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nipparatの日記 囲碁 不思議体験 

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Sep 11, 2011
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 数年前に亡くなった大学の数学の教授K先生は、会った人すべてに強烈なインパクトを与えた。小柄で浅黒く、まるで漫画に出てくる爆発した部屋から出てきた化学者のような風貌だった。

 本職はもちろん、文芸活動・社会活動・国際交流など、様々な分野で活躍した先生なのだが、私が知っているのは碁打ちとしてのK先生。強烈に強かった。手どころの読みの正確さが抜群で、信じられないような段階から攻め合いの行き先を読み切っていた。特に置かせる碁で力を発揮し、碁会所に来る地区代表クラスの高段者をたいがい向2子~3子でこなし恐れられていた。それも、徐々にあまして行くのではなく、常に無理気味にも見える部分の戦闘で潰してしまうパターンなのである。

 高校のころ、碁会所で見ていて日本一強い人なんじゃないかと思っていたのだが、意外にも大会では成績を出せず、県代表になったことはなかったと思う。読みの力では圧倒的に劣る人達に本番ではいつも負けてしまう。普段は早碁が苦手なわけでもないのに、不思議でたまらなかった。元々求道派のタイプなので性に合わないのか、あまり大会にも出ていなかった。

 K先生のいる大学に入った当初、何度か教わったのだけれど、無理やりねじり合いに持ち込まれて潰されてしまうことが多かった。

 その後、私もだんだん成長して行くうちに、K先生の弱点も分かってきた。部分的な戦いに拘りすぎて、石が重くなるようなところがあったと思う。私もかなり自信をつけていたのだが、多忙な先生なので大学を離れるまでの2~3年は手合せする機会がなかった。

 転居する前、碁会所の席亭に聞かれた。「今K先生と打ったらどう?」私の返事は「向2子でも勝てるでしょうね。」席亭は驚いたようだった。

 思いがけずその言葉は人づてにK先生に伝わったらしい。しばらくして席亭から連絡があり、「K先生が2子で勝負したい。」と言っているとのこと。こちらも発言したからには後に引けない。時間を約束して久しぶりに碁会所で打つことになった。

 

 K先生は怒ったりするような人ではないので、本当に2子で勝負になるのか興味があったのだと思う。私も、K先生に対してどれだけ打てるかワクワクした気持ちだった。

 序盤戦、K先生らしい力強い打ち方だったけれど、自分でも驚くような流れになった。黒の足取りが重く遅いのだ。強かったK先生の弱点を初めて実感した瞬間であった。まともに相手をせずに軽く打っていたら、30手くらいでもうほとんど勝負になってしまった。その後もこちらのペースを維持して中盤で勝負を決めた。

 幸い恥をかかずに済んだのだが、若さゆえの対局だった。碁にはいろいろな要素があると思うけれど、K先生は数学者らしく独特の楽しみ方を持っていたと思う。そして間違いなく、攻め合いの読みの強さは日本一だったと思う。






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Last updated  Sep 11, 2011 02:58:48 PM
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Comments

nipparat@ Re[1]:追悼 畑正憲氏(04/08) GO!さんへ  ぜひお楽しみください。今回…
GO!@ Re:追悼 畑正憲氏(04/08) 11/11にしずおか囲碁まつりでまた伺う予定…
GO!@ Re[2]:追悼 畑正憲氏(04/08) nipparatさんへ 久能山東照宮は行ってみ…
nipparat@ Re:追悼 畑正憲氏(04/08) あまり確認しておらず、返事が遅くなりす…
GO!@ Re:追悼 畑正憲氏(04/08) しばらくご投稿がなかったので、案じてい…

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