テーマ:古事記(6)
カテゴリ:読書
『火山で読み解く古事記の謎』 著者 蒲池明弘 中公新書 2017年3月20日 夏目漱石の門人としても知られる物理学者の寺田寅彦は、古事記は縄文人の火山の記憶なのではないか、といった。 国文学、歴史学、文献学の門外漢であればこその卓見だ。 スサノオを火山の比喩であるとした。 スサノオ火山説を本格的に論として展開したのが亡命ロシア人の早稲田大学でロシア語を教えたアレクサンドル・ワノフスキー。 日本の誕生から始まり、スサノオの所業、アマテラスの天岩戸隠れ、ヤマタノオロチ退治と宝剣の発見などが、火山の噴火に関わる現象で整合的に説明できる。 巨大噴火を前提すれば、広範であったと思われる縄文初期の遺跡や遺物が関東、東北にしかないこと、大規模遺跡の発掘で明らかになった縄文文化の興隆と衰退も、納得のいく説明ができる。 本書を読む動機は、加久籐カルデラの破局的噴火を中心に物語が展開する石黒耀氏の小説『死都日本』内で語られる「火山神伝説」。 目 次 はじめに 第一章 アマテラスと縄文時代の巨大噴火 謎の提示、解答の予告 古事記の構造 四股を踏む女神 永遠の闇が世界を覆う 冬至説、日食説への疑問 スサノオを火山の神とみた人たち ロシアの革命家による考察 黙殺された理由 幻のウィキペディア記事 いざ、鬼界カルデラへ 縄文時代の火山島 高さ四三キロ、噴煙の柱 スサノオが海底火山であるならば 水の消失が意味するもの 火山灰被害のリアリティ 火山の冬、永遠の夜 縄文時代、九州南部の人口は多かった 火山が好きな縄文人、アンチ火山の弥生人 唐突な食糧神のエピソード 日はまた昇り、大地はよみがえる 第二章 出雲──八雲たつ火山の王国 死火山、休火山の風景 大陸から切断された痕跡 ヤマタノオロチの赤い色 スサノオの成長と火山の生涯 縄文杉は三瓶山の噴火を証言する 「八重垣」の謎 スリットダムという防災設備 「八雲立つ出雲」が示すもの オロチの剣 ナイフになったマグマ 出雲王国は幻想だったのか 『火山列島の思想』 国譲り神話に大地を鎮める祈りを読む 第三章 縄文時代に出現した天孫降臨の山 先導する祭祀者集団 天孫降臨の場所はどこか 火山集積地に立つ高千穂峰 日本列島を統治する正統性 サルタヒコとは何者か アメノウズメは大地を鎮める専門家 コノハナサクヤ姫の出産 なぜ富士山の守り神なのか 「穂の神話」ではなく、「火の神話」として 第四章 女神イザナミ──黄泉の国は火山の王国か 気の毒なくらい不人気な国産みの母 死火山の女神 ハワイの火山の怒れる女神 ブドウと桃の出現 火山とタケノコ イザナギが鼻を洗ったのは 黄色い温泉 黄泉の国は坂の上にある 黄金も名水も火山からの贈り物 第五章 熊野──謎の巨大カルデラの記憶 神武天皇を襲った「熊」の正体 日本最大の死火山 出雲と熊野 イザナミとカグツチの墓標 熊野火山と温泉の謎 神武東征と室生火山群 神武天皇の名前 「熊」とは何か 第六章 大地を鎮める王──永遠に遍歴するヤマトタケル クマソタケルの奇妙な殺され方 神さまのオナラ 「からくに」とは何を指すか 突き立てられた剣 タケルの襲名 戦いの舞台 景行天皇-ヤマトタケル-仲哀天皇 九州の土蜘蛛 転々とする草薙の剣 女性に頼ってばかりの英雄たち 終章 日本列島における火山の記憶 天皇の古代的風貌 古事記の論理、天皇の倫理 日本列島に太陽信仰はあるか アマテラスの年齢
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年05月24日 13時00分06秒
コメント(0) | コメントを書く
[読書] カテゴリの最新記事
|
|