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カテゴリ:台東区
銘酒居酒屋と聞くとつい尻込みしてしまいます。でも近頃になってこういうのが少しだけ悪くないものだと感じ始めました。利き酒師になりたいとかいう野心などそもそもなく、基本的にはいかにリーズナブルであるかを基準に銘柄を選ぶようなぼくのような味覚オンチの酒呑みにしてみると、銘酒居酒屋は勿体ないのであります。例えば「清瀧」などの自社製造、いや自蔵醸造の格安宣伝居酒屋などなら身構える事なく足を運べるけれど、日本各地の数多くの酒蔵から厳選した銘酒を提供するお店となると話は別なのです。店主が客に向けて心底から旨い酒を呑ませたいという想いを疑うつもりは毛頭ないのです。店主自らが各地を足繁く巡り勉強に励む、そして適正な温度管理が可能な設備投資も怠らぬとなるとなかなか立派に思えるのです。しかしですよ、ぼくのようなゲスな者には彼らは元の価格に上乗せした提供価格をもって諸国漫遊していると思ってしまうのです。そうでなくても口開けした一升瓶から品質を確かめるためと一口二口とテイスティングと称して自らが最も楽しんでいるとしか思えないのであります。それはちょっとずるくなかろうか、などと妄想ばかり膨らみ、ご指摘なくとも自らが銘酒居酒屋の主になりさえすれば済むだけのことだろうということ位の自覚はあるけれど、怠惰なぼくはそうはせぬのであります。
そんなぼくでも宣伝酒場のように気安く利用できるのが上野の「全国銘酒 たる松 本店」であります。実際には「清龍」のようには格安ではないかもしれないけれど、それに近しい気楽さがあるのでした。何が素晴らしいかって朝から遅くまでぶっ通しで営業している使い勝手の良さも素晴らしく魅力的なのであります。ここに来たらカウンター席で樽から酒を移す店の方の姿を眺めながら呑むのがなんとなく気分のいいものです。ガード下よりの店舗の方が風情という点では上回るかもしれぬけれど、こちら本店の方が若い女の子がてきぱきと仕事をしているのが眺められ、目には楽しいのであります。肴も銘酒居酒屋のように気取っていたり、変にストイックだったりせず、大衆居酒屋のそれをそのまま持ってきたみたいで、あれもこれを頂きたくなるのです。まあ、独りなら肴は一品頼めば十分で、あとは樽酒でも頼んで塩を小皿に盛ってもらえば、それを升の角にちょっぴり盛ってグイッと空ければ、いかにも日本酒が好きで仕方ないという風に思い違いしてくれる人がいそうでした。カッコつけたいだけなんですけどね。でもこちらはカウンター席に一人というおぢさんが文庫本を捲ったり、スマホをいじったりするのをやめない客なんかもいて、皆さん思い思いに時間を過ごしている。こういう堅苦しくないお店が好きなのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019/11/05 08:30:06 AM
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