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カテゴリ:中部地方(北陸・東山・東海)
実のところ、夜の駒ヶ根には相当な期待を抱いていたのです。ストリートビューで軽めの散策をしてみただけですら今すぐにでも出向きたいと思わせるような光景が点在しており、こんな町こそストリートビューに被写体として相応しいのではないかと思わせるのでありました。どうもこの媒体は路地裏的な場所については、映像をコマ送りで見るような欠落感が拭えません。まあ、それも仕方ないと思えぬほどに分別がないわけじゃありませんが、矢鱈と店内に引きずり込まれるような仕掛けがある位なら、場末っぽさの漂う近い将来消滅すると思しき町こそ記録として留めて欲しいと願うのはぼくだけではないはずです。膨大な映像の集積を老後になって振り返り彷徨うことで心の慰めとする人は少なくなかろうと思うのです。そんな町だから当然、映像で魅惑的に見えた店舗の少なからずが閉業に追いやられるどころか、跡形もないなんて事態も予期はしていたし、GWという時期でもあるから無為に町を彷徨うなんてことも想定していたのです。想定しているからといっても現実に現場に立ってみて、放心せざるを得ぬとは思えぬ程度の楽観を持ち合わせておりますので、その無残に閉ざされた店の扉を憂鬱に眺め歩くしかないのでした。
それでも諦めるにはまだ早すぎる。というわけでやってたらどこだって構わぬというと失礼でありますが、「お食事処 やまだ」にまずはお邪魔することにしたのでした。観光地の食事処といった風情の町場の大衆食堂とは少し趣を異にしたお店でありましたが、お客さんはめっきり地元の方たちばかりのようです。雰囲気はまあ悪くない、あえて悪かったとすればぼくの体調が絶不調であったということにしておくべきかもしれません。カウンター席では一つ飛ばしで顔見知り達が適当な距離感をもって呑んでいます。見ていると特に随分長居しているらしいのに肴は一皿程度です。これはもしかするとと思って、無難なししゃもと季節ものの山菜、コシアブラの天ぷらを頼んだのですが、これがまあ残念な品なのだ。ししゃもは口に入れるのも躊躇われるように消し炭と化していたし、天ぷらは山菜の香りも消し飛ぶほどに揚がり過ぎていて、香りはともかく脂臭くて敵わぬのです。もうそれなりに食べているから肴は何だっていいのだけれど、それでも頼んだものは極力残したくないのです。でも二人で押し付け合いつつ何とか咀嚼したものの体調はぐっと悪化したのでした。でもここは長年の営業活動が評価されているのか、われわれが帰る頃にはGW中というのにご苦労様なことですが、勤め帰りの方たちが10名ほどで来店していました。ここでは実は頼むべき肴が別にあったのではないかと思うのです。 調子は良くないけれど、せめてあと一軒は行っておきたいと彷徨った挙句に立ち寄ったのは、「居酒屋 串わ次郎長」です。まあ、感じは悪くないけれどオーソドックスな居酒屋という印象です。店内に入ると、ふうんカウンター席がメインなんですね。ご主人が警戒心の強そうな視線でこちらを見るのですぐに嫌になってしまったけれど、相棒の女のコは非常に感じが良くてちょっと嬉しくなり、注文がセコいと見るとまた冷ややかな応対になってこちらもムカッとしてみたりとなかなか忙しいのです。でも出されたお通しが立派な刺し盛なので、最終的にはニコニコと気分良くなったのでした。癖のあるところもあるけれど、それは古い酒場なら当たり前のことと思ってみればまあ悪くはありません。遅くまでやっていてこの界隈では使い勝手が良さそうです。でもわれわれは翌朝5時過ぎの列車に乗車しなくてはならぬから日を跨がぬうちに引き上げることにしました。
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Last updated
2019/07/01 08:30:06 AM
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