夜が待ち遠しい

2023/02/08(水)08:30

菊川の土俵のあるとんかつ料理店

墨田区(57)

子供の頃、ぼくには数多くの夢がありました。映画監督や映画評論家、小説家に批評家、料理人に美食家と相互に補完したり敵対する関係だったりの職業を夢見る辺りが今更ながらひねていますが、まあそういった仕事に就く夢を抱いていたわけです。身に余る夢を持つことがいいことか悪いことなのか、それを叶えるための精進を怠らなかったかというと何ら努力もせずに夢ばかりを追い求める気まぐれでいい加減な子供だったのです。子供なんてのはそんなもんだろうと思う一方で、近頃の子供たちのなりたい職業にサラリーマンだったり公務員だったり、果てはユーチューバーになりたいなんてのを目にすると暗澹たる思いにとらわれるのはぼくだけではないはずです。でもちょっと考えてみると身勝手な思い込みでなりたい職業を夢見ているということでは何ら違いはないのかもしれません。そんな将来のなりたい職業の一つに力士、お相撲さんがありました。小学校の高学年になってちょっとぽちゃっとした時期があって、その頃ちょうど実家で週末に隔週でちゃんこ料理屋に通うのが定例となっていて、こんなのを毎晩好きなだけ食べられるなんて、なんていい商売だって思ったんです。ちなみに毎週ちゃんこ屋に行けたなんて贅沢だと思われるかもしれませんが、当時住んでいた町で歩いて行ける飲食店が2軒だけだったのとそんな辺鄙な場所だったからお値段がすごいお安かったようなのです。とまあ今思い返すとなんとも浅はかな考えでありましたけど、子供の夢なんてそんな程度なんじゃないですかねえ。今の子供がサラリーマンに憧れるのは適当に仕事して夜は酒呑んで給料もらえるって思ってるからなんだろうし、ユーチューバーは面白おかしくやって大儲けできるって思ってるんでしょうか。大人のことを舐めくさっとるわけですよきっと。  とまあ、そんな前置きはさておいて、今のぼくは相撲に全く興味はないのでありまして、というかそもそも力士に憧れた子供の頃ですら相撲中継など見ることはなかったというのが正直なところなのです。でも土俵を目の前にすると日本男児たるもの血が騒ぐわけで、知人の知人がやっているお店という「横綱とんかつ どすこい田中」に連れていかれて呑むことになった訳です。先般も書いた通り酒を呑むようになってとんかつとちゃんと向き合えるようになったぼくでありますが、すでにいい具合に呑んでいたから肝心の土俵の写真すら撮り損ねています。唯一の写真の画面上部に微かに痕跡が見て取れますが、まあ店内の様子は公式HPなどご覧いただければ確認いただけると思います。肉厚でボリューム感のあるとんかつを齧ったきりで他の酒の肴の記憶は朧気であるが、きっと美味しい料理を出してもらえたのだと思います。ここではひたすら酒を呑み、幼かった頃の夢を取り戻そうと思ったか思わなかったか、ガキの頃の夢を再びとばかりにいい年をしたおっちゃんが土俵と戯れてしまったのでした。その写真は後日送り届けられてきたけれど、とても公衆に晒すわけにはまいらぬのです。にしてもあんなにはしゃぎまくっている自分を目にするのはこれが初めてかもしれないなあ。店の方からは、土俵で遊ぶ人がいてもあれ程までに大はしゃぎしたお客は初めてと評されていたとお聞きしました。といった次第でもっとちゃんと吞み食いレポートすべきでしょうが、それだけの情報は持ち合わせていないのです。翌日這う這うの体で職場に着いてコートを脱ぐと服に大量にまとわりついた前夜の狂態の痕跡が盛大に舞い散ったのでした。

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