夜が待ち遠しい

2016/10/06(木)08:40

酒場放浪記の酒場で呑みそびれる 奥沢篇

世田谷区(32)

 東急電鉄は、一日乗車券が発売されて以来、いや正確にはその存在を認知してから 東急の各線はようやく自分にとって身近な存在になりました。いやいや、これも正しくは副都心線が開通して渋谷駅での乗り換えにかかる煩わしさがぐっと軽減したことも大きいと思うのです。渋谷に限ったことではありませんがいくつかのウイークポイントがあるが故にまだまだ都内にいくらもあるであろう散策範囲を狭めてしまうのはホントもったいない。でも渋谷のことは苦手意識があるとかじゃなくてホントに苦手なんだから致し方ないのです。それはともかく東急線沿線を知るとその楽しさにすっかりとハマってしまい、丸一日自由になってしかも予算のない時には東急を乗り回すことが度々ありました。なのに目黒線はいつまで経っても馴染めずにいるのです。馴染めぬというより、この路線に何という駅があるか今でも十分把握できていないのです。  だか駅前のビルの二階に喫茶店を見つけて、喜び勇んで入ってみたはいいけれど、入ってみると以前見たことのある光景が広がっています。だけれど奥沢駅に下車したことがないとの思い込みの方が、現に目の前にする個性的な資格情報に勝るのです。「ドミンゴ」というその喫茶店は、一見するとパイプソファがモダンでシックな印象をもたらしますが、視線を転じてティルトアップするとどぎつい原色の虹のような照明が他店にない個性的でアンバランスな魅力を放っています。こんな特千代的なお店を再訪であると確信できたのがマッチを手に取ったときだったのは我ながら呆れたものです。  さて、であれば以前来たときに酒場放浪記で放映されたことのある「鳥汎」を探さなかったのか、その記憶はまるでないのでありますが、当時訪れていれば間に合ったかもしれないと思うと悔しくてならないのです。探せど見つからぬ。駅前からすぐの三叉路の島が店の住所を示していますが、ぐるりとひと回りしますがそれらしいお店は見当たらぬのです。店を仕舞われたのでしょうか。  時間も遅くなったので、捜索中に目に止まった一軒に入ることにしました。外観は典型的な居酒屋らしい店でなかなかよろしいではないでしょうか。何より「やきとり 駅 奥沢店」という店名が良い。駅という漢字にはそれだけで想像力を膨らませてくれる含蓄があるのが好きです。都心の地下鉄なんかでは、駅という漢字に見合っているとは思えませんが、ここ奥沢はその地名のローカル感からも似つかわしいのもに思われます。奥沢店とあるからには他にも店舗があるようですが、どこかで見かけた気もしますがしかとは思い出せません。店内も木造駅舎のムードがどことなく感じられる―手摺というか席の間仕切りの雰囲気―のてす。見方によっては西部劇に出てくる酒場のようなムードと見えなくもありません。そんな好みの店内は混み合っていて、入口そばのカウンター席に腰を下ろします。そして店のざわめきの中に見を置くとそれで十分満足なのです。肴は居酒屋らしい品が揃っていて、さほど旨くはないけれど手頃な値段なので文句があろうはずもない。昔の駅はこういう一息つける場所だったのでしょう。今では真逆の場所になってしまったのが悲しいことです。

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