夜が待ち遠しい

2019/06/10(月)08:30

飯田線もいいけど小海線はもっと楽しい 酒場篇 その1

中部地方(北陸・東山・東海)(263)

 飯田には、枯れたムードのお店が少なくないけれど、とりわけその古びたところと生命感の希薄さで強い印象を受けたお店があります。一方で、こちらもかなりのボロさではあるけれど、ひっきりなしにお客が入っていきそのただ事ではない繁盛振りを見て、これは行かずには済まされぬだろうと思ったお店があります。個人的な好みでいえば前者に圧倒的に惹かれるのでありますが、とある理由から後者も行っておかねばなるまいと胆に銘じたのであります。だから一軒目で食べ過ぎ呑み過ぎは厳禁なのです。  役所の側の商店街、先般お邪魔した「通りゃんせ」でその生存確認はできていたので、遠目にはいかにも営業していないように見えようが「中華そば 酔仙閣」はきっと営業しているものと信じて店の前に立ちます。しかし、一見したところは少しもやってる風はなくて、唯一、営業中のささやかな札が下げられているのが戸を開け放つ気合に繋がるのでした。店に入ると、意外なことに5つの卓席はわれわれが入るとすべて埋まって、相席すればもう少し人も入れそうだけれど、とにかく非常に賑わっているのです。その後も一組が去るとまた次の客と途切れることがないのがうまくできています。次があるので、控えめに中華そばを注文。瓶ビールをもらってのんびり待つことにします。店内は赤紅色の中華飯店の定番カラーで彩られ、擦りガラス戸越しに表を眺めると得も言われぬ情緒で気持ちが大いに満たされるのでした。随分待たされた出てきた瓶ビールをちびりちびりと呑み始めます。それにしても主人は登場したけれど料理はちっとも運ばれてくる気配がないのであります。他の客は当たり前のように平然と待ち続けているけれど、10分経ってもまだ一組目にすら料理が運ばれてきません。20分経った頃にわれわれの前に来ていたらしい若い2人組は我慢の限界へと達しようとしているのがありありと感じ取れます。どうも観察していると各卓ごとに2~4食分をまとめて調理しているのだけれど、その調理時間に各20分程度を要するようです。われわれの下に中華そばが届くのはちょうど1時間も経った頃でありました。これは慌ただしかった前回だとしたらとても待ちきれなかっただろうなあ。もし訪れようという方がおられたら1時間半程度の余裕をもって行っていただきたい。さて、待ちに待ったそれは薄味の柔らか麺で際立った個性はないけれど、ぼくはとてもおいしく頂けました。これは好みがはっきりと分かれるに違いない。柔らか麺と書いたけれど、人によっては伸びきっていると感じられるかもしれません。だけれど、これだけ待たせるのだからきっとあえて柔らかめに作っているのに違いないのであります。ここのオヤジさんにはこの丁寧な調理が基本なのだからいくら待たされても怒ったりしてはならぬのであります。最後にここのルールを書いておきます。食事を終えたらカウンターまで食器を戻してください。特に決まり事として掲示されてはいませんが、どうやらそうするのがマナーらしいので素直に倣うのが正解だと思います。  飯田市は、焼肉日本一の街、つまりは 人口1万人当たりの焼肉店の店舗数が日本一ということを御存じでしょうか。飯田に来たからには、焼肉を食わぬのが正しい振る舞いですし、この町の老舗焼肉店「やきにく 徳山」に訪れるがよかろう。というのは建前でありまして、大体がこの事実知ったのは、高速バスの車窓から見えたとあるお店ののぼりによってなのであります。へえ、そうなのかあと思って、駅前の坂道を下っていたら渋いお店があり、多くのお客さんが吸い込まれていくのですが、そこは焼肉屋でそれなら後で胃腸にゆとりと時間があれば来ることにしようと思ったのでした。そしてここが昭和20年代の創業であることを知ったのは、帰宅後の調査による情報なのです。というわけで、先の中華飯店で思いの外に時間を取られたので、昼食時間を外してしまっていてやっているか不安でしたが、何のことはない元気に営業中でありました。店内はお客さんも大分減っており、いいタイミングだったかもしれません。ビールを頼み、適当に肉を数種類注文しました。ジンギスカンも名物のようです。焼き台に大胆に肉を並べてガツガツと食します。野菜盛りがデフォルトで添えられているのも嬉しいです。名店との呼び声も高いらしいのですが、ぼくには普通に美味しいお店のように思えました。まあ、焼肉なんていうものは普通に美味しければそれでいいのだ。しかもこんな渋い店で昼日中からいただけるのだから有り難いことです。まだまだ移動せねばならぬのにすっかりいい気分になってしまいました。

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