑賞」「ウォーキング」「読書」「健康づくり」「自然や街並みの観察」「家庭菜園」など。女性の方は、「音楽・演劇・映画の鑑賞」「グルメ」「ガーデニング」「読書」「ウォーキング」「健康づくり」「自然や街並みの観察」という順番でした。
このアンケート結果で特徴的なことは、老後の楽しみとして、ウォーキングや健康づくりが上位にあげられていることです。健康志向の趣味・娯楽を持ちたいというのは、新しい老後のスタイルの大きな特徴になってきそうです。
また、団塊の世代は、「核家族」「友だち夫婦」という流行語を生み出した人たちなので、余暇を夫婦二人で楽しみたいという希望を抱く人たちが多いのも特徴の一つです。
旅行の楽しみ方も多様化している
リタイアしてからの楽しみの一つに「旅行」があります。この旅行にもいくつかの変化があらわれています。国内旅行も海外旅行も経験豊富な人たちが次々にリタイアしているため、普通の観光旅行では飽きたらず、旅行に求めるものが多様化してきているのです。なかでもシニア層の間で目立ってきているのが、「趣味を楽しむための旅行」と「滞在型の旅行」です。
俳句を趣味に持つご主人と、ハイキングや花の観賞を趣味にしているご夫妻が、芭蕉の歩いた「奥の細道」を旅しているケースがあります。リタイアしたら一緒に走破しようと話し合いながら、老後の夢として温めていたそうです。1年に2回、3泊~4泊でのんびりと歩き、5年間で完全走破するのが目標とのこと。
この話を聞いたとき、私は、このご夫婦はきっと1年中楽しんでおられると思いました。
芭蕉の俳句や資料を読んでは、次の旅行の場所がどんな所かを想像したり、季節の花が咲く時期を調べたり、近くの温泉に泊まろうと計画したり、ご夫婦でいろんな会話を楽しんでおられるのが想像できるからです。
[出典:新・田舎暮らしのすすめ]