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カテゴリ:埼玉県
さて、恨み言で始まった戸田公園の呑み歩きですが、まだまだ愚痴を述べたい。そうそうこの夜はA氏も一緒だったのですが、ぼくよりも少し年長の彼はつい先達て人生の大きな節目を迎えたのでした。だからといってこれからの彼とぼくとの関係性にさほどの変化が生じることもなさそうではありますが、まあそちらの話題を肴にまだまだ呑みたい気分だったのです。呑んで酔わないと元来寡黙なA氏から今後の展望なりの好奇心露わな興味津々ネタを引き出すことは困難なのです。ともあれ、戸田公園で呑むことの本来の目的は失われたけれど、A氏と呑むという理由は相変わらず継続しているので、もうちょっと戸田公園で呑むことにしたのであります。
先の中華飯店の側にも数軒の呑み屋さんが軒を連ねています。何処も価格の分かる品書きが衆目に晒されているので安心です。一番お手頃な感じの「いろは」というお店に入ることにします。店に入ろうと扉に手を伸ばしたところに店を出てくるお客さんが二人。入れ替わりに入ったら、あらまあ店内には店のご夫婦がいるばかりです。やたらと広い小上りには巨大なホワイトボードが掲げられ、そこ一面に品書きが板書されています。近頃のバル風の演出はこの店に向いているかというと疑問の残る所ではありますが、そこで食いつくつもりなど微塵もありません。カウンター席に腰を下ろしここで最も手頃な価格だった清酒に移行します。冷えてきたので少し燗をして貰うことにします。肴はそうねえ、そんなに腹は空いていないけれど塩肉じゃがに炙り〆サバを頂きます。どちらも悪くない、というかちゃんと旨いのです。ここが一軒目ならがっついて摘んだかもしれませんが、この程度の量がちょうどちょっと多いくらいで塩梅が良いのです。肴をあまり頼まなくなり、勘定は安くなってきたけれど、長っ尻なのは相変わらずどころか酷くなっている気もするから、店の方には恐縮な気もするのです。そろそろ帰宅の途の事に思いが至るのですが、まあもう少しとなかなかに埒が明かぬのでした。 やっとこさ席を立ち、これで終いにするはずだったのだけれど、通りがかりに「田舎料理 たんぽぽ」を見て考えを変えたのであります。さっきまでの帰路を急ごうという気持ちはあっさりと振り切れるだけのそんな興奮を感じたのです。でもそれは酔のなさせる業でしかなかったのかもしれぬ。今こうして写真を見てみると―見てやしないけれどね―、あんなに興奮してA氏を説得する必要があったのか疑問に思わぬのではないのです。これは今からすると酔いが回っての至極フィルターを通した過剰な反応だったのだろうと思うのです。でも店内は居酒屋というよりはくたびれた洋食店とかに近い感じがあって、その狭くカウンター席のみの造りがここの女将さんの雰囲気に似つかわしく思えるのです。ここは、秋田ご出身のその女将さんが20年程前に始めたという。その前にすでに30年もの長きに亘り居酒屋を遣っていたというからすでに半世紀もの歳月を経ているということになります。シャケのアラ―というには身もたっぷりで贅沢なのですが―に大根と人参を炊いただけの味付けは味噌なのか酒粕なのか酔いせいばかりでなくして判然とはしなかったけれど、とても美味しいのです。これを仮に自宅で拵えても持て余すのだろうなと思うのです。各地で色んな名で呼ばれもするこの料理は秋田ではなんて呼ばれているのだろう。そもそも名などない程に各家庭に浸透しているのかもしれません。女将さんの愛情だとか言いはしないけれど彼女の故郷の味が反映してたりするのだろうか。ただ一人いたお客さんは世代の近い我々の来た事をとても歓迎してくれて、女将さんを交えての談笑が途切れることもなく危うく帰れなくなるところでした。戸田公園にも良い酒場があって胸を撫で下ろすのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/07/27 08:30:06 AM
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