自民党の圧倒的支持を受け発足した安部政権は、当初「タカ派内閣」のレッテルを貼られ小泉と同じように中韓との関係がうまくいかないのではと危惧されていたが、選挙で絶大な力を発揮する公明党や中国との連携を重視するライス国務長官の影響を受け、あっさりと靖国参拝を封印し中韓訪問を実現してしまった。このような安倍総理の柔軟性が衆議院補欠選挙の勝利を呼び込み、安定政権への第一歩を実現したかに見える。
しかし北朝鮮問題が複雑化するにつれ、安倍の意向を無視して麻生外相や中川政調会長の「核武装論」が台頭している。もともと安倍は麻生や中川が靖国参拝や安全保障政策で自分に近いと判断し重要役職に据えたが、麻生らは安倍の中韓訪問で「靖国参拝を放棄し中韓に摺り寄った」と疑念を抱き安倍と微妙な距離を置こうとしている。麻生はこのまま安倍についていって参議院選挙に負ければ自分も同罪で総理の目がなくなると考えても不思議ではない。
さらに安倍総理は「小泉の官僚丸投げ政治」を反省し、各省庁の事務次官との面会を激減させて自分の言うことを聞く大臣や補佐官を通じて霞ヶ関をコントロールしようとしている。しかし補佐官や閣僚が果たして安倍の指示に従って優秀無比な官僚をリードしていける能力があるのか。また国家安全保障担当補佐官に素人の小池が就任したが、麻生外相の「核保有」や外務省の「対米従属外交」、更には米中露の謀略的動きに対し上手く対応できるのだろうか。
ブッシュ政権も国家安全保障担当補佐官にハドリーという小物をあてたため、チェイニーやラムズフェルドなどの重量級閣僚を抑えこめず国務省と国防総省間の調整もうまくいっていない。今後安倍政権の当面の敵は、民主党というよりはむしろ霞ヶ関の官僚機構であり、また北朝鮮政策への対応を巡ってブッシュ政権の国防総省やネオコンと同じ考え方を持つ麻生や中川との戦いになるのかもしれない。安倍の政治力が問われる。
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