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Nishikenのホームページ

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サンガンピュールの物語(成長編)2話

 2016年3月27日 加筆

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 そんなKだが2003年に入ってからは胃が痛くなる日々が続いていた。それは、サンガンピュールの学校の問題である。彼女はリヨン市内の小学校に在籍したままという扱いだったが、雷に打たれてからは育児放棄に近い勘当を受けていたため、リヨン市内では失踪したと思われて同然となっていた。
 Kは、彼女を改めて学校に通わせることを考える。サンガンピュールには同年代の友人がいなかった。なぜならば彼女は常に他人との距離を保ちながら生きてきたからだ。2001年に能力が目覚めて以来、ずっとそうだった。1人でずっと町の平和を脅かす敵と戦ってきた。自分が異質であることを自覚しているからだ。だがそれが将来にわたって有効な考え方になるだろうか。人脈が弱い人は社会に出たときに不利になる。そしてもっと世の中のことを勉強させてやるには、学校に通わせたほうが得策と考えたのであった。これはKの経済的な負担を軽減させるためでもあったのだが。しかし、
 サンガンピュール「なんで学校なんかに行かなくちゃいけないのさ!あたしはね、おじさんからいろんなことを勉強してきたんだよ。それに、友達なんて必要ないよ。あたしはこのスーパーパワーだけでのし上がっていくのさ!」
 今までKから私教育を受けてきたことに慣れていたためか、反発した。これに対して、
 K「そんなこと言うけどさ…、もし僕が君の立場だったら人付き合いというのを一番に考えるよ。
 僕以外に友達とか、頼れる人っていないのか?友達っていうのはいいもんだよ。君が勉強や性格で悩んでいたら、相談に乗ってくれるよ。それに大人になったら、人脈というのが大切になってくるよ。
 友達作らないというんなら、それでも全然構わないよ。ただしトラブルが起きたときには、全部自分で処理しなくちゃいけないし、将来進みたい道があっても、自分だけで道を切り開くことしかできないよ」
 と友達作りは大切だとし、重要なのは勉強だけではないことを彼女に説明した。

 サンガンピュールは考え直してみた。自分が困難な直面に遭遇したらどうすればいいんだろう。養父のK以外に気軽に相談できる友人といえる存在はいないのかな。いや、いないかも。では誰に相談すればいいんだろう。

 深く考え込んだ末、彼女は遂にKの言っていることは正しいと感じ、4月から学校に通うことを決心する。
 K「ありがとう。市長さんにも話をしておいたからさ。明日、伝えておくよ」

 サンガンピュールはKの養子という身分で中学校に通うことになったのだが、問題は多々あった。第一に名前の問題である。彼女の本名は別にある。ロンドンで引き取った際に彼女から預かったフランスのパスポートには「マリー・バラデュール(Marie Balladur)」と表記されていた。だがこれでは正体が明らかになってしまうのは時間の問題だ。第二に、土浦市内の治安維持という本来の任務はどうするのか。短期間の間に市役所で、市長との三者会談が何度も行われた。
 その結果、彼女は正体がばれないように偽名を使うことにし、さらに市長から任務を伝えるために秘密の携帯電話も支給されることになった。そして学校内やプライベートにおいて、自分が正義のヒーロー・サンガンピュールであることは絶対秘密にすること、と市長からの約束事が言い渡された。別に彼女は目立ちたがり屋の性格ではなかったので、身分をばらす心配はないかもしれないが念のため、であった。そしてもし任務で教室の外に出ざるを得なくなったときは、仮病を使うことにした。逆に言えばサンガンピュールは市内では有名人、時の人になっていたのであった。

 (第3話に続く)


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