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2024/06/29(土)06:00

2024年 時間外労働規制強化問題

物流 ロジスティクス(126)

 物流2024年問題は、トラックドライバーなどに時間外労働の上限規制が適用されることによって、ドライバーの労働時間が減り物流の停滞が生じるとされる問題。 他業種よりも適用延期されていた、トラック・タクシーのドライバー時間外労働の上限は原則、月45時間、年360時間とされ、特別な事情があった場合、上限は年960時間以内となる。 物流業界は長時間の時間外労働を前提として輸送単価、賃金を決めていたので、民間の調査では輸送力が現状と比べて2024年度に14%、2030年度に34%、物流能力が不足する可能性があるとされた。     ​​ 分かり切っていることなので様々な業界で、共同配送、配送頻度の見直し、配送効効率の向上などによる物流の合理化がすすめられた。 宅配大手のヤマト運輸は、通常の宅配便に加え、クール便やゴルフバッグの料金を平均でおよそ2%値上げ。佐川急便は宅配便の料金を平均でおよそ7%値上げした。     ​​ 2023年10月、政府は「2024年問題」への緊急の対応策をとりまとめ、運転手不足が懸念されるトラックから船舶や鉄道へと輸送を振り替える「モーダルシフト」を進めるための目標を掲げた。今後10年程度で船舶の輸送量を5000万トンから1億トンに、鉄道は1800万トンから3600万トンにそれぞれ倍増させるとしています。これらはCO2排出量削減にもつながる施策。 荷主側の企業と中小の運送会社との関係を是正し、長年根付いてきた商慣習を見直すための施策も盛り込まれた。具体的には、トラック運転手が積み降ろしの順番を待ついわゆる「荷待ち」など長時間にわたることを問題視し、荷主側の大手企業に対して、「荷待ち」などの発生を抑えるよう、計画を作成することを義務づける。 中小の運送会社の場合、コストに見あった適正な運賃が支払われないケースもあることから、何重にもわたる下請け構造を是正するとともに契約内容を明確化し電子データで契約書を残すよう求める。  様々な課題解消に向けた施策が講じられているが、2024年度に入ってのマイナス影響のアンケート調査結果が公表された。     ​​「2024年問題」​マイナスの影響が最も大きな産業は卸売業​マイナビニュース  2024年6月17日 17時43分 東京商工リサーチは6月17日、第2回「2024年問題」に関するアンケート調査の結果を公開した。2024年4月、建設業や運輸業などで時間外労働の上限規制が適用されたが、これに伴う問題が「2024年問題」といわれている。 ○「2024年問題」が経営に「マイナス」の影響と回答した企業は半数超 「2024年問題」が経営に「マイナス」の影響と回答した企業は55.3%と半数を超えたという。前回の調査(2023年10月)の61.9%から6.6ポイント改善したが、依然として企業経営に影響を及ぼしていることが明らかになった。 「マイナス」の回答を規模別で見ると、大企業が62.9%(前回68.0%)、中小企業が54.4%(同60.9%)といずれも前回から改善した。大企業が中小企業を8.5ポイント(同7.1ポイント)上回り、大企業ほど「マイナス」影響が大きいと回答した。 ○「マイナス」の回答が最も多かったのは卸売業 産業別で「マイナス」が最も多かったのは、卸売業(65.8%)だった。これに、建設業64.1%、製造業60.7%が続いている。前回調査と比べ、農・林・漁・鉱業を除く9産業で「マイナス」の構成比が低下したという。 業種別で、「マイナス」が最も高かったのは「パルプ・紙・紙加工品製造業」の85.7%だった。一方、「プラス」の回答は、「2024年問題」が直撃した「道路貨物運送業」が12.5%で最も高かった。同社は、この点について、価格交渉やドライバーの待遇改善に率先して取り組んだ企業にはメリットが生じてきた可能性を指摘している。 ○「2024年問題」が及ぼす「マイナス」の影響 「2024年問題」の「マイナス」の影響は、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が71.4%で最も高かったという。「労務管理の煩雑化」も全産業で17.4%(前回15.9%)と上昇した。建設業が42.4%(同35.7%)、運輸業が50.0%(同43.2%)と上昇し、構成比を押し上げたという。  ―  引用終わり  ―     ​​ 時間外労働規制2024年度問題について、もっとも大きくマイナス影響を回答したのは卸売業だが、人口減社会への対応を迫られ少量配送を継続せざるを得ない業界構造、立ち位置の課題が含まれているように思われる。大量配送が成立する大規模な小売店は、メーカー直送、共同配送など様々な施策が講じられており、卸売りが介入する余地は少ない。     ​​ 増加を続ける物流業界の改革は省人化、省資源化、CO2削減に対応することもあり今後も継続するはずだ。物流改革は商流改革を通じて卸売業のスリム化につながることが予想される。 

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