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カテゴリ:大田区
まだ夏の熱気冷めやらぬある日、休みなのをいいことにブラリと東急多摩川線沿線を軽く呑み歩くことにしました。軽くなってしまったのは、この夜はあまり遅くなれないという事情があったからで、つまりは昼呑みに徹せねばならぬという誠に残念至極な次第なのであります。それでも寸暇を惜しんで行動しないと次々に訪れる機会を永遠に逸することになりかねない今日この頃にあっては、自らのままならぬ不自由の身を嘆いてみたところで詮無きことです。
そんなわけでまず向かったのは武蔵新田駅でした。本当は矢口渡駅から近からぬ住宅街にある「昭和食堂」に向かうべきだったのでしょうが、どうしたことかすっかり失念していました。ここは以前たまたま見かけた際立ち寄っておくべきところを満腹なのを理由に泣く泣く通過して以来、何度かのチャンスにも振られ続けた店でした。今回見逃したのもやはり縁がないということか。喫茶店の「柊(HIIRAGI)」も3度は空振りしてまたもや入店の機会を得ることなく虚しく通過するのみ。目当ての「群馬食堂」もやはり休みだったのでした。そうそう驚くべきことに「新田屋」か火事に遭ったようで、2階が全焼して骨組のみの無残な姿を晒していました。下丸子駅に移って、駅から間近の「喜楽亭」にお邪魔することにします。車窓からは営業しているように見えたのですが、休み時間のようです。なんてついていないのだと己の運のなさ、いや、いずれも初訪の際のぼくが、感情の促すままに立ち寄ってさえいればこんな虚しさは避けられていたはずと思うとつくづく出逢いは見逃してはならぬものと反省に浸ることになるのでした。 反省にピッタリの酒場が鵜の木駅に向かう多摩川線の車窓から視界に飛び込んできました。鵜の木に向かうからには鵜の木安楽座の思い出を語ってみたくもなりますが、それは今回は割愛。線路沿いにこれ程に枯れた焼鳥店があったとは、ついぞ気が付かなかったのでした。つい視線は喫茶店の「よし乃」に向かってしまうからだったのでしょうか。駅から飛び出るといそいそと「鳥よし」という青いテント看板のあるお店へと向かいます。焼鳥のテイクアウトがもともとの成り立ちなのでしょうか。ひっきりなしに焼鳥を求める客足があります。店内ではまだ女将さんがテレビを眺めていて、瞬間嫌な予感が去来しますが、こちらの声が届かなかっただけのようです。ハイサワーに焼鳥の盛合せー五本セットになっていて500円、鶏ではなく豚です、念のためーをお願いします。お通しは嬉しいことに好物のオカラであります。これたけで振られ続けたことの無念さなどどこ吹く風となるのだから全く現金なものです。ところであまり食べるものにあれこれ言わぬぼくですが、ここの焼鳥は臭みもなく大振りで至極満足のいく品です。持ち帰る方が多いのも納得です。サワーは400円とややお高めに思われますが、これがかなり濃いもんですので割高感はあまりありません。表を通り抜ける人々や何より多摩川線が通過するのを眺めながら、日が落ちてくるとめっきりすずしくなってきたものだなあなどとぼんやり思いに耽ると溜まらなく嬉しくなってしまうような素敵な店だったのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/09/24 06:24:06 AM
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