2008/08/26(火)17:34
『 眠り猫 』 翔田 寛
探信は、徳川家に仕える奥絵師・狩野家の跡取り息子。しかし、手本と寸分違わぬ絵を描くことに疑問をもち、修業そっちのけで女の尻を追いかけてばかり。ある日、彼の元に一枚の幽霊画が持ち込まれる。初恋の人、美津の父親が亡くなる前に描いたものだという。惚れた女のために、絵に隠された真実を探る新米奥絵師の活躍を綴る新シリーズ第一弾。
この本は何に魅かれて予約を入れたのだったかしら?
まったくわからない…(苦笑)。
主人公の探信がちょっと変わった能力を持った絵師という設定はおもしろかったし、幼馴染とともに親の言いつけ無視の行動なども楽しかったです。
探信が女好きという設定ながら初恋の人に一途だったり、きびしいという家から毎日すんなりと抜け出せたり、おにぎりを食べていながらすぐあとでおなかがなってしまう設定などけっこう無理なこじつけも見られました。
しかし狩野派というと狩野永徳しか耳にしたこともなく何を描いたのかさえはっきりとわからないような私ですが、初めて絵師という仕事と、その模倣からなる修行、同じ狩野派でありながらそれぞれの複雑な関係などが物語を通してよくわかりました。
物語の中で絵師の幽霊画が問題になるのですが、京極さんの本にこの手の挿絵がよくのっているので、ここで語られる絵もとてもリアルに頭の中に描けました(笑)。
作者は現在、某地方大学で美術史の講義をされているとか、この中に出てくる絵師についてはさすがに興味深かったです。