「配膳ロボ」の普及とヒトによるサービスの未来
配膳ロボットとは、室内外のお客様に、自動で配膳することができるロボットのこと。決められた場所までお皿や飲み物を運ぶことができ、途中で障害物や人を避けたり、音楽や声をかけながら運行するなど配膳中の事故を防ぐ機能が備わっているものが多く、レストラン、コンビニエンスストア、病院など様々な場所で活用されている。 少子高齢化で労働人口の減少、サービス業で働く若者の減少もあってか、コロナ禍で非接触型サービスの許容度がひろがってか、ファミリーレストランで配膳ロボットが活躍しているという。 配膳ロボット 「JSP ROBOT」出荷台数 250台突破JSP公式サイト 飲食業界のさまざまな問題を解決配膳ロボットSERVI Keenbotアイリスオーヤマ 公式サイト 株式会社正興サービス&エンジニアリング公式サイト多様な業界で配膳ロボット・配送ロボットの導入が進んでいます今、配膳ロボットはレストランを始めとする各種飲食店やホテル、病院・老人介護施設に加え、配送ロボットとして 組立作業を伴う工場、図書館など活躍の場が拡がっています。新しい日常、新しい様式の中人手不足を補う労働力と して期待されているロボットです。くるくると変える表情や可愛いAI音声にも注目が集まっています。PuduRobotics【設置込】ネコ型配膳ロボット ベラボット(BELLABOT)1台(直送品)介護施設や飲食店での自動配膳や下膳に対応したネコ型配膳ロボットです。数十種類のオリジナル表現を搭載しキュートな表情やAI音声で応対します。¥3,729,000(税込)/¥3,390,000(税抜き)ASUKUL おもてなし文化が発達しているとされる日本のサービス業は、ヒトからロボットへの過渡期を迎えるのだろう。 回転寿司はヒトが介在することをますます減らし、入店から、注文、配膳、支払い精算までが」一体化したシステムとなっている。 ファミリーレストランが回転ずしのような自動化・無人化の方向にすすまないと断言できる人はいないだろう。 なぜファミレスで「配膳ロボ」が急増しているのか…人手不足だけではない「ネコ型ロボット」の導入背景プレジデントオンライン 2023年4月4日 「ガスト」などを運営するすかいらーくグループは、この1年で7割の店舗に「配膳ロボット」を導入した。約3000台という大型導入には、いったいどんな狙いがあったのか。ロボット導入の責任者にライターの篠原知存さんが聞いた――。 ■ロボット配膳がもたらした新風景 … (略) … 「いらっしゃいませ」とスタッフに案内されて席に座ったが、そのあとは、注文はタブレット型端末だし、ドリンクはセルフサービス。食事はネコ型の配膳ロボットが運んできたものを受け取り、支払いはセルフレジで済ませた。 ロボット配膳がもたらした新風景といえよう。 気づいてみれば着々と進むオートメーション化。聞けば、私が立ち寄った「ガスト」や「バーミヤン」「ジョナサン」などを運営するすかいらーくグループは、昨年末までに、配膳ロボットを3000台配置したという。 すかいらーくホールディングスが目指すサービスはどういうものなのか。 ■「導入の目的は労働時間の削減ではない」 営業政策グループでロボット導入責任者を務める花元浩昭さんによると、すかいらーくグループでは、2021年から中国製のネコ型配膳ロボット「BellaBot(ベラボット)」の配置を始めた。 「ガスト」「しゃぶ葉」「バーミヤン」「ジョナサン」の主要4ブランドでは、2021年11月からベラボットの本格導入を始め、2022年12月までに7割にあたる2100店に3000台の導入を完了した。わずか1年でこれだけのサービスロボットを導入する事例は前代未聞だろう。 製造業などでは、ロボットによって合理化や効率化が実現されるイメージが強い。だが、レストランのようなサービス業では、行き過ぎた合理化や効率化は、顧客離れを招きかねないのではないか。 そんな質問を投げてみると、花元さんから「DX戦略の目的は、労働時間の削減ではないのです」という答えが返ってきた。 ■従業員に起きた劇的な効果 「配膳をベラボットが肩代わりすることで、従業員の身体的な負担を減らせます。実際に、ドリンクバーやトイレのチェック回数を増やせ、ピークタイムの準備も早めにできるようになりました。狙いはお客さま満足度の向上で、労働時間削減ではありません。このためベラボットの導入に伴って、フロア担当のスタッフの数を減らしてはいませんし、今後もその予定はありません」(花元さん) 従業員の負担軽減には予想以上の効果があった。ベラボットの導入店舗でデータをとったところ、従業員の歩数は42%減ったそうだ。フロアスタッフは多い時には1日1万歩になるそうで、それがほぼ半減というのはかなり楽だろう。片付け完了時間も35%短くなった。 また、ランチやディナーの混雑時間帯(ピークタイム)の客数をロボット導入店と導入していない店で比較すると、7.5%増えていたという。 すかいらーくグループでは、パート・アルバイトの上限年齢を75歳、正社員の定年を65歳に延長しているのだが、ロボット活用による歩行数の低下はいろいろな人が働きやすい環境づくりにも直結している。 ■ロボットと人間のよい分業 さらに「サービススタッフのストレスの軽減」という効果もあるだろう。 … (略) … ベラボットの導入は、数値化こそできないものの、すでにスタッフの精神的な支えになっているのだろう。 スタッフ側にとってメリットが多いことはわかったが、お客の反応はどうなのか。 ■配膳がエンターテインメントになった 試験的な導入から2年足らずで、「すかいらーくグループではロボットが働いているのが当たり前」というスピード改革が可能になったのは、お客からも好評だったからだ。 「当初、最大のハードルだと考えていたのは、お客さまが受け入れてくれるかどうかでした。従業員が働きやすい環境づくりというのは、こちらの事情でしかないですからね。 ベラボットの導入は、新宿、渋谷、秋葉原といった、デジタルに慣れている若い世代のお客さまの多い都心部から進めました。結果的にはエリアを問わずに好意的に受け止めてもらえました」(花元さん) 試験導入した67店舗で実施した顧客アンケートでは、お客の約9割がベラボット導入に「満足」「大変満足」と好意的な回答を寄せた。コロナ禍の中でしきりに「非接触」が推奨されていたのも、ロボットに抵抗感がなかった一因といえるかもしれない。 ただ、「子供から圧倒的に支持された」(花元さん)というのは、感染うんぬんが理由ではないだろう。 スタッフがせっかく客席まで料理を持って行ったのに、そのまま持ち帰ってきて、わざわざベラボットに乗せて「いってらっしゃい」と送り出す、というようなことも起きているという。ネコ型ロボットによる配膳がエンターテインメントとして受け止められているのだ。 ■ロボットが店のアイドルに 擬人化しやすいネコ型にしたのも効果的だった。 ベラボットは、液晶画面の「顔」に、ウインクや居眠り顔、困り顔など数十種類の表情が設定されていて、親しみやすさを演出している。 大阪にある「ガスト西中島店」ではベラボットに「とんかつ」「ぷりん」と名札をつけていて、その様子をTwitterに投稿すると29万もの“いいね”がついたという。 クリスマスには全導入店でベラボットに装飾を施したり、ハロウィーンでは独自に「コスプレ」させている店舗もあるとか。本物のネコが駅長や店長として親しまれる例もあるし、ロボットが店の顔となっても不思議はない。 ベラボットは中国・深圳のPudu Robotics社製だ。同社のウェブサイトには、価格は税抜きで309万円とある。 3カ所につけられたセンサーで、人やモノだけでなく、床に落ちたゴミといった小さい障害物すらも避ける。高性能な音声AIを組み込んであり、日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語に対応している。かわいい顔しながら、スゴイロボットなのだ。 ■『ロボットは万能ではない』 … (略) … このためベラボットの導入時には「ロボット導入インストラクター」が来店する。新設した専門職である。その仕事はロボットの設定だけではない。ガストでの店長職も長く経験した花元さんは「ロボットに頼りすぎてはいけないということも伝えてもらっている」と話す。 「いつも同じ時間に来店されて、同じ席に座って、同じ注文をする方がおられます。そういうお客さまは、スタッフとのコミュニケーションも楽しみにしています。ベラボットの導入は、そういったお客さまとの触れ合いを切り捨てるわけではまったくないのです。ベラボットに給仕長は務まらないでしょう」 あくまで店舗運営の中心はスタッフであり、ベラボットはフロアサービスの一部なのだ。そのうえで各店がうまくベラボットを活用してほしい、という考えなのだ。 ■サービス業に欠かせない存在になる 今後は、少しの段差でも走行できなくなるロボットの導入を前提に、店の改装時にはフルフラット化や調度品の再配置を進めるそうだ。すでにグループを挙げてロボットを前提にしたオペレーションに移行したといっていいだろう。導入店舗のスタッフからも「ベラボットなしでどうやってオペレーションしていたか、もう想像できない」という声も出ているという。 高級フレンチでは、メートル・ド・テル(給仕長)はシェフ(料理長)と同格と言われるほど大切な存在。もちろん味も大事なのだが、顧客と接するフロアスタッフのサービス次第で、店の印象は左右される。スマイル0円ではないけれど、ちょっとした心配りがあれば食事の時間は一層楽しくなるし、不満を感じさせてしまったらせっかくの料理も台無し。いくら高性能で可愛くても、ロボットに臨機応変の接客は望めないだろう……話を聞くまで私はそう考えていた。 ロボットの導入は、うまくいけば業務改善とサービス向上の一石二鳥になる。コストが見合えばためらう理由はない。現在はすかいらーくグループが先行しているが、配膳ロボットが当たり前になる日は近いかもしれない。 ― 引用終り ― 食糧供給が現状通り続いても、ヒトによる飲食店での配膳は、大衆向けの小規模店と高級飲食店に限られる未来がみえる。人口が減少していく中、ファミレス業態がすでに限界を迎えているのかもしれないが。