夜が待ち遠しい

2020/04/05(日)08:30

町の外れの忘れ去られたような喫茶店

喫茶店(50)

 誤解のなきよう初めにお断りしておきますが、ぼくが近頃欲張って一挙に喫茶巡りするのを控えているのは、喫茶に対する好奇心や興味の抱き方が失速したとか減退したという事では少しもないのです。ではどうして近頃ちっとも積極的に喫茶巡りを敢行せぬのだと問われても明確にお答えしようがないのです。この記事がアップロードされる時点では、まだまだ新型コロナによる脅威が収束に向かいつつあろうなどとは思わぬから、もしかすると混乱と諦念がさらに先鋭化しているようにも思われます。ぼくがこの事態を達観できているとはとても言えぬけれど、さすがにこれまでの様にはのらりくらりと遊び歩いたりはしてられない程度の自制はあるからこれもまた喫茶と少し距離を置く原因と言えなくもないのです。他にも多少の健康への留意や将来に向けての経済的な不安など、喫茶への愛情の喪失以外のありとあらゆる事情がやむなくぼくを喫茶から引き離しているとご理解願いたいのです。なので、もしかすると遠からずの内に恒例としてきた日曜の朝の喫茶レポートも期間未定で休止させてもらうなんて事態に陥る事もあるかもしれませんが、その時は平にご容赦頂きたいのです。  と、いきなり予防線を張り巡らせてしまったけれど、それでもほそぼそとはこれまで取り零していた喫茶巡りを継続しています。特に酒場巡りで頻繁に訪れる町には案外行きそびれている店も多いのです。喫茶と酒場の二択に優劣を付けるつもりなどサラサラないのでありますが、それでも飲むか呑むかで、加えてハシゴすることを考えるとどうしても酒場寄りになってしまうのです。コーヒーは時として酒よりも強烈に体調悪化に作用するようで、そんな病状があるのかは知らぬけれど、かつて半ばヤケクソのように喫茶をハシゴしてコーヒーを浴びるように飲んだ挙げ句にコーヒー中毒に害されたのです。かつては一日に十杯や酷くすると二十杯近く飲んでも何でもなかったのがある時期から五杯も飲むと精神がささくれ立つような状況に陥るようになったのです。あっ、そうするとこれもまた喫茶巡りを控える原因だったのかもしれません。好奇心を満たさんがためにコーヒーを嫌いにはなりたくなかったものですから。  さて、酒呑みの町である赤羽には、喫茶ファンに知られた喫茶店が何軒かありますが存外その数は少なくまあこの町はとにかく酒場が優位ということなのでしょうか。それともいい加減うんざりする位に訪れているからもはや見落としなどなかろうと高を括ってしまい、再捜索の手を緩めてしまった気がするのだ。これから訪れる店はメモはあったけれどかつて手当たり次第にメモしていたからそこが訪れるべきか否かの振り分けがまったくなされていなかったのです。「喫茶 ポチ」がそこですが、駅から徒歩10分弱、酒場巡りでもまず訪れぬ住宅街に店はありました。ここがちょっと漫画喫茶化し過ぎているきらいはあるけれど、オーソドックスでとてもいいお店だったのです。どうしてここを見逃していたのかなあ。実はこれを機に普段呑み歩くために訪れる事が多かった町を今度は飲み歩くために再捜索するきっかけとなったのです。その甲斐もあって身近な町に何軒か見過ごしてしまっていた喫茶を見つけ出せたわけですが、こんな状況下ということもありなかなか訪れる時間を確保できていないのでした。  赤羽と本蓮沼の中間にある桐ヶ丘団地の桐ヶ丘中央商店街はかねてから訪れたいと思っていた場所でした。赤羽から池袋に向かう路線バスの車窓から何度も目にしていて、この団地の情報も比較的流通しているから行こう行こうと思っていたのですが、どうもぼくは赤羽という町に苦手意識を抱いているためもあり、何かしら言い訳をしては回避し続けてきたのでした。先般田端の立呑みで常連の呑み仲間―でいいですよね?―に宣言してしまったから後には引けぬ、いやむしろ自分を追い込んだのでした。とはいえ喫茶で目を付けているのは「ラック(Luck)」のみ。団地喫茶という現代ではレアな存在だから一度行っておきたかったのであります。実は本当のお目当ては酒場にあって、そちらは後日報告することにしたいのですが、ともかく「ラック」であります。営業しているようなので、店に入りソファに腰を下ろします。うむむ。まあなんてことはないし、カラオケがメインなのだな、なんてことを思っていると店のお姉さんから午後2時からはカラオケタイムでコーヒーだけでも千円掛かるとのお達しが下されたのです。そうだったのね。ちゃんと書いておいてくれればいいのにね。まあおかげで店の雰囲気は知れたし、丁寧にカラオケは持して退散したので良しとしよう。ということで、店内写真はなし。ぼくは店に足を踏み入れた途端に納得して未練はなくなりましたが、それでもこちらの喫茶タイムを経験したい方はくれぐれも2時前に訪れてください。  そばには「喫茶室 美佳屋」の跡地もありますが、どういった感じのお店だったかちょっと気になります。それ以上に気になったのは、団地から少し本蓮沼方面に歩いたところにある「喫茶&居酒屋 館」です。喫茶&スナックとかなら珍しくもなんともないけれど、喫茶&居酒屋と堂々と銘打ったのは珍しい気がします。実態として喫茶と居酒屋の併業ってのはさほど珍しくもないのですが、こうして看板に標榜しているのはちょっとユニークで気になりますがとっくに閉業なさっているようです。  最後に蔵前であります。蔵前は喫茶ばかりでなく酒場に対してもリサーチが足りなさ過ぎたようです。先般、ハードコアさんに素敵な酒場を教わるまでにも何度か訪れていたのですが、何軒か見過ごせぬ喫茶があることもついでも調べで知ることができました。土曜日もやっているとのことで敷居の低めの「八方尾根」は今度に取っておくこととし、日曜日に加え第1から第3までの土曜日がお休みという「Coffee&Dining ピポット(PIPOT)」にお邪魔することにしました。さて、御覧の通りの一瞥するとファミレス風の様子に見て取れるこちらのお店ですが、席に着いてみれば見る角度によってはなかなかに落ち着きある空間です。客層も関西弁の少しあくどそうなオヤジ3人組や、近所の町工場のさぼり組、そして一人で来ている美女がいたりしてなかなかに幅広い客層を獲得しているようです。これさえなければ落ち着いているであろう店内を意表を突いた意匠で照らしている緑と白の格子の照明は、実際にそこにいても実によく目立っておりどうしてこんな内装にしたのかとそのセンスの奇抜さに嬉々とすると同時にあきれもするのでした。先の美女はその下で物思いに耽っておられて、しかも注文した磯長クリームソーダだったから、それを召し上がっている瞬間をカメラに収めたかったのですが、さすがにそうもいくまいという自制が働いたのでした。

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