夜が待ち遠しい

2020/02/10(月)08:30

年末恒例の仙台鈍行列車の旅 酒場篇 その5

東北地方(127)

さて、仙台での2日目です。正直なところ実家でだらしなく過ごすのもいいかなあなんて思ったりもした訳ですが、S氏を退屈させては済まぬから気の毒だからなんとか起き上がって町に向かうのでした。昨夜、実家に着いてからしばらくありあわせの肴で上等な日本酒を大量に摂取してしまったので、相当に使い物にならない状態だったのですが、苦痛よりも義理が勝ったということです。本来であれば喫茶巡りなどしたいところですが、すでに報告した通り不首尾で終始したため、むしろ土産物探しに躍起になったのでした。仙台の人気ブーランジェリーのパンがまとめて買える店などもあって、案外楽しめました。でも昼下がりとなって徐々に腹が減ってくるとむらむらと呑みたい欲求が湧き出しました。  であればとハピナ名掛丁の裏通りにある「駅前酒場 丸昌」を目指しますが、さすがにまだ開店前だったようです。それじゃあと前夜訪れた「泰陽桜」の系列では、もっとも所謂ところの町中華に近い「駅前泰陽桜」を訪れますが、満席では仕方がありません。その後も訪れる店のことごとくが混み合っていていい加減うんざりしてきたので、チェーン店ではあるけれどまだ未訪のそば屋に向かうことにしました。 「そば処 丸松」って福島駅やら東北各地にあると思っていたのですが、調べてみるとわずかに7店舗のチェーンだったのですね。自信をもって言い切るのは危ういけれど、このアーケード街からわずかに逸れた店舗はぼくがガキの頃から存在していたように思うのです。そういう意味では誤解かもしれぬけれど、どこかしら懐かしさを感じなくもないのですが、店内は椅子ありの立食いそば屋風の味気ないテイストであります。それでも買い物客で活況する駅そばで入れたのはラッキーでした。笹かまやかしわ抜きなどで軽めに呑むことにします。徐々にペースを上げていく式でないと昨夜の痛飲と相俟って酷いことになりそうです。まあ、いかにもチェーン系のそば屋ではあるのですが、正月準備に追われるわけでもないわれわれにとっては、のんびりとすごすことができて良かったです。もしかすると正月準備の途中で立ち寄るのを恒例にしているお客もいるかもしれません。お隣ではスマホに夢中の息子を連れ立ってきている笹かまのお店の従業員のお母さんが疲労を滲ませつつわが子を寂しげな表情で見つめているのが印象的でした。  調子が上がってきたので、また「駅前酒場 丸昌」に引き返すとすでに開店していてしかも早くも満席です。しまったなあ。「駅前泰陽桜」もやはり状況は好転せず。 「ラーメン 末広 本店」の事もずっと前から知ってはいたのです。でも子供の時分はこの店の構えも見ても何とも思わなかったのです。見た目はかつてと殆ど変わらないような気がします。もしかすると既に営業を止めて久しいという感じの隣接するお蕎麦の店は営業していたかもしれない。サンプルケースを眺めてみてコチラがマーボー麺を名物としていると知りました。インターネットであらゆる情報が流布される以前はそれこそ町中華なんてのは近所の決まった店の何軒かを贔屓にする程度でわざわざ訪ね歩くような対象ではなかったのです。今でこそ子供だけで飲食店に入り込む姿を見掛ける事がありますが、ぼくの子供の頃には子供だけで外食なんてのはまずあり得ませんでした。特に地方都市なんかはそうだったと思います。ともあれ、亡失していた郷愁のお店にこうして堂々と立ち入れるのだから先の呑み食いは、別腹とする事にします。店内に入ると、すぐに食券売場があります。高齢の女性が静かに腰を下ろしていて無感動に注文を促します。彼女はもう何十年も変わらずそうしてきたんだろうなあ、ぼくの子供時代にもここに座って数多の客を迎え入れて来たのだろうかと考えると胸苦しくもなるのです。結構、昼には遅い時間ですが、歳末ということもありまだまだ店内は賑わっています。ここにも暮れの買い出しの際にはここと決めたお客がいます。それは見るそばから想像が付くのですが、理由や確信を問われると途端に不安になります。奥で中華丼を食べているご婦人や目の前でラーメンとカレーのセットを食べるご老体はきっとそうに違いない。若者のグループはそれぞれ好き好きに注文していたが、この先、老いていっても通い続け、同じ品を頼んでしみじみと暮れの時期の孤独などを噛み締めたりするのだろうか。餃子とマーボー麺、そして酒はビールしかないようです。贅沢は述べるまい。餃子はキュッと上から押さえ付けているようで、平べったくて、野菜のジュースが滲み出ていて味わい深い。マーボー麺は、少し甘めではあるけれど、細い縮れ麺が老舗らしい懐かし系の風味と食感で楽しいのです。ぼくもまた、これを書いている年の瀬に訪れてマーボー麺を食べたりするのだろうか。

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