健康コラム

2016/03/10(木)08:03

か弱い殺戮者

健康(245)

 以前、アフリカ大陸で最も多くの人を殺している野生動物はカバであるという事を知って、とても驚いた事があります。草食動物でどこかのんびりした感じがあり、外観もユーモラスなカバがライオンやトラなどの大型ネコ科動物を抑えてという事が意外に思えたのですが、もっと視野を広げて世界に目を向け、野生動物に限らないようにすると意外な動物がトップになってしまいます。  野生動物に限らないという事で、おそらく年間を通して最も人を殺しているのは、大量破壊兵器という道具を手に入れ、生存とは無関係に快楽殺人まで起こしてしまう人ではないかと思えるのですが、人をはるかに凌ぐ殺戮者としてか弱い感じしかしない「蚊」がトップに君臨する事となります。  蚊が人を殺すといっても大量の蚊が人に襲いかかり、血を吸って死に至らしめるというのではなく、蚊はさまざまな病気を媒介する事によって「地球上で最も多くの人を殺害する生物」となっています。  その数は年間で75万人ともいわれ、2位に位置する人の47万5千人を大きく上回る数となっていて、特に多いマラリアやフィラリア、黄熱病、デング熱、脳炎、西ナイル熱、チクングニア熱などを媒介する事は広く知られるところとなっています。  日本でも蚊が媒介する病気として日本脳炎が知られ、死に至る事もある病気であり、回復しても後遺症が残る事もある感染症として怖れられています。  蚊が嫌われる理由として、怖ろしい病気を媒介する事よりも刺されて血を吸われた後の痒みがあると思います。蚊に刺された後に生じる痒みはアレルギー反応の一環で、血を固まらなくするために特殊なタンパク質を含んだ唾液を注入するのですが、その唾液へのアレルギー反応が痒みと血管の拡張による腫れを生じさせています。  唾液の血液への抗凝固作用は固まる事を防いで、吸血を容易にするだけでなく、飲み込んだ後にも作用させて消化しやすい状態を維持する事にも使われています。抗凝固作用がなければ、体内で吸った血が固まってしまい、蚊は死んでしまうともいわれます。  そのため一旦、吸血のために体内に注入された唾液は、吸血を終える際に回収される事から、蚊が血を吸っている最中に蚊を叩いて殺してしまうより、蚊に好きなだけ吸わせて飛び去らせた方が痒みが少なくて済むともいわれるのですが、吸血中に血流に乗って唾液が流されてしまう事から、痒みの範囲が広がる可能性も考えられます。  蚊の飛行能力は高くなく、家の中に侵入してくる蚊は、意外と近いところにできた水溜りで孵化したものだといわれます。それほど大きな水溜りである必要はなく、捨てられたレジ袋の窪みでも繁殖が可能とされます。  そうした水溜りをなくしていく事が効果的な蚊の駆除方法とされますが、逆に家の周りの水溜りをなくし、管理しやすい場所に水溜りを作っておいて、蚊の幼虫であるボウフラが発生したら駆除するという事を繰り返す事で蚊の数を減らす事ができます。  昨年、ペットボトルの上部を切り取り、中に砂糖水とイースト菌を入れて切り取った上部を逆さまに取り付けておくという蚊の対策法を知りました。  イースト菌が砂糖を分解すると二酸化炭素と熱が発生し、蚊はそのどちらも好んで寄ってくる事から、ペットボトルに入り込み、逆さまの入口のせいで出られなくなるという原理なのですが、意外なほど効果的といわれる事から、温暖化の影響か蚊を見掛ける事が増えてきた我家の庭でも試してみなければと考えてしまいました。

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