サンガンピュールの物語(恋愛編)5話-5-付き合うのに夢中だったゆうこは、テスト対策の勉強が全然進んでいないことに気づいた。遅れを取り戻すべく、苦手な漢字の書き取りをしたり、数学の計算問題を解いたりし始めた。だが、それでも彼女には気になることがあって勉強に身が入らなかったのだ。 試験開始の数日前。その日も無事に授業が終わった。クラスの誰もが焦ったような表情をしていた。その日の放課後、みんなそそくさと帰宅するか、自主的に残るかして勉強していた。その一方でゆうこは上坂を校庭に呼び出した。どうしても気になっていたあのことを説明してほしかったからだ。 「上坂君、突然呼び出してごめん!」 「いいよ、塩崎ったらどうしたんだよ」 「あたしのことについて、重大な秘密を握ってると言ってたよね?」 「ああ、そうだよ」 「それ、どういうことか教えてくれないかな」 「ほんとにいいの?後悔しても知らないよ」 「うん、それでもいい!」 上坂がサンガンピュール(ゆうこ)を付きまといの対象外とした理由は、果たして何だったのだろうか。上坂が言った。 「実はな」 ゆうこはゴクリと固唾(かたず)を呑んだ。 「お前には、不思議な力が宿ってる・・・かもしれないと感じたのさ。それで・・・普通にやっても無駄だなと思ってさ」 「やっぱり・・・・・・!」 ゆうこは心の中でそう思った。まるで頭を拳銃でぶち抜かれたような衝撃が走った。 その時である。上坂はズボンの左ポケットから、刺激臭を感じるような何かを取り出した。見てみると銀杏である。銀杏というと、茶碗蒸しにして食べるとおいしいのだが、ゆうこにはこの刺激臭が我慢できずに「ぎゃあああああああ!!!」と絶叫してしまった。そしてすぐにその場から逃げ出してしまった。彼女にとってはとんだ災難である。極度に緊張させた挙句にこの仕打ちである。上坂に対する好感度が一気に下がったのは言うまでもない。 上坂はこうつぶやいた。 「塩崎って何となく堅物なんだよ、あまりしゃべらないし。教室でやってる普通の方法じゃ通用しないと思って。それも、最初は納豆でやろうと思ったけど、さすがにやりすぎかなって。・・・あれ?」 上坂の周囲には、誰もいなかった。 (第6話に続く) ジャンル別一覧
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