世界最大の病院船 米海軍マーシー【新型コロナ】
米海軍は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、保有する2隻の病院船を1隻ずつ、ウイルスに感染していない疾病者の診療の方針で、3月27日と29日に西海岸と東海岸に派遣した。 4月3日、方針変更。 新型コロナウイルスに感染した患者の受入れを検討していることを明らかにした。 遅ればせながら、新型コロナウイルスとの闘いが「有事」であることを認識したようだ。 4月30日、ニューヨーク州での任務を終え帰港。 病院船は、戦争や飢餓、大災害の現場で、傷病者にプライマリ・ケアを提供したり、病院の役割を果たすために使われる船舶。 戦時にはジュネーヴ条約が適用されるもので、傷病者や難船者に援助を与え、治療と輸送を唯一の目的として、国が建造又は設備した船舶のみを指す。 通例、病院船は各国の海軍が運用している。 日本では大日本帝国海軍は運用していたが、海上自衛隊は所有していない。 近代戦時国際法において、病院船は一定の標識を行い、医療以外の軍事活動を行わないなどの要件をみたすことで、いかなる軍事的攻撃からも保護される。 【病院船の基本的要件】・船体の塗装 - 船体は白色。 軍用病院船は緑色、民間病院船は赤色の帯を引く。・赤十字標識 - 赤十字(または赤新月)の旗を掲げる。 船体や甲板にも標識し、夜間は電飾する。・非武装 - ただし船内の秩序維持などのための小火器を除く。・軍事的活動の禁止 兵員・軍需物資の輸送、軍事情報の発信などに利用しない。・交戦国への通知 船名等の基礎データを交戦国に通知する。 世界一の海軍である米海軍は世界最大の病院船マーシー級を運用している。 マーシー級は、世界最大の1,000の病床を備える米海軍の病院船で、1986年就役のマーシーと1987年就役のローズ・シティーの2隻がある。 医療能力も世界一。 マーシー級はサン・クレメンテ級タンカーを改装して建造された。 1983年度予算で「ワース」が改装されて「マーシー」、1984年度予算で「ローズ・シティー」が改装されて「コンフォート」が建造された。世界最大の病院船マーシーの内部映像(米海軍)ベッド1,000床・手術室12室・CTスキャンYouTube 全長 272.49 m、全幅 32.23 m。 総トン数 54,367トン(満載排水量 69,360トン)。 航続距離 13,420海里 (17.5kt巡航時)。 乗員 1,207名 (うち医療要員820名)+61名 機関部などの基本構造はタンカー時代のものを踏襲している。 主機は、ボイラー2缶とゼネラル・エレクトリック社製蒸気タービン2基を搭載。 スクリュープロペラ1軸を駆動する。 上部構造物は大幅に改修された。 艦橋は船体前部に移動。 船体中央部には広大なヘリコプター甲板を設置。 装載艇2隻を搭載。 現代の医療に必須の電源は、出力2,000kWhのディーゼル発電機3基と出力1,500kWhのディーゼル発電機1基、出力1,000kWhのタービン発電機1基、出力750kWhのディーゼル非常発電機1基を搭載。 出動の際は医療スタッフや支援スタッフを招集・乗船させ、出航まで5日要する。 初療室は50床で、トリアージおよび初期診療が行われる。 画像診断のためにポータブルX線撮影装置、超音波検査装置3基が配置されている。 外傷初療室に隣接して放射線科区画が設けられており、X線撮影・透視室4室およびコンピュータ断層撮影(CT)1室が設置されている。 CT装置は、心臓・冠動脈CTにも対応できる。 手術室12室のうち1室は血管造影に使用できる。 病床1,000床のほかに集中治療室(ICU)80床、術後回復室(PACU)20床、熱傷治療室が設置されている。 医療活動に必要な清水は、1日に30万ガロン(約136万リットル)の造水能力をもつ。 日本も病院船を持つべきか? そのメリット・デメリットとは稲葉義泰(軍事ライター)2020.03.16 乗りものニュース