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カテゴリ:群馬県
酒場篇はあっけなくも終了してしまいましたが、喫茶篇はもう少しだけお付き合いいただかなければなりません。沼田からの路線バスに揺られて向かったのは後閑駅でありました。まだまだガキの時分に上越線に揺られて東京に遊びに行く際に、当時は後閑駅とは認識せぬままに何度となく通り過ぎていたけれど、ついぞ下車する機会に恵まれませんでした。何度か通過した頃には、車窓から不可思議な建物の存在を認知するに至っても、それが喫茶店などとは思いも及ばず、そしてその頃には喫茶店のためにわざわざ途中下車しようとかいうような行動を取ることはあり得なかったのであります。そんなぼくの人生とは関わりを持つことなどなかろうと思っていた後閑に気持ちが傾きだしたのは数年前から新潟に対して、ガキの頃に抱いていたわだかまりのようなものが霧散して、むしろ大いに楽しめるようになってからのことです。後閑は言うまでもなく群馬の町で、風土の印象も新潟のそれとは大いに異なっていたけれど、もう少し行けば新潟だという期待感がこの町への好奇心を増進するきっかけとなったのかもしれません。 後閑駅に到着後、すぐに「ドイツコーヒー 夢」を目指しました。ここはとにかく注文の品が出てくるのが遅いという情報を得ていたので、よそ見をしている暇などないのは甚だ残念なことなのです。以前は車中から眺めていた中世ヨーロッパの妖精なんぞが住んでいそうな建物が目の前にすると案外小さくて、遠目から眺める以上に信憑性のあるリアルな雰囲気で、とてもここが群馬県とは思えなくなるのです。店内にはとにかくやたらめったらと中世気分?を盛り上げてくれるグッズで埋め尽くされており、そうしたものにまるで関心のないぼくですら見入ってしまうのです。見入っていて楽しいのは間違いないけれど、噂に違わずとにかくコーヒー一杯―といっても単なるドリップやらサイフォンで淹れたものとは違うアレンジコーヒーですが―がいつまで経っても出てこないのです。店の女性は次の列車待ちですかと状況を心得てお聞きになってくれたのに、それでもわれわれの存在など忘れたかのようなのんびりとした対応なのです。一電車位遅らしたって構わないじゃないかと言われているようです。結果は辛うじて列車に間に合いました。それにしてもこんな家屋で過ごしたら心境に変化が及びそうですが、ちょっと試させていただきたい気もします。 後閑駅から沼田駅までの切符を買い足します。ここからは上越線を新前橋駅で乗り継いで高崎駅まで向かいます。高崎では、本当なら洞窟観音を見に行くつもりでしたが、思ったより疲労が溜まっていたようです。もう帰京まではのんびり高崎の市街地の散策に充てようということになりました。であれば、同行者を連れて行きたいお店があります。 「コンパル」です。久しぶりに訪れると、あれっ、以前訪れた時の胸の高鳴りが感じられません。これは一体どういうことだろう。前回より確かにさらに店の褪色は進んでいるけれど、それが胸が高鳴らぬ原因でもなさそうです。恐らくは初回時よりも冷静にこの店を眺めてしまったのでしょう。店の印象というのは気持ちのありようでいかようにも変化するものなのですね。これを経験すると好きで好きで仕方なかったようなお店には再訪すべきでないのかもしれません。 「各種ボトル類 珈琲・軽食 巴里園」は、何度来ても入れないなあ。外観からだけでもなかなか良さそうなことは感じ取れるのですが。高崎にはまた訪れる機会もありそうなので、その時こそ必ずやお邪魔したいと思います。 「ラ メーゾン(La maison)」昭和21年創業の洋菓子店併設の喫茶店であります。草創期の群馬交響楽団を描いた今井正の『ここに泉あり』で、このお店は劇中の練習場所として店舗を提供したといったことが新聞の切り抜き記事で知ることが叶いました。洋菓子店に設けられた喫茶室というのは基本的に好きでありますが、ケーキが主役ということからだろうか、案外地味目なことが多く、ここもその例にもれずちょっと物足りなく思えました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/03/03 08:30:09 AM
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