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カテゴリ:埼玉県
先の店のオヤジが車が見えぬけれどお客さんたちは何用かねと尋ねられます。こうした場合に咄嗟の嘘は露見する事は目に見えています。それにしても呑んでる二人に向かって車はどうしたとはどないなもんだと思わぬでもない。正直に江戸川方面のもつ焼屋に行く前の時間調整に寄らせてもらったのだと言うと、あゝ、あすこは美味しいよ。狭いお店だからすぐに満席になっちゃうけどねと教わり、時計を見るともう開店15分前です。道筋も大雑把にしか把握できていないから慌てて勘定を済ませて店を出るのでした。便所を借りていてその話を知らぬS氏は、何を急かすのかと不満げであるけれど、事情を話すとやはりこちらも慌て出す。ここまで来て入れぬのは敵わぬと思うのは当然のこと。僅か数時間前に通ったばかりの通りに出てようやく安心、まだ4時に5分前だな。お向かいには喫茶店跡があるなあなんて途端に気が緩んで余所見をする。「喫茶室 れもん」というらしい。ハテ、そういえばさっき通ったときと何か店の様子と違うぞ。あっ、暖簾が下げられているではないか、店に向かって半走りに近寄るのです。取りも取り敢えず魔を開け放つと、あゝ良かった、まだご老体が一人おられるだけのようです。慌てたり安心したりと忙しいことです。 そうして無事入店の叶った「もつ焼 まがら」は、カウンター関が7席位、小上りに2卓のこぢんまりしたお店でした。表から見ると呑み屋長屋の有り触れた一軒としか思えなかったのですが、店内はなかなかに渋みがあります。口数は少ないけれど、柔和な表情を湛える白髪頭のカッコいいオヤジさんとこちらも物静かで丁寧な応接の女将の組合せがベストカップルと思えます。とチューハイを呑みつつ観察する間にも次々にお客が訪れていつしか客席は一杯になります。おっさん連中が多い中、可愛い孫娘を連れた家族などもいたり、地元の方に深く愛されたお店のようです。そして何といってももつ焼やもつ刺が滅法旨いのです。旨いものを食って旨いとしか表現できぬのは情けないけれど、旨いものを胡散臭い表現を用いて語るのは、ぼくには滑稽にしか思えぬのであります。だけどそれでもこの店の旨さについてはもっと流暢に比喩表現を駆使できれば良かったと思わずにはおれぬのです。こういう場合、手っ取り早いのが日頃物言わぬ他人の口で語らせてみることです。寡黙なS氏の「こんなに旨い刺しを食べたのは何年振りだろう」とか「S氏(このS氏は酒間のことであります)がこんなに一気に注文するのは珍しいな、しかもいつもはけち臭くちまちま食べるなんて」といった発言から汲取って頂ければと思うのだ。店先でもテイクアウトの焼物を待つお客さんたちがいたりするのだけれど、それも当然の事と思えるのでした。満足して店を出てすぐのバス停で金町駅行きの路線バスを待っていると、向かいの三郷中央駅行きのバスをわれわれの前からここで呑んでいたオヤジさんがパワー漲る様子でそわそわうろうろしながら待ち受けているのでありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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三郷唯一の 本格もつ焼き屋へ
レポに訪れて頂き感謝です、文章から思うには 味の方も気に入って頂けた様で!タン刺画像は人気1番なので食べて頂き安心しました。令和の時代に成りましたが これからもブログ楽しみにしています。 (2019/05/01 07:29:48 AM)
三郷豚腸会 さん、こんにちは。
令和の時代に入っての唯一喜ばしいGWはいかがお過ごしでしょうか。なんて書き方をすると要らぬ誤解を受けてしまいそうですね。 こちらの味を文章から大いに気に入ったことご明察いただいたようで助かります。実際これ程までにもつ系の肴の旨さに衝撃を受けたのは、何年ぶりかと振り返ってみても思い出せない位です。無論、たかがもつにしたところで店ごとの処理の仕方で随分と仕上がりが違って感じられるものですし、当然好みの問題もあります。つまりはこちらのもつ刺やもつ焼はばっちりぼくの好みにハマったということで、雑司が谷の定番を失った今となっては大いに感謝すべき情報でした。ありがとうございました。とはいえそうそう足繁く通える場所ではないのも確かでありまして、また良い酒場を教えていただけるとさらなる大いな感謝を述べるにやぶさかでないので、奮って書き込みしてください。って、ちゃっかりしてますが、ぼくもいい酒場に遭遇したら出し惜しみせずどしどし報告したいと思っています。悪い酒場も紹介しちゃってますけど。 (2019/05/03 07:28:10 AM) |