健康コラム

2013/07/08(月)07:47

新たな禍い

健康(245)

 子供の頃、夕方のアニメや実写の子供向け番組を楽しみにしていました。ヒーロー物が多く、世界征服を企む悪の組織が怪人やメカを作り出してさまざまな悪事を働くのですが、毎回、辛うじて敵を撃退し、平和を守るヒーローの姿に共感を覚えると同時に、毎週、単体で攻めるよりも数週間我慢して、団体で攻撃すれば勝てるのではないかという疑問を感じていました。  健康に関しても似たような部分があり、何らかの悪役が登場しては、それに対抗する成分が提唱され、新たな悪役が登場するという一面があるように思えます。  記憶に新しいところでは活性酸素、過酸化脂質、コレステロール、ドロドロ血液、トランス脂肪酸などがそれに当たるのですが、新たな悪役として「糖化タンパク」が加わろうとしています。  糖化タンパクは頭文字をとって「AGE」と記される事もあり、アンチエイジングをはじめとする健康分野で注目されるキーワードとなっていますが、糖化タンパク自体はとても古くからの付き合いとなっています。  1912年、メイラード博士によってアミノ酸と還元糖を一緒に加熱すると褐色の色素が生成される事が発見され、メイラード反応として知られるようになって以降、食品を加熱する事で生じる色合いの変化や風味の発生など、糖化タンパクは重要な役割を果たしている事が知られるようになっていて、日本の食にとって欠かす事のできないしょうゆや味噌もメイラード反応抜きには成立しない事が判っています。しょうゆや味噌に限らず、コーヒーの色合いや風味にもメイラード反応は関わっていて、こんがりと焼けるパンやふっくらとした焼き菓子の美味しさにも欠かせない存在となっています。  そんな糖化タンパクが注目されるようになったのは1960年代の事で、代表的な生成物として酸素を運搬するタンパク質であるヘモグロビンの糖化が注目されるようになって、糖尿病の合併症の進展に関与している事が明らかにされてからの事となっています。  その後、認知症やガン、高血圧や動脈硬化などとの関連もいわれるようになり、最近では老化によって生じるさまざまな症状の主要な原因とも見られるようになってきています。加熱した時ほどの急激な変化ではないにしても血糖値が高まった時などに、特にタンパク質の糖化反応が進むと考えられます。  糖化して変質したタンパク質は元には戻らないという意見もあり、すでに組織として形成されたタンパク質の糖化や、これから組織に取り込まれるタンパク質が糖化され、それらが蓄積される事で老化によるとされるさまざまな症状は進行すると考えられます。  血糖値の急激な上昇は肥満に繋がるともいわれるようになってきているので、今後は血糖値を上げない食材や調理法、生活スタイルが注目を浴び、糖化を防ぐ成分が求められるようになってくるのかもしれません。

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