物忘れ事情
最近、物忘れがひどく、年齢的にも認知症が始まっているようだ。そんな話を聞かされる事があるのですが、物忘れをしてしまっている事に気付いている段階で認知症ではないという事ができます。 認知症を発症する数年前から患者は記憶に障害が生じ始めている事に気付かず、物忘れをしてしまっている事自体を忘れてしまっているので、認知症の早期発見は難しいとされます。 現在、認知症を治療する方法は確立されていませんが、発症を遅らせる事は可能となってきているので、早期発見が重要視されてきています。昨日の夕食の内容は思い出せなくても、夕食を食べた事が記憶に残されていれば単なる物忘れで認知症ではなく、夕食を食べた事自体の記憶がなければ認知症が疑われるといった回りの人の意識が早期発見を可能にするといえます。 前回、認知症の原因の多くを占めるアルツハイマー病の原因とされてきた特殊なタンパク質、アミロイドβが脳を守るためのものである可能性が示唆された事に触れましたが、脳を守るためのアミロイドβが脳細胞に蓄積する事でできる老人班、アルツハイマー病の症状を引き起こすとされた老人班そのものがアルツハイマー病とは無関係である可能性も出てきています。 脳の生理学が急速に発展する中、脳のどの部分がどのような認知機能にに関わっているかといった事が詳細に判るようになり、老人班が蓄積した部分とアルツハイマー病によって失われる認知機能を掌る部位が必ずしも一致しない事が判ってきて、アミロイドβ、老人班共にアルツハイマー病とは無関係かもしれない事が考えられます。 そうなるとこれまで数多く出されてきたアミロイドβをターゲットにした特許や研究はアルツハイマー病の克服という事には無関係となってしまい、大きい後退を強いられる事となってしまいます。そうなると早期発見が更に重要となってきて、回りの人の理解が何より大切と思えてきます。