健康コラム

2009/01/21(水)08:01

細胞増大(2)

 骨粗鬆症の治療薬にアレンドロン酸ナトリウム水和物(フォサマック)と呼ばれる物があります。継続的に再形成と修復が行われている骨という組織の中で、破骨細胞が骨を溶かして骨芽細胞が新しい骨細胞を置き換えていくというサイクルに対し、破骨細胞の働きに影響を与える事で骨粗鬆症を治療するというものです。  これまでアレンドロン酸ナトリウム水和物は、破骨細胞の数を減らす事によって破骨細胞と骨芽細胞の働きのバランスの崩れを防止すると考えられてきました。しかし、継続してアレンドロン酸ナトリウム水和物を使用した患者の体内では、逆に破骨細胞の数が増大しているという傾向が見られる事が判ってきています。  3年間にわたる試験を行い、それぞれ異なる用量のアレンドロン酸ナトリウム水和物もしくはプラセボ(偽薬)を服用してもらい、生検標本を調査した結果、1日10mgという最も高い用量のグループで破骨細胞の数がプラセボグループと比べて2.6倍にもなっている事が判明しています。破骨細胞の数は、薬剤の用量に比例して増大が見られていました。  破骨細胞には他の細胞と異なる特徴があります。それは破骨細胞の1個の細胞の中に核がたくさんあるというものです。ほとんどの体細胞には、核は一つしかありません。破骨細胞にたくさんの核がある理由は、破骨細胞が多くの細胞が融合して出来上がっているところにあり、核の数は決まってはいませんが、通常の破骨細胞1つに見られる核の数は8個程度にとどまるとされます。  今回の研究によって破骨細胞は死滅するのではなく、融合するのではないかという事が考えられてきています。アレンドロン酸ナトリウム水和物は破骨細胞の死滅を遅らせ、融合する事を妨げる働きがあり、同時に破骨細胞の機能も低下させているのではないかと仮定されています。  別な研究では、破骨細胞は7、8個の細胞が融合したものが最も有効に作用するというものがあり、アレンドロン酸ナトリウム水和物はそうした融合を妨げる事でも破骨細胞が働きやすい状態になるのを邪魔しているとも考えられ、融合させない事が破骨細胞の増大に繋がっていたという事ができます。今回の研究が元となって、骨細胞の不思議な世界が少しでも明らかになればと期待してしまいます。

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