夜が待ち遠しい

2014/06/12(木)08:40

生麦にはかろうじて場末があった その2

神奈川県(116)

 ゆるりゆるりと気分は良くなってきましたがせっかくの生麦、しかも明日は休みということもあったのでこれだけで引き上げるのはもったいない。事前にひと回りしてまだ数軒良さそうな酒場があることを確認しています。もっとも気になったお店は「麒麟」,「大将」からもほんの目と鼻の先にあるお店でした。  「大衆酒場 大番」です。左右2箇所の入口があり,左側から入ってみるとお客さんでびっしり。意表を突かれたのですが,こちらは立呑み屋さんだったのですね。右手の入口側には多少のスペースがあるようなので,出直します。入口付近のコの字の隅っこになんとか場所を確保することができました。いやあ,それにしてもこちらの雰囲気は抜群です。老いも若きも,男も女も皆等しく和気あいあいの和やかさで,いかにも場末の立呑み屋という佇まいにも関わらず,日頃はこうした酒場とは無縁そうな若いカップルから,何十年も通い詰めているような熟年夫婦?まで多種多様な方たちが目一杯愉しんでいる姿を見るのは酒場道楽の最大の喜びかもしれません。しかも特にすごいのは熟年夫婦の食べっぷりです。カウンターにはもとは何が入っていたのか,どんぶりやら平皿などが積み上げられていて,とても2人では食べ切れないほどです。大体がこちらの一皿の盛りは滅法ボリュームがあるのでした。それ以上に特筆すべきはメインの肴が魚介系であることで、その質が驚愕の旨さ。これはただ単に素材が新鮮なだけでは出せない味に違いありません。脇に立つ時折顔を出すらしいおっちゃんが若主人らしき兄さんに貸し売りしてよとねだっています。あんたに貸すとめったに顔出さないじゃんと厳しくたしなめていますが、前回貸してあげたようなので人情にも厚い素晴らしい酒場だったのでした。ホント近くにほしいなあ、とつくづく感じさせられました。  最後に駅前のメインストリートにある「大衆酒場 トン幸」に向かいました。すると路地にまであふれる程の人混みがあります。何だ何だ!一体どうしたことだ、ここはそれほどまでのすごい酒場だったのか、そんなことなら先にここに来ておくべきだったかと思わずT氏と顔を見合わせます。驚愕しつつ諦め気味に店に近づくと、大盛況だったのはお隣の新しいもつ焼屋でした。そのお店の煩わしいほどの賑わいは眉をしかめたくなるほどでしたがそれはまた後の話です。この繁盛ぶりは気にならぬでもありませんが、いずれ入れそうもありません。所詮われわれに若者ばかりの店など似合うわけもなし、予定通り「トン幸」の暖簾をくぐるのでした。やはり想像していたまんまの懐かしの居酒屋空間が待ち受けていたのでした。この典型的なチェーン系居酒屋が繁華街を席巻するまではそれこそどんな駅前の路地裏にでもあった当時は、こんな普通のあまりにもありふれた居酒屋に喜びを感じる時代が訪れようとは思ってもいませんでした。高くもなく安くもなく、特別うまい肴があるわけでもないこうした酒場は近い将来、お隣のような若者が騒ぐばかりの店に淘汰されるのだろうかと思うと、こうした酒場をめぐり続けねばならないなと、独りよがりの使命感に駆られるのでした。

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