雑色駅には何度か来ていて、京急の沿線らしい渋くて雰囲気のいい商店街もありますが、夜に訪れるのは初めてのこと。だから酒場放浪記に出たこともある居酒屋さんは店の前を通ったことはあっても入るのはこれが初めてになります。初めての店は大抵の場合はわくわくとした期待感で胸が高鳴るのですが、今回訪れるお店は、屋号の前に活魚料理というのが冠されていて、この単語さえなければもっと早く来る機会があっただろうにと思うのでした。
さて、そんなおっとり刀での夜の訪問となりましたが「活魚料理 居酒屋 よし成」は、店に入った第一印象は想像を超えるものではなく、いかにもな居酒屋さんであったのでした。お客さんの入りは大層良くてカウンター席に空きが少しばかりある程度で、テーブル席はほぼ満席となっているからきっといい店なのでしょう。ところで繁盛する店とぼくが好みの店であるということは度々乖離しているのであって、それはぼくの酒場の趣向が普遍的でない、いやむしろはっきりと偏執的なためであると言い切ってしまっても良さそうですが、そういう意味ではあまり興に沿わないお店であるといえます。当然ながら魚介を中心にした肴の品揃えは大変よろしいようで、食道楽の人達にとっては大変魅力があるということになるのでしょうが、何度も言ってきたことですが、ぼくにとって肴の良し悪しは二の次三の次ということになるが故にどうしても点が辛いものになります。こちらのお店は今時のサラリーマンにとっては、同僚や仲間とくる店というよりも、美味しいものが好きな奥さまを連れての呑みというのが似合うようです。実際、店には夫婦者の姿が多く見受けられ、サラリーの幾ばくかをこのお店に落としていかれるのでしょう。ぼくにこのような優雅な呑みをする時は果たして訪れることがあるのでしょうか。