夜が待ち遠しい

2015/08/01(土)09:38

西調布は調布よりもずっと好ましい町である

東京都その他(54)

 西調布にやって来ました。京王線の沿線であるこの駅で下車するのは初めてのこと。初めての町には興奮せざるを得ないはずなのに、どうしても良い印象がほとんどない調布のお隣ということもあって少しも気分は高まりません。でも酒場放浪記に登場した酒場があるというのでは一応行っておこうかと重い腰を上げたのでした。この番組の意味っていうのは良かれ悪しかれ、知らない町に人を走らせる役割をほんの少しだけ担っているところにあるのではないでしょうか。ともかくそうでもなければ来ることもまずなかったであろう西調布に降り立ったのでした。  駅を出ると素敵な呑み屋街がいきなりあって思ったより退屈しないで済みそうだぞとほくそ笑むのも束の間、あっという間もなく呑み屋街は途切れてしまいました。ここぞという酒場も見当たりません。まあ、この日目指すのは駅の向こう側です。喫茶店というよりはスナックそのものといった風の「ピエロ」を越え、踏切を渡ると程なくして目指す「金八」が見えてきました。三日月状の奇妙な形状の長屋の弧の外側にその店はありましたがなんとも無情なことにお休みのようです。こうした経験は嫌なくらいに積んでいるはずですが何度味わっても慣れることがありません。已む無く別な店を探すことにしました。  探すまでもなく良さそうなお店に行き当たることができました。「どびん」という店名を持つなかなかどうして味のあるお店です。長屋の弧の内側、その先っちょにあります。こういう造りなので店内も狭くてちょっと窮屈な席の配置となっています。でもそこはかとなく実力を漂わせるのがその品数の豊富なことと工夫が凝らされているのが一目瞭然なカウンターに置かれた大皿です。実際何気ない一品にも一手間かけていることが食に疎いぼくにも感じ取れるほどの品でした。先客が父娘―一人暮らしをする娘を出張に託けて様子を見に来た子離れできない父とそんな父を疎ましく思いながらも美味しい料理をご馳走してもらえるとなれば如才なく振る舞える今時の娘といった様子―と呑みよりも食の方に重点を置いていそうな方たちであったことも宜なるかな。次に西調布に来るのはいつのことになるのやらでも次はじっくり腰を据えて呑みたい酒場でした。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る