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カテゴリ:板橋区
大山には世の町中華好事家たちに殊の外に評判の中華飯店がある事は、随分前から知ってはいたのです。知ってるのならどうして行かずにおられるのだと尋ねられてもいつものように気の利いた言い訳など持ち合わせておらぬのでした。大山という町は、下町めいた商店街のある町として些かに過大評価されているように思うのです。少なくとも酒場好きにとっては必ずしもその酒場への欲求を満たしてくれる町とは言えぬのではないかと思うのです。いや、それは幾らか膠着した考えに基づいているかもしれません。ぼくがここで言う酒場は居酒屋寄りの店を指しているのでありますが、大山にはスナックとかそっち方面の酒場は少なからず存在して、これまでも居酒屋と思って行ってみたら明らかにスナック寄りのお店だったことが何度かあります。そういう意味ではむしろ昔ながらの呑み屋が根を張っている昔風の呑み屋街が残っているという見方もあるかもしれません。実際この後日にそうした酒場に引っ掛かった訳ですがそれはまたいずれ報告します。
しかし、さすがに板橋区には中華飯店は幾らでも残っており、片手間のように巡っていては際限なく思われるくらいです。酒場選びに迷った時には余計な考えは起こさずとりあえずは中華飯店に行くのもあるだろう、そう考えたのです。じゃあ一度は行っておきたかった「丸鶴」を目指すことにします。ここは町中華を語る人なら知らぬ者はなかろうという有名店であるそうです。大山にはまるきり縁がないという訳でもないのに知らずにいたのは、ここがちょっとばかり駅から離れているからだったかもしれません。離れていると言っても普段の歩行距離を思うとどうということもないのです。大山名物の商店街、ハッピーロードを抜けて川越街道を渡ればすぐなのです。外観の楽しさに比して内観は思っていたものと違うなんて事は、このお店の場合にはさしたる問題ではないようです。ここで大事なのはあくまでも名物料理の事なのです。瓶ビールを頼んで品書を改めて見ると大瓶とはいえ700円と一端の高級中華料理店並なのであります。呑み客を蔑ろにしていると思えなくもない。しかし、品書にはおつまみ用のチャーシューもあるし、ご丁寧にハーフまで用意されているのだからよく分からない。しかし、酒はこの瓶ビールしかないようなのだからますます分からぬのだ。そこそこの客の入りだから呑みの需要も少なくはないと思うのだけれど。まあ、ちょっと変わっているがここの営業方針なのだし、長くそうして来た、もしくは長いこと続けてきてビールだけに収斂したのかもしれぬし、何にせよ口出しすることではあるまい。でもぼくはここのチャーシューでじっくり呑んでみたかった。というのがここの名物料理というのが、このチャーシューがゴロゴロと炒め合わされた炒飯なのだ。無論食べてみた。些かにバランスを欠いたそのチャーシューの量には驚愕と満足を貰えた一方で少しく辟易もしたのです。二人で分けて食べても持て余しそうな量でありました。一方でかなりオーソドックスで先の品のインパクトに比すると大人しすぎるかに映る単なるラーメンはぼくにはズバリ的中の品だったのです。炒飯の塩っぱさにラーメンの穏やかなスープが優しく癒やしてくれるようです。ぼくは次に食べるとしたら、きっと麺類から選ぶのだろうなあ。 駅に戻ろうと川越街道を再び渡るとこの大きな通りに面して「末っ子 大山店」という餃子を売りにしたお店がありました。吞みに来て立て続けに中華飯店というのもどうかと思うのですが、近場にちょっと良さそうなお店を見掛けてしまっては捨ておくわけにはいかぬのであります。そうは言ってもだ、仮にどうしても見逃せぬ店を見付けたとて、うっかりと立ち寄ってはならぬことをこの後すぐに思い知ることになるのであります。といっても物々し気に語るまでもなく、餃子―非常に小振り―1枚とからし焼き―東十条界隈で名物の―だけで腹の皮が破けそうなほどに満腹してしまったのです。先の店のことを考えても、ラーメンとからし焼き、炒飯と餃子という組合せだけであればどうということもないような気がする。というか若いころならセット物を頼むのは当たり前だったことを思えばこの程度で満腹するというのは、かなり寂しい事態であります。と書きつつ思うのが、だったら先に呑んでから中華飯店にハシゴしたらいいんじゃないか。酔っ払ってへべれけになれば満腹中枢も麻痺してしまうことは誰しもが経験していることです。しかしですね、ここにアンビバレントな状況が生じるわけです。へべれけになると味のある中華飯店であらねばならぬという気概も薄れてしまって、もう「餃子の王将」でも「日高屋」ですら構わぬという心持になるから、結局意中の中華飯店とは容易には遭遇できぬことになるのだし、そもそもが大山をダシに用いるつもりはないけれど、これといった酒場がないから中華飯店を目指したのであります。とにかくもっと心惹かれる酒場がどこにでもあればこんな苦しい思いをして呑む必要はないのだという結論でお話を終えるのでありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/09/13 08:30:06 AM
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