夜が待ち遠しい

2013/12/24(火)08:38

出張ついでの北関東小さな旅:小山篇

栃木県(23)

 自治医大駅から東北本線に乗り込みます。家の遠いK氏は遅くなるのを恐れてあっさりと離脱,独り小山駅に下車することにしました。10分程度の乗車時間であっさりと到着。とっくに日は暮れているので窓外は見たくもない自分の顔が見えるばかりなので,短い乗車時間は逆に退屈せずに済みました。東北新幹線ばかりでなく,両毛線,水戸線,そして今乗って来た宇都宮線(東北線)も停車するターミナル駅ですが,駅周辺の印象は希薄です。駅構内から遠目にも再開発が進んでいるように見える東口側は今回はパスすることにして、かつて小山城のあった小山城址公園側であればまだ古い街並みがあるだろうと期待して足早に町を巡ることにします。  駅前の大通りには居酒屋などの飲食店や風俗店がありはするもののこちらも古い建物はほとんど残されておらず、かつて日光街道の宿場町であり、思川の舟運で栄えたという名残はせいぜい町の駅に留めている程度です。そんな味気ない通りを引き返しながらふと路地を覗き込むと「美飲豆」なる喫茶店が目に留まりました。うっかりすると見落としていたに違いないほどに細い路地の中に薄暗く身を隠すように営業していました。その建物を正面にすると正に王道の本格派の純喫茶そのものの。2階は切妻屋根に漆喰風の壁面のある木製バンガロー、1階はガラスに木製の格子で店内は一望できるこのスタイルはまさにトーアコーヒーの系列に連なる佇まい。すでに日が落ちて久しく気持ちは居酒屋に向かっていますが、見掛けてしまった以上、立ち寄らずにはおられません。店内は想像通りのウッディなコーヒーカラーで統一されたこの上なく安心できる調度類で誂えられています。長居する余裕のないときに限って、こういう素敵な店に出逢ってしまうこのジレンマに後ろ髪を惹かれつつも、駅を出てはるか線路沿いのずっと先に見えた酒場を目指すことにしたのでした。  線路に沿って建つビルの背後に細い通路が通じています。その先にどうにも気になる明かりが見えています。いやそれは単に暗い通りに赤提灯が下がっているだけのことであって、よさそうに見えるのはあくまで錯覚に違いありません。それでもハエ取り紙に吸い寄せられるハエのようにゆらゆらと近寄っていくと、ガラスの引き戸に紺暖簾というこの上なくシンプルな店構えの店がありました。まるでデコレーションされていないお店なのですが、酒場の場合はこの飾り気なさは当たりである場合が多いのでした。喫茶店の愉しみとはまるで真逆ですが、いずれの雰囲気にも耽溺できるのはまったくもって幸福であると思います。店内も期待通りの広い20名以上は入れそうなコの字のカウンターのお店です。冷え切ってしまったので、梅入りの焼酎お湯割りをお願いします。アジの刺身をお願いするとメンマなどのサービスのお通しとともに独りで食べるには多すぎるほどの切り身が盛り付けられていました。そういえば店頭で数名のおじさんたちがなんだかただならぬ気配を漂わせながら、何やら意見を戦わせていましたが、やがて彼らが店内へ。せっかくいい気分で呑んでいるのだから、もめごとなど起こさないでもらいたいものだと思っていると、お店の元気な女性がご苦労さんと声を掛けています。どうやら店頭の側溝のフタが壊れてしまい、建設業のグループ数名でどう修繕すべきかを語り合っていたようです。連れの面々や常連たちからもご苦労、ビールをやってくれと店の方をせかしています。実に気持ちのよい酒場でした。「野楽炉大関」という理想的な駅前酒場に巡り合うことができました。

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