テーマ:東京オリンピック(611)
カテゴリ:経済
とうの昔からオリンピックのアマチュアリズムの精神(国家や企業に依存しない精神)は崩れていたが、商業主義になってアマチュアリズムは消え去った。 平和の祭典は国威発揚の祭典となり、毛沢東バッヂを着けて表彰式に出ても即座に問題とならなかった。 だが、今回のコロナ禍の東京オリンピック2020では、商業主義IOCの財務基盤である米国のTV視聴率の低下を招いた。 主要メディアはIOCを「非民主的」「詐欺以上」と批判 2021年8月10日 Business Insider 東京五輪が8月8日、閉幕した。米ニューヨークに住む私の周りでは、新型コロナの危機的な感染拡大が続くなかでの開催に、(在米の)日本人こそ懸念を示したものの、アメリカ人の友人たちの間ではほとんど話題にのぼらなかった。 そうした現実を反映してか、アメリカで東京五輪の独占放映権を持つNBCテレビの視聴率は、2016年のリオ大会に比べ、全日で45%低下。プライムタイム(20時~23時)も51%落ち込んだ(CNN.com記事による)。 それでも、プライムタイムは開催期間中の平均視聴者数が1350万人と、高齢者層を中心に他局をしのぐ数字を獲得した。全競技を配信したNBCのスマホアプリや同社運営のストリーミングサービス「ピーコック(Peacock)」を合わせると、平均視聴者数は1680万人。前回のリオ大会は2900万人だった。 視聴率伸び悩みの理由 テレビの視聴率が大きく落ち込んだ理由としては、リオ大会以降の5年間で、動画視聴のあり方が大きく変化したことがあげられる。 ネットフリックス(NetFlix)などストリーミングサービスが台頭し、テレビ番組をリアルタイムで見る習慣は、いまの若い人の間にはほとんどない。 そんななかでも、スポーツは生中継の醍醐味があるので、ドラマや映画と違ってネットフリックスにも勝てる分野とされてきた。にもかかわらず、アメリカにおけるスポーツ中継の視聴率は下がり続けている。 今回の五輪について言えば、NBCのスマホアプリやウェブサイトの使い勝手が悪かったことも、視聴率伸び悩みの一因だったとされる。 … (略) … NBCは東京五輪を含む直近の夏冬4大会について、約43億8000万ドル(約4800億円)の放映権契約を国際オリンピック委員会(IOC)と結んでいる。さらに、2032年までの延長がすでに決まっており、契約総額は約76億5000万ドル(約8400億円)に達する。 放映権(販売)収入の大きな部分をNBCとの契約が占めることから、IOCにとっても視聴率の低下傾向は大きな脅威と言える。 … (略) … 新型コロナのパンデミック(世界的大流行)さなかで開催を強行したことの是非にとどまらず、IOCの組織体質や五輪の本来のあり方に疑問を投げかける記事が相次いだ。 米ニューヨーク・タイムズはこう指摘している。 「パンデミックのさなか、日本の一般市民から強い反対があったにもかかわらず、五輪を優先したことは、組織(IOC)を支える非民主主義的な体質を物語っている」 米ワシントン・ポストは「五輪を開催したい都市はだんだん減っている。そのことはIOCに何かを告げているはずだ」と題する記事を掲載。 「フォークを握ったIOCは、日本という嫌がる幼児に強制的に食事をさせようとした。さて、この話は、誰が権力を持っているかということを痛感させる。明らかに開催都市や国の人々ではない」 ワシントン・ポスト記事は、開催都市に残される五輪の「奇妙な」遺産として、東京大会の場合、実際にかかった費用が154億ドル(約1兆7000億円)で、当初予算(74億ドル)の倍以上になったと指摘。 そこには準備期間のコストは含まれておらず、IOCが開催地にそれを負担させる仕組みは持続可能ではなく「詐欺以上」だとする。 同記事はこう結ぶ。 「サヨナラ、トウキョウ。強制してごめんよ。君らの経験を書き留めて、将来の五輪を開催しようとする都市が、きちんと警告を受けられるようにシェアしておくれ」 また、政治ニュース専門サイトのアクシオス(Axios)は、 「東京大会は、五輪という国際的なスポーツイベントが、アスリートよりお祭り騒ぎとの結びつきのほうが強まっていっているという、将来の大会が逃れられない現実を示した」 とし、(このあとの開催都市である)北京やパリの大会主催者とスポンサーは、大会のあり方を検証すべきと提言している。 ― 引用終り ― 8月8日、橋本聖子東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長は、メインプレスセンター(MPC)で大会総括会見を開き、無観客での運営を振り返りながら「東京五輪がレガシーとなって、今後に残っていくのではないか」と述べた おそらく橋本会長の考えたこととと全く違う意味で、新たなオリンピックのレガシーが生じるように思える。 オリンピックのあり方、IOCの振る舞いは、一般大衆に直接かかわることはないが、企業スポンサーには大きく関わる。 ブランドイメージを損なう可能性の高い、民主主義的でなく、ダーティーなオリンピックに企業は積極的に協賛しようとはしない。 1984年ロサンゼルス大会から始まったとされる商業主義のレガシーは、大きな変容を迫られている。 笹川スポーツ財団 2016年10月17日 【オリンピック・パラリンピックのレガシー】 … (略) … 放送権料がスポーツ自体の発展に大きく寄与したことは疑いがない。先日Jリーグが10年で2100億円の放送権契約を結んだことは日本のサッカーの発展に役立つだろう。しかし同時に、放送権料の増加は、放送権を売れる一部のメジャーな競技とそれ以外の競技の間に大きな経済格差を生み、いわばスポーツの「南北問題」を引き起こしていることも事実である。そしてリオデジャネイロオリンピックの放送で民放各局が赤字を出したように、オリンピックやサッカー・ワールドカップの放送権料が経済的な上限にあることもまた事実である。スポーツも「資源の最適配分」を考える時期に来ていると言える。 藤原 庸介 日本オリンピック委員会 理事 日本オリンピック・アカデミー 副会長
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最終更新日
2021年08月22日 06時00分09秒
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