失われた飲み屋横丁
1月21日、王子の飛鳥山を見上げる谷間のような立地にあった飲み屋横丁のさくら新道がそのほとんどを火事によって焼失してしまうという災厄に見舞われました。この通りは以前から大好きで、いずれ機会を見つけて数軒をはしごしてみたいと思っていたこともあり、失意に襲われています。また東京から魅力ある飲み屋横丁がひとつ失われたことが残念でなりません。 太田和彦氏の著作などによると王子駅前に戦後形成された闇市発祥の柳小路(こちらは今も健在です)が木造建築になった際に手狭となったため、一部店舗が移転させられたのが起源ということです。桜の名所として知られる飛鳥山公園のロープウェー乗り場近くに「さくら新道」と表示された電飾看板があり、飲み屋街の入口となっています。右手には飛鳥山の緑豊かな斜面があり、左手に木造モルタルの長屋が伸びています。長屋のところどころには奥まで見通せる場所もありここで暮らす酒場の主人たちと思われる方々の生活を感じることができました。なぜか入口すぐの棟屋には怪しげなオブジェが置かれていたという記憶があります。 以前酔っ払う前にメモしておいたと思われるデータによるとさくら新道の飲み屋には「バー リーベ」「さつま」「スナック まち子」「音路」「三楽」「小料理 愛」「忍」「【閉店】秀楽」「【閉店】泡盛の里 あんでぃら」などがあります(した)。スナックっぽい酒場が多かったためはしごするのを躊躇ってしまっていましたが、「バー リーベ」だけは一度お邪魔してママさんから店のことや通りのことを伺ったことを思い出します。といってもすっかりできあがってからお邪魔したため、残念なことに店の造作以外はほとんど記憶がありません。延焼を免れた店舗が多くあり、願わくば再建できることを祈念します。